運命
ある日私は、定期検診で学校には行かなかった。実は小学生の時から呼吸器系の疾患があり…医師からも長く生きれるか分からないと言われたのだ。それで今日は…長く生きれるか否かの…選択の日でもあった。一通り診察が終わった後担当医から
「優衣さん…保護者さん呼んできてくれる?」
そう言われた私は、母を呼びまた母と一緒に診察室に入る事にした。医師からは、ココからは聞かない方がいいと言われたが…
「聞きたいんで…いい結果でも悪い結果でも知りたいんです」
そう言い半ば強引に診察室に入る。そして私と母は…医師が言った言葉にショックを隠せなかった。
「いいですか?優衣さんは………持って後二ヶ月です……」
医師の口からは、重たい言葉が出た。母は泣き崩れる事しか出来なかったようで…隣で私の名前を叫びながら泣いていた。私は私で少し暗い顔をしてこう思った。
「あ〜私は後が無いんだ…死んじゃうんだな…」
と
本来なら入院するべきだが…私はその選択をしなかった。何故なら君に伝えたいから十二年前に約束した事を今でも覚えているのだから…今君がいたら私は君に質問をしていたのだろうこんなふうに
「貴方は今想い出を作れていますか?」
次の日私は学校へ登校した。おそらく人生で最期の学生生活だ。悔いのないようにしたい。ただ君と話したいけど話す内容が思い浮かばずにいた。そしたらとうとう今日の最後の授業になった。
「次の時間は………美術か」
私はそう言葉を零し美術室へ足を運んだ。授業が進んでいくにつれ君は、私の目の前にいる緑色の髪の毛のクラスメイトと話していた
「あのひぐが真面目に授業受けてるわ〜…明日は雨だな」
そんな冗談話が出来る人と友達になれたんだねと心で喜んだその時君は、そのクラスメイトにツッコミを入れていた。まるで兄弟みたいに…その時の君は真面目な顔と声で言っていたっけ。
「うるせぇよ…とゆうか入学取り消しとか困るだろ」
そんな君のツッコミはどこか面白げで…どこか懐かしかった。君がそのクラスメイトにツッコミを入れて数秒後に
「えぇ……」
あー…痛いところつかれたんだなと思った。君はいつもそうだった。無意識に痛いところを突いてくるから、よく皆から「的確に物事を返す子」って言われてたっけ。私は君が変わっていないいことに喜びの声を上げた。その授業が終わり君が、片付けをしている時に私は君に話をかけてみた。でも君は私の事を完全に忘れているようだった。
「後で渡したい物があるから…玄関で待ってる」
その一言だけを告げ私は美術室を後にした。廊下に出た後に困惑している君の声が聞こえた。ちょっと意地悪だったかな?今度謝りたいな
「おい!…って居ねぇ!」
驚きを隠せない君の声を聞いて私はもう少し詳しく話すべきだったと後悔した。でもあまり詳しく言ってしまうと楽しみが無くなってしまう気がして言えなかった。
君に要件を伝えて十五分ぐらいは経過しただろう。君は少し小走りになりながら玄関に到着したのが見えた。私は気付いていないフリをして君が話してくれるのを待っていた。君は少しぶっきらぼうな感じに
「おーい…今来たぞ」
君はそう声を出し私は君の方へ視線を向けた。少し顔が赤くなっている君は、おそらく照れているのだろう。私は鞄を開けある物を取り出しながらこう言った。
「古くて埃っぽいけど…」
そう言って鞄から黒い革製の箱を取り出した。君は怯えているような緊張しているような顔つきだったのを今でも覚えてる。私は苦笑いをし
「中身…懐中時計だよ?」
と言った後君は徐々に元の表情に戻っていった。それから一間空き君が言葉を口にした。
「懐中時計って……俺お前になにかしたっけ?」
私は苦笑いを零しながら君の質問に返した。この時苦笑いしていたのは出てきそうだった涙を耐えたかったから君には、まだ泣き顔を見られたくなかったからだった。もう十八なのに大人気ないな
「してないよ笑…使い方は……ごめん……」
そう言葉を残し私は走った。もう耐えられなかった。君にまだ言えなかった。私は十二年前に君と会って友達になった事・君が今でも好きだとゆう事・私は後少しで死ぬとゆう事。それ等を口に出してしまいそうで怖かった。帰り道何度も立ち止まっては君に対する思いと自分の情けなさに心を痛めた。
「何でかなぁ?…君はいつも優しくて…それは変わって無くって…私は自分の思いをいつも人に言えなくって…お互い変わって無いのに……寂しいや…もう……君と話せなくなるのかなぁ……お互いの道を……歩めなくなるのかなぁ……君は優しいところ以外は変わっていったのに…私は変わって無いよ……情け……無いよ……」
そう言葉を零しながら涙を流し帰路に着いた。君は変わった。私とまた会う今日までに…でも私は変わっていなかった。今からでも変えれるって思うかもしれない…でも私は残り少ない命でどう君みたいに自分を変えれるのか分からなかった。
「でももしまだ君と話せる時間があれば自分を変えることは出来るのでしょうか?」
そう零し空を見上げた。その空は夕焼けに晒された紅色だった。