あなたについてきて、本当に良かった…
私と夫と、愛犬キリのいつもの散歩道
「君は僕と…そのう、よかったのかな」
最近、夫の認知症が進んでいた。
「えっ、なんですか?また、その話ですか。私は、お父さんが好きで一緒になったんですよ。後悔なんて、これっぽっちもないんですから」
これから先の人生出来る限り一緒にいたいと思っている。
主人はさっき食べたご飯も忘れるのに、昔のことを思い出しては何回も聞く。
それは主人と付き合った頃、ニート(あの頃はこんな便利な言葉なかったけれど)で、将来性のない彼を見限ってこっそりお見合いをしていた。
お見合いした彼はサラリーマンで将来が約束されていた。
そして、その人と家族のすすめもあって結婚式を挙げようとしていた。
でもどこから聞きつけたのか。
結婚式の当日彼は、寝ぐせだらけの頭といつものよれたシャツと年季の入ったジーパン姿でウィデングドレス姿の私の手を引っ張って外に出ていた。
なぜだかわからない。けれど、本能的に私は彼に抗うことなくついていった。
その劇的なシーンの後は、ぶち壊された双方の親兄弟や親せきの面目丸つぶれ。
逃げるようにして、県外に出た若い二人。
あれから、何十年たったろう。親の死に目にも会えなかったが、子宝にも恵まれて幸せに過ごしてきた。
そう、私は胸を張っていえるのだ。
「あなたについてきて、本当に良かった…」