8.盗み聞き
2週間くらいたち、りあたちは、だいぶ慣れた。
やる仕事と言えば、品出しの手伝いや、ハヤフジの見張り番くらいだ。それもお客さんが少ないので、すぐに終わってしまうけど。
最初は少し違和感を感じた障がい者への気持ちも、すっかり慣れた。鍋島士郎とも、一緒に遊んだりしてる。仲間の碧斗が楽しそうに、士郎に悪いことを教えているのをみかけた。
1時間の仕事のうち、30分仕事して、残り30分くらいは会議室でみんなで宿題をしてる。
今日はスタッフの人たちも暇みたいで、隣りの給湯室から声が聞こえてきた。
「この間、社長が『借金取りがきたらどうしよう』って言ってたんだよ。」
この声は多分、山本(和弘)さんだ。
「そんなに経営ヤバいの?」
一緒にいるのは内山(彩)さんのようだ。
「開店して2ヶ月だけど、客少ねーもんなー。あとは俺たちが日用品買うくらいで」
「やっぱり理解してもらうのに時間がかかるんじゃない?」
「そうだよなー。俺たち、金儲けじゃなくて、福祉だもんな。時間がかかるのも当たり前だよな。」
「確か、これを作るのに補助金貰ってるんでしょ?」
「らしいな。」
「補助金が無くなる前になんとかなるといいねー。」
「だなー。」
2人は給湯室から出ていったようだ。どうやら休憩は終わりらしい。
今の2人から、危機感は感じなかったが、それでもりあ達は不安になった。
お金は降ってこない。当たり前だ。
きっと、りあ達の母親はそれが分かっていて、スミヨシで買い物したり、同伴相手を連れてきたりしてたのだ。
私たちが少しでも居られるように……
認めなくないが、きっとそういうことだ。
私たちにできることって無いんだろうか。
りあ達はいつも以上に何となく言葉少なく、家路に着いた。
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