111.来ますよ
物を受け取って、それらをすべて異次元ポケットに収めてから、オシアナを連れて外に出ました。ここは物を保管する場所で、たくさんの魔除けの道具が置いてあるので、長くいるととても居心地が悪いのです。
でも、彼女も吸血鬼なのに全然動じないのを見て、その力には感服せざるを得ません。
「そういえば、今晩来るの？」
「うーん……やっぱり明日からにしよう。今はまず体を整えないと。体調が悪いとどんなトレーニングも意味がないからね。」
もちろん、いつ私と戦闘訓練をするかという話です。ただ、今は体調があまり良くないので、今日は無理ですね。
「そうだね、でも一言言わせてもらうと、早く回復するためには食物の補充が必要だよ……」
「はいはい、分かってるよ。」
彼女が何を言いたいのかはもう分かっています。吸血鬼にとって、食物の補充とは血液を吸うことです。ここまで言われたら、オシアナの血を吸うように頼まれるのは間違いないでしょう。
「それで、普段はどうやって自分のニーズを満たしているの？」私には疑問が生まれました。彼女は私以上に血液を手に入れるのが困難なはずです。高い地位にあり、一挙手一投足が注目され、しかも吸血鬼の女王。一度発覚すればどうなるかは明白です。それなのに、ここで十五年も過ごしながら一度もバレたことがないなんて信じられません。
「それはね……教会には献血の義務があるんだよ。誰も数字を計算しないから、時々巡回のふりをして少しもらいに行くんだ。」彼女は笑いました。
「それってもう公金の横領じゃないか……」つい心の中で突っ込みました。聞こえは悪いけど、唯一の方法です。私も同じことをしなければならないかもしれません……
「ところで、少し血を貸してくれない？」
「完全に無理ではないけど、オシアナさんがいるでしょ？」
「それは関係ないよ。彼女には手を出さないから。」
「うーん……もしオシアナさんを必要としないなら、私に譲ってくれる？」
「そんなことあるわけがないじゃないか！」
私はため息をつきました。話題がどんどん逸れていく気がしました。その時、彼女が真剣に話し始めました。「ライトさん、私が提供するのを嫌がっているわけじゃないんです。ただ、前に試してみたでしょう？あなたにとってはただの水みたいなものでしたよね。」
「それは確かに。」
「人間の持つ魔力は元々少ないし、最大の問題はライトさんが完全な吸血鬼ではないことです。例えが適切か分かりませんが、粗悪品は本物よりエネルギーを消費するし、効果も劣るんです。」
「例え話はありがとう。聞くのは辛いけどね。」
私は物を片づけました。状況はほぼ理解できましたが、食物問題の解決策はまだ見つかりません。
「ライトさん。」彼女が突然呼びかけました。
「何？」
「さっきの話、冗談じゃないよ。もしオシアナさんを必要としないなら、私にください……」
「そんなこと絶対にない！」
大声で叫びました。隣にいたオシアナの顔が真っ赤になっているのに気づかず、発端となった彼女は悪戯っぽく笑ってこちらを見ていました。
「それではライトさん、また明日。元気に来ることを願ってるよ？」
…………
オシアナと一緒に宿に戻りました。さっきまでずっと忘れていたことを思い出しました。ティファニーのことです！
でも、彼女は今どこにいるんだっけ……まあ、どうせ見つかるでしょう。
ベッドに座りました。今の私は疲れという単語では言い表せないほどですが、まだ寝るわけにはいきません。
今は昼間です。吸血鬼としては眠る時間ですが、生体リズムを変えて夜寝るようにしないと。そして今寝てしまうと、夜に目が冴えてしまい、悪循環に陥ります。
「ねえ、オシアナ、お茶を淹れてくれない？たぶんできるよね？」頭を冴えさせるために、お茶やコーヒーが必要ですが、今は本当に立つことすら辛いので、オシアナに頼むしかありません。
でも、彼女はこういったことを一度もやったことがないようで、どうやってお茶を淹れるのか分からない様子です。
オシアナは少し考えた後、私のところに来て、直接膝の上に座り、襟を開けました。
「どうぞ。」
彼女の意図は明らかです。オシアナは今の私がどういう状態かを理解して、自分の方法で選択をしたのです。
「多分お茶は今の君にとってもあまり効果がないでしょう。人間についてはよく分からないけど、吸血鬼はちゃんと血を吸わないとね。」
彼女は無邪気な顔でこちらを見て、その輝きで目が眩みそうになりました。
「私は言って、どうして私にあなたの血を吸わせたいですか?」私は彼女の額をこすりました。
「それしかないじゃないですか」
「そういう問題じゃなくて、抵抗を感じないんですか、普通は嫌なんでしょう。」
オシアナは首を傾げ、「いや、別にいいと思いますけど」と僕が何を言っているのかわからない様子だった。
それが年長者の余裕ですか...............さすがに何十万年も生きているだけあって、見た目はまったくの子供ですが.............読心術もすごいです。
何を考えているのか見透かされたように、私は不満そうに唇を尖らせた。「だから気になるんです。どうして手を出さなかったんですか」
「変なこと言わないでよ。血を流したら痛いでしょ?」
「海から血が出ると痛いんです」
「質が違うでしょう..............」
「別段違いはありません。十九歳の大人ですから、このくらいの痛みはどうでもいいんです」オシアナは自分の存在しない胸を叩いて、力強く言いました。
今まで根を下ろしてもびくともしなかった人が言う言葉ではありません..............
「だからそんなことを気にするくらいなら、早くお風呂を作ってもらったほうがいいですよ。それがないのが本当につらいんです」
「この会ですよ」
「一番いいと思いました」
オシアナは子供のように私の首に抱きつきました。
「だったら、遠慮なくいただきます?」私は彼女の白い首筋が目の前で揺れているのを見ていましたが、吸血の衝動にはおさえきれず、あきらめておそるおそる口を開きました。
「来ますよ」
