9.借金取り
社長の梨奈は机に突っ伏していた。
『だって障がい者の人が働いてる』
思い出すたびに、胸にくる言葉だ。
子ども達自身は慣れたと言っていたが、実際は子ども達だけで集まって行動している。
寝たきりの本間航太郎の所にも、自分達からは行こうとはしない。
恐らくこれが世間との距離なのだ。
こちらから「距離をつめるなにか」を提供しなければならない。
梨奈は、真由美が作った収支報告書を見て、ため息をついた。
梨奈はヒントを求めて、スミヨシ内をさまよいだした。
行き着いた先は、本間航太郎の所だった。
航太郎はハヤフジのモニターの上にタブレットを置いて動画を見ている。
梨奈は航太郎の横にちょこんと座った。
『暇な時は、このタブレットで動画も見れますよ。忙しくて見る暇ないかもしれないですけけど』
梨奈が開店前に航太郎に言った言葉だ。
不甲斐なくて、悔しくて、梨奈の目尻に涙が溜まる。
「どう……しま、したっか」
航太郎は言語障害があるため、上手く喋れない。
「どうしたらお客さんが増えるかと思って……」
「ために、なる、どうが……あり、ます、」
「どれですか?」
梨奈は、航太郎を手伝って、動画を見た。
それはGoogleマップによる広告の出し方だったり、チラシ配りの効果的な方法だったりした。
お店でイベントをやるのも良さそうだ。
「すごい……これ、どうしたんですか?」
こういうのを見るようなタイプじゃないのに。
「りな、さん。……借金取り……おわれてる、でしょ」
「えぇ!私、借金してないですよ!!」
まだ
「山ちゃん」
航一郎が短く言う。
「和弘くんが言ってたんです?」
航太郎は首を縦に振った。
「この間、借金取りがきたらって話か!」
航太郎はさらに首を振る。
どうやら、みんなに誤解させて、不安にさせてしまったようだ。
「みんなで、さがした」
「え?みんなでこの動画探してくれたんですか??」
「お昼、ご飯、みんなで、さがした」
お昼休憩の時間に、みんなで探してくれたらしい。
梨奈はもうその気持ちが嬉しくて、泣けてきてしまった。
「ありがとうございますー。」
泣きながら、そういうのが精一杯だった。
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