鏡は秘密の隠し通路
『〜学校の七不思議〜』
どの学校にもいくつかあるであろう噂話。
誰もが一度は聞いた事があるはず…。
この学校には旧校舎の踊り場にある鏡が異世界へ繋がっているという噂があった。
「鏡が秘密の隠し通路で入ったら最後。出てこられなくなるらしいよ?」
「え〜?そんな訳ないでしょ〜?」
「じゃあ、今日の放課後行って検証してみようよ。」
私達三人が道を間違えたのはきっとここだ。
行かなきゃ良かった…。
ある日のお昼休み。
教室で香澄が友人の志穂と美月と話している。
「ねぇ、香澄聞いた?旧校舎の噂。」
美月が楽しそうにお弁当を広げながら言った。
「あ〜鏡が異世界に繋がってるって話?」
香澄は卵焼きを口に運びながら答える。
「え〜?そんなのただの噂でしょ〜?」
志穂が疑うような目を美月に向けて言う。
「志穂はこういう話、苦手だっけ?」
香澄が志穂に聞くと
「う〜ん。嫌いじゃないけど怖いじゃん。」と苦笑いした。
「そんな事言って〜!結局、志穂もいつも最後まで聞くじゃん!本当は好きなんでしょ?」
「だって聞いちゃったら結末が気になるもんっ!聞きたくないのに美月が話すから〜!」
二人はやいのやいの言いながらも楽しそうだ。
そんな二人を見ているのが香澄は好きだった。
話が盛り上がり、その日の放課後に噂の真相を確かめる事になった。
…放課後。
シーンと静まり返った旧校舎に人影はない。
夕暮れ時で薄っすら紅く染まった廊下を手を繋いで3人で歩く。
「ね、ねぇ。やっぱりやめよ?」
気弱な志穂が小声で言う。
「やぁよ。せっかくここまで来たんだから行くわよ!志穂、覚悟決めなさい。」
姉御気質な美月が言った。
何となく怖いけれど、香澄は二人のいつものやり取りを聞いて少しだけ気が紛れた。
けれど、ここで引き返すべきだった。
まさかあんな事になるなんて思ってなかった。
「ねぇっ!?二人ともどこにいるの!?」
物音を聞いて慌てて逃げた時に二人とはぐれてしまった。
香澄はパニックになり、走り回って二人を探す。
何故かまたここへ戻ってきた。
…二階へと続く階段の踊り場。
その壁に取り付けられた大きな鏡の前。
香澄はそこで動けなくなる。
志穂のヘアピンと美月の靴が転がっていたのだ。
「え?さっきはなかったのに…。う、嘘でしょ?二人とも出てきてよーっ!!」
鏡に向かって叫ぶと鏡の真ん中が一瞬歪んで見えた。
「え?…今の、何?」
恐る恐る手を伸ばした香澄の腕が急に何者かに引っ張られる…!!
「いやっ!やめてっ!!離してよ!」
必死に抵抗するが、物凄い力で鏡の中へと引きずり込まれる。
「誰かっ!誰か助けて!!いやぁーーーっ!」
その声を最後に香澄の声は一切聞こえなくなった。
後に残されたのは、香澄がいつもつけていたブレスレットだけだった…。
……
「ねぇねぇ。知ってる?旧校舎の噂。」
「知ってる!鏡の中に浮かび上がる女子生徒でしょ?」
…三人は一体何処へ消えたのだろうか?
誰も未だ見つかっていない。