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異世界亡命者

潮崎と半漁人の父つぁんの指示で、

船員達は積荷の交換作業を進める。


地球防衛軍日本支部は、

ドラゴンの一件で、

大型生物兵器を

普段は小型化させておくことで

管理運用する体制を構築すると、

大型生物兵器の捕獲に

本格的に乗り出した。


敵地潜入の工作員は時間を掛けて、

こうした大型生物の密漁、

密売ルートを構築していった。


時にはゲートを通過して

異世界を侵犯しなければならないことも多く、

防衛軍が黒幕であることを

敵勢力に悟られないため、

密漁・密売を生業とし

異世界をまたにかける

海賊団という存在がつくり上げられた。


その異世界海賊団の

団長に選ばれたのが潮崎である。


実際に、ここ最近は

異世界住人による海賊行為が

多くなって来ており、

日本近海を航行中の船舶が

襲われる事件も発生していた。


よって海賊団は正体を隠すには

もってこいであったし、

実際にそうした

異世界の海賊団と交戦することもあった。


ちなみに他の異世界では

山賊団が活躍していたりもする。


-


父つぁんは、クジラ以外の引き渡し生物を

潮崎に見せて確認した。


「知性生物は入ってねえだろうな、父つぁん。

知性生物はうるせえからな。


拉致して人身売買したことにされちまったら

面倒なことになる。」


「その辺は心得てますよ、旦那」


「しかしなぁ、

実の娘売り飛ばそうとした俺が、

人身売買に気を使うことになるとはなぁ」


「そういうの旦那達の世界じゃ、

因果応報って言うんでしょ?」


「因果なぁ、まぁ確かに因果なもんだよ」


潮崎は笑った。


こういう話で笑ってしまうあたりは

どこかが壊れている防衛軍メンバーには

よく見られる傾向だ。


-


「旦那、今回も亡命者が結構いますんで

確認してやってくださいよ。」


「父つぁん、本当に亡命者なんだろうな。

拉致して来たのとか勘弁してくれよ。


俺は前科があるだけに

すぐに人身売買を疑われちまうんだから。」


父つぁんに案内された潮崎は

亡命者一人一人に

亡命の意思を確認してまわる。


「いえね、この間の戦争で

息子が捕虜になっちまったんだけどね。

こっちの方が暮らしやすいから、

家族みんなでこっちに亡命して来い、

って言われましてね。」


「おばちゃん、

それで亡命しますって、

引っ越しじゃねえんだからよ。


それじゃ亡命じゃなくて、

もう移民とか難民だよ。


一族総出で来られちゃっても

困っちまうんだよなあ、こっちも。


まぁ仕方がねえから

連れてってやるけどよ。」


拉致どころではなく、

むしろ来たくてしょうがない人達だった。


-


「父つぁんは今回はどうすんだい?

こっちの陸に上がるのかい?」


「今回は私も連れてってもらおうかなと

思ってやして。


向こうで売れそうなものを

見て回ろうかと思ってましてね。


マーケティングってやつですかね。」


「何かこっちの物で

売れそうなもんはあるのかい?」


「向こうはほとんど刺激が

ないようなとこですからね。


こっちのもんは基本何でも売れますよ。


この間運んだ醤油とかも評判よくて、

すぐ売り切れましたよ」


「おいおい、魚類が醤油使うのかい、

共食いじゃねえのかい、それ」


「あっしらだって、知性のない魚は

家畜として食ってますからね、

そんなもんですよ」


「まぁじゃあ、

陸まで一杯やりながら行くかね、父つぁん」


-


クジラの死骸二体をはじめとする

積荷の交換が終わると、

父つぁんが乗って来たクジラ船は

ゲートを通じ元の世界に戻り、

海賊船団は日本へ向かう。


船長室で、

潮崎と父つぁんは酒を飲み交わしていた。


「この真珠はいつものやつです、旦那」


海賊団では、大型生物とは別に、

真珠を物々交換で買取り、

持ち帰って売り捌いていた。


そこで得た利益は

海賊団の維持費用に使われており、

その辺りは防衛軍からも認められていた。


「旦那、昔みたいに

ギャンブルにつぎ込んだり

しないでくだせえよ」


「大丈夫だって。

今はギャンブルのこと考えるだけで、

頭がガンガン痛くなって、

吐き気がしてきやがるんだぜ。


いくら身から出た錆とは言え、

防衛軍の洗脳、人格矯正ってのは

とんでもねえもんだな。」


潮崎は顔の前で

手を振るポーズをしてみせた。



「今の司令官はおっかない方ですからね。

この間の戦争だって、

結局最後は死人使ったゾンビ兵で

物量作戦でしょ。


『人間てのは何てことしやがんだ。

俺達半魚人には到底真似が出来ねえ芸当だ』


てみんな震え上がってましたぜ。」


父つぁんが笑いながらそう反応した。


「しかし不思議なもんだよなぁ。

こっちの廉価な玩具が

そっちじゃ高値で売れて、

こっちじゃ高価な真珠が

そっちじゃ小銭扱いされてるって

言うんだから。」


「それが商売ってもんですよ、

旦那。お宝の価値なんて

それぞれってことですよ。」






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