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131.完全なる怪物になってしまったんだ

「魔法でこの連中を一度に集められないかと言っただけなのに、どうしてこうも全員捕まることになるのか。今回は自分で手を下すと言っておきながら、結局何もしないうちに全てが終わってしまった。」


「まあ、結果的に変わりはない。彼らに自分の実力を見せつけたし、ただオシアナがその進行を早めただけだ。」


空を見上げると、漂っていた煙はすでに消え失せていた。つまり、この戦いの勝敗はすでに決し、当然ながらこちらが勝利したということだ。


「終わったな。」


「そうだ、お前の勝ちだ。」


彼らは自らの敗北を認めた。この化け物を相手にしては、もはや抗う余地など一切なかったのだ。ただ、予想外だったのは、ほとんど【白羽】と【骨魔】だけがこちらに攻撃を仕掛けてきたことだ。他の者たちはほぼ反応を見せなかった。


だが、それも当然だろう。【智妖】や【画皮】は戦闘型の暗殺者ではなく、その能力を用いて暗殺を遂行するタイプだ。正面からの戦いは不可能だ。【毒仙】に至っては、すでに全員の武器に毒を塗っており、ほんの少しでも皮膚を傷つければ、たちまち行動不能になるはずだった。


だが、彼らはその「皮膚すら傷つける」ことさえできなかった。


私はナイフを取り出し、リリィの前に進み出た。彼女は自らの運命を悟ったようで、目を閉じたまま私がそのナイフを彼女の頭部に突き刺すのを静かに受け入れた。そして刃を引き抜くと、そこには銀白色のチップが付いていた。


「オシアナ、このチップがどの時代のものか、あの空を飛んでいるメイドに聞いてみろ。」


「わかった。」


なぜ我々が逃げられなかったのか。それは、いつの間にか私たち7人の脳内にこの奇妙なチップが埋め込まれていたからだ。このチップの効果で、私たちは「王を裏切ることはできない」という暗示をかけられていた。


この他の連中の実力なら、逃げ出すことなど簡単なはずだった。それができなかったのは、このチップのせいだ。


私が唯一知りたいのは、このチップがいつ、どのようにして埋め込まれたのかということだ。通常、こんなものを脳に埋め込むには開頭手術が必要なはずだが、私たちにはそのような形跡が一切ない。このチップは、ある日突然体内に現れ、思考を制御し始めた。


私がこの事実に気づいたのは、この国の外に出た時だ。このチップの効果は、この国の範囲内でのみ有効だった。そして、追放された瞬間、私はそれを悟った。


ただ、自分ではこのチップを取り出すことができない。よく言うじゃないか、「医者、自らを医せず」って。さすがに自分で頭を開いて手術なんてできるわけがない。


「まあ、君たちを殺すつもりはないよ。僕の利益と特に衝突するわけでもないし、僕はそもそも戦い好きな性格じゃないからね。」驚いた表情を浮かべる5人を見て、僕は気にせず肩をすくめると、【毒妖】の前へ歩み寄った。


「でも見逃してやるんだから、それなりの代償はいただくよ。それに、この厄介なものを取り除いてあげたんだ、別に無茶な話じゃないだろ?」残り4人のチップは簡単に取り出せたが、【骨魔】の番になると、少し考えてからアークを取り出した。


責めないでくれ。悪いのは君の皮膚が硬すぎることだ。力を込めないと切り開けないんだから。


彼の悲鳴は聞かなかったことにした。アークを頭蓋骨に突き立てるたび、周りの4人はその音に震え上がったようだ。痛みには慣れている彼らだが、僕の手際があまりに速かったため、特に大きな反応は見せなかった。ただ眉をひそめる程度だった。


だが、この彼だけは別だった。まあ、これ以上は語るまい。


アークに付いた血を拭い、地面で崩れ落ちた【骨魔】を見下ろすと、ちょうどその時オシアナが戻ってきた。


「どうだった?」


「確かにこの時代のものではない。でも、具体的な出所までは彼女にも分からなかった。」


「ならば、いずれ王に直接聞きに行くとしよう。」


僕は目の前の5人に目を向け、笑いながら言った。「もう君たちに用はない。好きに行けばいい。必要になったらまた声をかけるよ。ああ、【智妖】、君には今少し付き合ってもらう。」


以前から気になっていたことがある。この男がどうして【審判聖堂】のことを知っているのか。深海族の記録など人間には存在しないはずだ。


「お前……本当に俺たちを行かせるのか?」


「他にどうする?君たちを殺しても得るものは何もない。それに、かつての同僚という縁もある。必要以上に追い詰める理由はないさ……」そう言い終えると、。突然、奇妙な音が聞こえた。反射的に後ろを振り向いたが、何もなかった。


いや、違う――音の正体は自分自身だった。


思い出した。僕の脳内にはまだチップが残っていたんだ。このチップ、まさか爆発する機能が……?


次の瞬間、僕の頭はまるでスイカが砕けたように炸裂した。血と肉片がその場の全員に飛び散った。


面倒なことだ……まさか今夜受けた最大のダメージが、これになるとは。


血肉が再び顔に凝集し、全てが元通りになるまでわずか3秒ほどだった。完全に無傷の自分が再び彼らの前に立った。


手鏡を取り出し、自分の顔を確認した。そのハンサムな顔は以前と全く同じで、一安心だった。もし修復不可能だったら、僕はきっと落ち込んでいただろう。


吸血鬼の血脈は本当に強大だ。致命傷を受けても、血液さえ十分あれば回復できる。本来の僕の状態ではこれほどの回復力はないはずだが、暗黒神から授かった加護がその力を大きく高めていたのだ。


再び5人の顔を見ると、彼らはすっかり言葉を失っていた。その驚きも理解できなくはない。僕自身、ここまでのことができるとは思ってもいなかったからだ。


一方で、オシアナは怒りに満ちていた。周囲の温度が一気に下がるのを感じ、僕は彼女の頭を軽く撫でて「大丈夫だよ」と合図した。


「奴を八つ裂きにしてやる……!」


「わかった、わかった。その時は一緒にやろう。」


オシアナをなだめ、拍手をして5人の意識を引き戻した。「さて、どうした?まだ行かないのか?」


「行くよ……はあ、お前……いや、何でもない。」リリィが最初に立ち上がり、顔についた血を拭いながらため息をついた。何か言いたげだったが、結局何も言わなかった。


恐らく、僕のこの状況を気遣ってくれていたのだろう。確かに強くなったように見えるが、僕はもはや人間でもなく、鬼でもない。


本当に、完全なる怪物になってしまったんだ。

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