バリエリアリッタ
私の髪は、とても普通だ。
見た目だけは。
他の人に聞いても、きっとそういう。
でも、少しだけ違う。
私は、髪の中で魚を飼っている。
たゆたむ魚は気持ち良さそうで、
本当は髪じゃなくて、私の髪は、海なのかしら。
さざめく風は、髪をはためかせ、波を生む。
手櫛を通すと、魚たちがツンとつついてくる。
餌はいらないようで、枝毛が無いから、
枝毛を食べてるんじゃ無いかなと思う。
寝ていると、こぽこぽとたまに水みたいな音が聞こえる。
夢で、水の中を尻尾を翻して、優雅に泳いでいる。
あぁ、私はお魚だったかしら。
陽の光で目がさめる。
やっぱり私は人間だったか。
洗面所に行って、顔を洗い、眼鏡をかける。
「む」
髪が右往左往して、広がっている。
これは、スタイリングが面倒だな。
ふぅと、ため息を吐いて、髪を濡らしていく。
ちゃぷんと、魚が跳ねる音がした。