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145.お前の意思は

「もう少し待て、すぐに連れて帰るから………」劫は回想を止め、アンナに呟くように一言放つと、次の瞬間には炎の中に消えていた。


あいつはまだ死んでいない、逃げやがった。奴の動きを見た瞬間に理解した。すぐに追いかけた。本当に心配だった。彼が制御を失って、あの野郎を直接殴り殺すんじゃないかと。


……………


「はぁ……はぁ……何なんだよ、こんな怪物いるなんて聞いてないぞ!」黒衣の男は焦げ臭い匂いを放ち、いつの間にか片腕を失っていた。今は路地裏を必死で駆け抜けている。まるで次の瞬間に怪物が現れて自分を引き裂くかのように。


もちろん、彼の予感は正しかった。


殺気に満ちた男が眼前に現れた時、彼は躊躇なく振り返って逃げ出した。ただ、もう一人の白髪の男が追いつき、この路地で挟み撃ちにした。


「何をやってもいいのに、わざわざこんなことを。ほら、終わりだろ?」私は彼の恐怖に歪んだ顔を見て、嘲るように言った。ここに長くいるが、王をここまで挑発した奴は初めてだ。


「待て、彼にいくつか聞きたいことがある」迫りくる劫を止めた。私が追いかけてきた目的は情報を引き出すためだ。彼に直接始末されちゃったら元も子もない。


劫は私の言葉に頷き、傍らに立った。


「よく聞け。協力すれば、殺さない」この言葉の後、一呼吸置いた。「お前の考えはわかっている。彼も、彼の手下もお前を殺さないと保証できる。わかったか?」


「わ、わかります!」


土下座して命乞いする姿を見て、私は内心で理解した。こいつはそもそも大した人物じゃない。むしろ、アンガスほどの覚悟もないだろう。


「アリソンとアンナを、どんな方法で殺した?」私が最も知りたい質問をぶつけた。あの不気味な力の正体が知りたかった。私ですら気づけなかったのだから。


「傀儡術です!人形を操って、薬剤を体内に注入しただけです!」


「それだけ?他には?」


「本当にそれだけです!!」


冗談じゃない!


普通の傀儡術がタカやティファニーの護衛を掻い潜り、赤の王本人の目を欺けるわけがない。膝で考えてもあり得ない。前に見た通り、こいつの能力は大したことない。単に糸で人形を操るだけの、特別なところなどない。


ならば、理由は一つだ。


「誰に指示された?誰がお前に傀儡術で彼女たちを殺せと言った?」


「そ……それは……王です……」


ここまで来れば明らかだった。こいつは大した能力もなく、我々の実力さえ理解していない。ましてや単独でこんなことを成し遂げられるわけがない。


つまり、あの王に利用されただけだ。傀儡術は単なる囮。本当の黒幕はあの高みにいる化け物。これで今までの出来事にも説明がつく。


なぜ第八の王の出現を許したのか――その第八の王とは、実は彼自身だったのだ。


「もういい、聞き終わった」この男が何も知らないと悟り、尋問を打ち切った。「後は全部お前に任せる」


「待ってください!協力すれば助けるって言ったじゃないですか!?」


「ああ、本当に信じたの?」


私は哀れみを込めて顔を背けた。四肢を折られる彼の姿を見るに忍びなかった……いや、実際は彼の愚かさに言葉を失っただけだ。敵の言うことを鵜呑みにするなんて、どこのお人好しだ。


彼の絶叫を背に、私はタバコを取り出し、火をつけて一服した。本当の厄介事はこれからだ。


【裏七王】は敗北し、傀儡の王も倒された。軍勢は国外にいる。私を追放した王庭護衛隊を除けば、あの王にはもう我々を抑える力は残されていない。


王庭護衛隊も大した脅威ではない。彼らには特別な力はなく、単に王の地方代表に過ぎない。


しかし調査を進めるほど、この王の正体はますます見えなくなる。強いとは知っていたが、ここまでとは思わなかった。現時点での情報を総合すると、その力は前の都市の吸血鬼皇にも劣らないかもしれない。


オシアナでさえ「痕跡を残さずに人体に異物を埋め込むことは不可能」と言っていたのに、彼はそれを成し遂げた。


思索にふけっていると、轟音が聞こえた。振り返ると、劫が四肢を折られた男を投げ飛ばしていた。方向を見れば、それは彼の追随者たちのいる場所だ。


「復讐は俺一人だけじゃない……奴らにもさせてやる」


怒りに燃えながらも、まだ仲間のことを気にかけているのか……まあ、あいつの幸運を祈るとしよう。


「さあ、来い」アンナの遺体を抱えて立ち去ろうとする劫の肩を掴み、私についてくるよう合図した。


「どうした?」


「言っただろう、取引がある」


私は空間石の力で転送門を開いた。今の私は視界がなくとも指定位置に転送できる。ただ距離には限界があるが。


彼を引き連れて中に入ると、すぐに裏山に到着した。オシアナが杖で地面に何かを描いているところで、私の到着に気づくと笑みを浮かべた。


「どうだ?」


「準備は完了よ」


劫はまだ私たちの意図がわかっていない。私がこれから行うことを説明すると、彼は目を見開いた。


「アンナを復活させられる」


「ただし完全な復活ではない。それは私にも不可能だ。できるのは彼女の魂を呼び戻し、肉体に再び宿らせることだけだ」


最初はこんな考えすらなかった。だがアンナが傀儡にされたのを見て、可能性に気づいた。


アリソンの件でわかったように、肉体が損傷していると非常に厄介だ。当初は期待していなかった。だが彼女の遺体は傀儡にされたおかげで、驚くほど完好に保たれていた。


「で、お前の意思は?」

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