力こそパワーでした
異世界転生、小説ならありふれた展開であるが、俺の転生には更にありふれたものがあった。
それは転生特典だ。
神か仏か分からん存在から何が良いか聞かれた時、俺はこう答えたね。
「 が欲しい。」
神はニッコリ頷き、俺を異世界へと送り出した。
魔王城、旅の仲間といよいよここまで来た。
俺が送られてきた異世界は剣や魔法のあるファンタジーであるが、世界そのものが衰退しており、世界の継続の為に魔王と呼ばれる者達を殺し、その魂を世界へ献上することでなんとか永らえて来た。
当然、殺される側の魔王たちは激しい抵抗をしている。
魔王を殺す者達は勇者と呼ばれ、人々から表向きは歓迎されているが、良心的な統治を行ってきた魔王の何人も殺し、時には国そのものを滅ぼしているので、多くの者から恨まれている。
ファンタジーはファンタジーでもダークファンタジーであった。
鋼鉄の鎧を纏った騎士のロバートとハンドレッド、呪術師の俺の3人は玉座の間へと続く大扉を開ける。
そこにいたのは、歪曲した禍々しい杖を持った老人と華美な装飾の施された鎧を纏った壮年の男であった。
壮年の男が魔王で間違いないだろう。
その両手には大剣が握られており、傍目から見てかなりの実力者であろう。
「いつも通りやろう。」
俺はロバートとハンドレッドに声を掛け、二人は大楯にロングソードと斧槍をそれぞれ構えた。
タンク職二人という一風変わったスタイルであるが、この手の手合いは後衛に高火力を置くというもので、俺のチームもそうである。
俺は今も燃えている右手に力を入れ、火球を発生させる。
旅路の果てに見出した煉獄火球という呪術であるが、そこはこの話で重要ではない。
この火球という呪術は手より発生させた火球を直接手で投げるというもので、思った以上に原始的なものだ。
俺は発生させた火球を杖を持った老人へと投げる。
ブスッ。
俺が放った火球は老人を貫き、城の壁も貫通し、そのまま消えてなくなった。
「ストライク。魔術師(現世から)アウト!」
「えっ。」
ロバートの掛け声に、壮年の魔王が思わず声を上げる。
「ちょっと待って。ちょっと待って。ちょっと待って。」
「何か?」
壮年の魔王は混乱しているのか、同じ言葉を三度呟き、ハンドレッドが聞き返す。
「今の呪術、煉獄火球だよね。」
「そうだが。」
「何か変じゃなかった。」
「?」
「?じゃねえよ。明らかに速度がおかしかっただろう。」
壮年の魔王が大きな声で叫ぶ。
「彼は”強肩”なんだ。」
「何だその理屈。」
壮年の魔王の絶叫は城内に木霊し、程なくして静かになった。
某ゲームをしている時にもっと早く投げれるだろうと思って投稿しました。