イエネコは本棚にトキメク
酷い怪我をしたわけでもないので、目を醒ましてしまえばすぐに退院させてもらえたのである。
住み慣れた家に帰れてホッとした……と言うより病院はある意味で大事なモノを失ったところなので自然と体が震えるのだ。
お気に入りのクッションの上で箱型になると落ち着くのである。本能的にやってるけど足が上手く格納されて、変形ロボットみたいでカッコよくない? ない? さいで。
どーも自分、不器用でして。まぁるいお手手(※前足)は可愛いのだが、人間のように掴めないのは不都合である。なるほどな、人間が二足歩行するようになったのがやはり分岐点だったのだろう。
俺は部屋の中を見回す
こんな俺でもできるコトはなかろうか。
……! そういや俺、自分が死んだ後に発売された本読んでにゃいやんけ!
なんで思いつきもしなかったんだ!
ご主人の書斎に入る。
ちなみに風呂場での事件以来、台所や風呂場、トイレなんかは簡単に入られないようにされてしまった。
ご主人は高級な椅子の上で胡座を書きながらパソコンに向かている。その後ろをチョコチョコ歩いていくと大きな本棚が聳えたっていて、人間にとってのビルのようだ。
いやー、見上げるには首が痛いのだけど、どうやらこの辺の記憶はあるようで、読んだ記憶のある本がかたまってあって、その先が死んだ後に発売した作品なのだろう。あ! ”真の探偵は事件を起こさせない”シリーズだ! 確か死ぬ間際に発売予定日を知って楽しみにしてたんだよなぁ。
だが、そのタイトルは下から10段目、150cmほどか? 高い……! これは策を練らねばなるまいて……!
ご主人のために何かする、なんてすっかり頭から抜けている耀夜であった。