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勇者の血反吐を見るまでは!  作者: 太陽寺すう
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フェルマの風塊

ベラローズの左半身は、ハイブワーフによる最期の一撃を受けて不随の状態であった。


魔侯は苦笑した。

意気衝天のフランザーに続き、東の塀を乗り越え別の軍まで登場したのだ。


フランザー同様、ファーガ亡き後のリリシアを盛り上げる若き副官・フェルマである。

涼しげで爽やかな美青年といった風貌に、リリシア紋の入ったマントを靡かせていた。

彼は接近戦よりも魔法による中距離攻撃を得意とし、炎、水、風など操るエレメントが多岐に渡るのが強みであった。


「間に合ったようですね。今が好機と見ます!」


「魔侯・ベラローズよ!大人しく捕虜となれば、その命、今しばらく奪わずにおくぞ!」


一方のフランザーは"力"の将として名高い。

確かに筋肉質ではあるが、見た目の印象を遥かに凌駕する常人離れしたパワーが彼の武器である。


「愚かな…、例え首だけになったとて、貴様ら人間ごときに敗れる魔侯ではない」


「減らず口を!致し方ない、討ち取るぞ!」


猛るフランザーだが、彼としてはベラローズが降りてこない限り戦う手がない。

これは、どちらかと言えばフェルマら魔法兵たちに対する攻撃命令であった。


一斉に、火矢の雨の如く、炎弾がベラローズに襲い掛かる。

しかし、命中したと見えたその全てが、命中したと見えたその瞬間に、水を掛けたように消滅した。


「人間の扱う魔法など児戯に等しい。届かぬ、届かぬ」


ベラローズが張った魔導障壁であった。

下級魔法兵たちは己の法撃が効かぬと知ると、一人二人と手が止まっていく。


「怯むな!バリアを張っているようだが、許容量にも限界があろう。後ろの部隊も前に出せ!」


リリシア軍は砦の外側に待機していた支援型魔法兵をも中に呼び込み、一斉法撃を敢行したが、無駄に魔力を消耗するばかりであった。


しかし、魔法兵たちが火炎法撃を続けている間、ベラローズはダメージこそ負わないが、自由な身動きは取れずにいる。

炎の弾幕で視界も不明瞭になっていた。


「私が何としてでも奴を引き摺り下ろします。そこからはフランザー将軍、お願いしますよ!」


この間隙を利用して、フェルマが遥か上空に風塊を形成している。

魔侯の背後からこれを落とし、地に打ち下ろそうというのだ。

風塊の創造、そして魔力による遠隔操作。

これは王国副将であればこその技だが、その分消耗は激しく、フェルマの表情には疲労が見てとれた。


綺麗な顔を歪めて歯をくいしばり、両手を突き出して風魔法をコントロールする。


「エア=バッシュ!」


フェルマはブロック状になった風を一気に落下させた。

魔法隊の火焔弾幕は続いている。

彼らも消耗激しく、勢いは弱まってきていた。


幸い、ベラローズの後方に障壁は築かれておらず、風塊は魔侯の背に勢いよく打ち込まれた。


「ぐっ…!小癪な」


そのまま押し込まれるように砦中央付近に落ちてくる標的に、リリシアの大将・フランザーがここぞと駆け込む。

凡夫では両手をもってしても扱い兼ねるであろう大剣・グランゼルクを片手に。

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