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非人道的地球防衛軍とゾンビ兵  作者: ウロノロムロ
普通の地球防衛軍
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擬似家族生活

少し話は遡る。


異世界の難民孤児を

防衛軍が受け入れることになった時、

心良く思っていなかったのは

どちらかと言えば男達の方だった。


ここは軍事基地であり、

ここも戦場のようなものであり、

本来女子供が立ち入るような場所ではない

という前時代的な頭の硬い者達は

男の方が多いということであろう。



積極的に子供達の面倒を見る女達は

任務もあり、育児は当然大変だったが、

当番を決め、みなが子供達の世話をした。


子育ての負担を出来るだけ

多くの人間に分配することで、

子供達を常にフォローして行くというのが

当初からの方針でもある。



当初はほとんど女性のみであったが、

徐々に男性の参加者も増えるようになって来た。


その最たる男が、

『チーム外道』の石動いするぎだった。


「託児所じゃ、ねぇんだから」


「あんたはなんてこと言うだい、

こんな可愛い子供達に

よくそんな酷いことが言えたもんだね」


はじめはそう言って彩姐さんと

口喧嘩していたもので、

子供達も最初は石動を見て怖がっていた。


「あぁ、これだから、

ガキは嫌なんだよ」


遠いところの物陰から

石動をじっと見つめる子供達、

という光景がしばらくは見られた。


しかし、子供達の中に

車椅子に乗った人魚の幼女がいて、

一応は軍事基地であり

バリアフリーに配慮されていない

ムショ内では車椅子が使えない所が多く、

たまたまその場にいる石動が

よく手伝わされたりもする。


二メートル近い大男が

肩に人形の幼女を乗せて歩く

異様な光景ではあるが、

どこか微笑ましい。


またこの人魚の幼女が、

金髪碧眼でとてつもなく可愛いらしく、

「ありがとぉ」などと言うものだから

いつしか石動も娘を可愛いがる

父親のように甘々になってしまう。


「たっかぁいー」


などと人魚の幼女も喜ぶものだから、

他の子供達も怖さなど忘れ、羨ましがって、

自分も肩車してくれとねだる。


「いいなぁ、僕も、僕もー」


そうしている内に

石動も子供達もすっかり慣れていく。


「ぷっ、お前、何いつも

子供大勢ぶら下げてんだよー」


「う、うるせえ、

子供はウェイトに丁度いいんだよ」


「これは筋トレだよ、筋トレ

常時筋トレしてんだよ俺は」


訓練や任務の時以外は、

いつも子供を四、五人ぶら下げて歩く

石動はムショ内でよく見る光景となり、

一条女史にも冷やかされていた。


そんな感じで、

男達も次第に子供達に情が移り

可愛いがっていくようになる。


-


それから数年は

子供達との幸福な生活は続く。


もちろん任務は常にあり、

戦闘あったし、死者が出ることもあったが、

幸いなことにその間

大きな異世界間戦争が起こることはない



非番の時も、特に決まりはなかったが、

子供達のところで睡眠を取り、

子供達と一緒に遊び、

擬似家族生活を営む者が多くいた。


もちろん子育てに関する問題も多々あったが、

それは参加者がみんなで解決して

乗り越えて行く。


いつからか子供達の受け入れに

積極的ではなかった者達も

子供達のいる場所に

集まって来るようになっていた。


今までムショの中にはなかった

家族の生活がそこにはあったからか。


長い間、ムショ内で生活している者にとって、

生活の基盤となる家族の存在は

必要だったのかもしれない。


結果的にムショ内には

コミュニティーとしての意識が高まり、

育っていくことになった。



そしてそれがこの後起こる大事件で

思わぬ効果となって現れる。





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