目覚め
目を開くと《・・・・・》視界に入ったのは見知らぬ天井だった。
いや、言ってみたかっただけだ。
実は少しだけ見覚えがある。
ゾワッと全身が総毛立つ。
獣医だ《・・・》。
そうだ、生まれた時から一緒だった相棒を失った場所である。
「耀夜ぢゃん!」
ぐえ! 何かがお腹にめり込む。
ああ、ご主人ではにゃいか。だがその様子は尋常でない。柔道の押さえ込みの様に逃さぬとばかりに抑えつけられていて、泣き声が止まない。
はて、何があったのかと思い返して……。
ああ、俺は溺れたのだった。
水の中で身動きもままならず、暗くなっていったあの瞬間を思い出すと本当に怖い。
本当に生きてて良かった……。
目の前で泣いているご主人に申し訳なくなる。
お腹を押さえられていて動きが制限されていたが、なんとか柔にゃんな身体を曲げて、涙を拭う。
「……イック。耀ちゃん、舌ザラザラだよ」
そう言うと目を細めて……、
ぐえ。
再びお腹に落ちる頭。
す~す~と可愛いらしい寝息が聞こえてくる。
「あ~、寝ちゃったかー。大丈夫だって言ったのに目が覚めるまで起きてるってきかなかったからな」
なんで説明口調なんだかわからないが、どうやらこのまま枕役をせざるを得ないようだ。