ゾンビ兵『Bros-408』
真っ暗な闇の中、
部屋の前で固まっているトモヤ。
その目の前で突如
目を赤く光らせたロボット兵。
トモヤは絶句、
言葉すら出せない。
ロボット兵の赤く光る目は
ジリジリとスパークを放ち
今にも光線が発射される寸前。
ビームが放たれるその瞬間、
拳がロボット兵の顔を殴り、
その方向をそれさせる。
ビームはトモヤの横、
斜め上に向かって放たれ
壁を溶かし大きな穴を開けた。
トモヤの窮地を救ったのは
やはりゾンビ兵『Bros-408』。
トモヤはその光景に既視感を覚える。
以前助けられた時の記憶は
消去されている筈であるにも関わらず。
トモヤはそのブロスの姿に
確実に兄の面影を見ていた。
「あ、兄貴……?」
それはトモヤの口から
咄嗟に出た言葉。
何故兄のことが
突然口をついて出たのかわからない。
何故自分の命令なしに
ブロスがここまで来て
自分を助けているのか、
そもそも何故ブロスは
自分の危機がわかったのか、
何故とわからないことが多過ぎて
トモヤは混乱状態。
以前一条女史が言っていた
超能力的なテレパシーのようなもので、
自分の危機を感知して
助けに来たとでも言うのだろうか、
そんな考えが頭をよぎる。
-
そんなトモヤをよそに
ブロスはロボット兵を
その拳でひたすら殴り続ける。
抵抗を試みるロボット兵だが、
その顔部分の表面は
ブロスの拳を何発も打ち込まれ、
次第に凹んで行き、
やがて目からも赤い光が消えて行く。
奇襲を掛けて来たロボット兵、
あくまで潜入工作用らしく
それ程強いという訳ではないらしい、
しかしそれでもブロスが
殴り続けただけで壊れるというのは
さすがにおかしい。
ブロスが強くなったということなのか。
次々といろいろなことが起こり、
やはり訳がわからず立ち尽くすトモヤ。
だがもっと驚くべきことが起こる。
ロボット兵を殴り倒した
ゾンビ兵『Bros-408』は
トモヤの前に立つと、
「トモヤ、ダイジョウブカ?」
喋ったのだった。
-
突然喋ったブロスを前に
茫然としていたトモヤだったが、
「ココハアブナイ、ソトニデヨウ」
ブロスはそんなトモヤの
手を引き、走り出す。
基地内部はロボット兵の
破壊工作により
崩落するかもしれない、
確かにこのまま
ここにいるのは危険だろう。
真っ暗闇であるのに
まるで見えているかのように、
トモヤを誘導するブロス。
天井や壁が崩れ落ちて来るのを
まるで未来が予測でも
出来ているかのように、
確実に避けて行くブロス。
一体ブロスに何が起こっているのか。
やはりトモヤには
何故とわからないことが多過ぎて、
もう今は考えるのを止めるしかなかった。
引きこもりであった筈なのに
部屋から出たことも、
今のこの状況では
すっかり忘れてしまっている。