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文学少女じゃなくても

作者: まるマキ

水泳部の朝練は気持ちいいですが1日眠気との戦いです。

「こらー真面目に授業を受けろ」

 貴重な睡眠時間の地理の授業中ついに大目玉を食らってしまった。

 俺は地理は好きだ。世界の事象の中にきちんと理論が存在してとても面白い。だからテスト前部活がなくなれば集中して勉強するし、いい結果を出した。ただ朝練をした日は抗いがたい眠気がやって来る。だからこの時期はつい眠ってしまう。

 いっしょに怒られた女子は2つ隣のクラスの子だ。地理の授業中、俺が起きてる間は本を読んでいるか外を見ているかだった。

 俺達は自慢じゃないがテストはいつもいい結果を出す。だからある程度見逃してもらえてる感があったんだが今日は先生のご機嫌が悪いらしかった。

 ひとしきり怒って気がすんだ先生に座らされると彼女はまた外を見始めた。


 授業が終わり部活に向かう。高校総体の県大会に残った俺は進学校なのにまだ引退できずにいた。最後まで悔いなく終わらせてから勉強に打ち込みたい。俺のわがままを親も先生も聞いてくれた。定期テストの勉強はきっちりしとくものだと思う。

 とにかくこの頃はまだ水泳浸けの日々を送っていた。


 水泳の部活動はただがむしゃらに泳いでいる訳じゃない。体を休めるために25m往復計50mただ歩くこともある。そんな歩きの最中俺は彼女が地理教室にいるのを見つけた。

 練習の最中であまり見ていられなかったが彼女は立ち上がり外を見ていた。次の歩きでは地理教室の真下のプールからは角度的によく見えないがいつもの席に座っているらしかった。きっと本を読んでいるんだろう、想像し俺は練習を続けた。

 その日から練習中歩きの度に彼女を探していた。


 あるとても暑い日何時ものように地理教室を見上げると何時もと様子が違う彼女がいた。少しずつ窓から身を乗り出している。血の気が引いた俺は気付くととプールから飛び出し地理教室にダッシュしていた。ダメだダメだ!止めろ頼む!何かを叫びながら教室のドアを開けた。その刹那

「きゃーー」

 と響きわたる悲鳴と座り込む彼女。俺は自分の格好に気づいてわたわたと言い訳しながらプールに戻った。

 その日練習後待っててくれた彼女と駐輪場で会ったが正直何を話したか覚えていない。


 部活を無事引退し切り替えて勉強するに辺り俺が選んだ場所は地理教室だった。毎日彼女に会いに行き、気付けば彼女を好きになっていた。文学少女じゃないただ空を見上げるのが好きな彼女を。

 あれからもう20年未だに彼女はよく空を見上げている。

「入道雲の誘惑」も読んでいただけたら嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
[一言] これは二人のなれそめの話で良いのでしょうか? とても爽やかな印象を受けました。 面白かったです!!
[良い点]  青春を感じさせる物語でした。  純文学かなと思いましたが、恋愛だったのですね。 [一言]  読ませて頂きありがとうございました。
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