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追憶のRAIN  作者: 寒波江 奇亰
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プロローグ 『リンネの日記』

記憶とは、膨大なデータの貯蔵庫である。

過去に経験した事象を保存し管理する事で、時に目の前の問題に対し最善の解決策を導き出す。

スーパーに陳列された食品を手に取って、自分の趣味嗜好に近い味の物を知る事が出来たなら、次から無作為に手を出して外れくじを引くという事も無いだろうし、炎に近づきすぎて火傷を負ったのであれば、再三痛みを伴わなくても同じ事態に陥る事を回避しようと自然と体が動く。

また、楽しかった思い出をアルバムとして記録し、不安や失意にうつむいた時引っ張り出して眺めたりしても有効だろう。

意中の相手が、何の気無しに見せたいつもと違う表情に、勘繰って妄想を膨らませた青春の一ページなど、普段は気恥ずかしくてまともに見られた物では無いが、たまにはそんな思春の淡い日々に思いを馳せるのも満更では無い。

最も、冒頭にて書き連ねたのは、全て記憶の良心的な側面に過ぎないのだが…

想像して欲しい、人間の記憶が生まれたときのまま新品のノートのように真っさらだったのなら、この世界に戦火は産声を上げただろうか?

少し飛躍しすぎた例えであることは否めない、ならば虐めはどうだろう。

集団に馴染めない者を、共通の敵として認識し攻撃する事で互いの団結力を高める、これは一種の知恵と言って差し違い無いのではないか。

知恵を絞るという事は、記憶によってなせる所業だ、それは時に理不尽で、不条理で、非生産的な結果だけを残す。

蔑み、妬み、憎しみといったそれらの感情を人は悪意と呼ぶ。

悪意は記憶の成れの果て、目も当てられない程に醜く腐敗したそれらが、ありとあらゆる悪業を育む温床の役割を担っている。

息をするのと同様に、知らず知らずのうちに我々は種をまき、畑を耕し、水をやっているのだ。

もし、もしも仮に記憶を消し去ることが出来たら、妥協しても悪意の芽だけを摘み取ることが出来たのなら、この酷く腐りきった世界で悲しみの雨は止むのだろうか。







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