黄金の国・ジパング
みんなが集められてこの話があった時、
彩おっかさんは泣きながら謝った。
「本当にすまないね。
堪忍しておくれよ。
あたし達だって、
あんた達と離れたくはないんだよ。
ずっと一緒に居たいんだよ。
本当だよ、信じておくれ。
でもね、
このままここに居たら
あんた達はまた戦争に巻き込まれちまう。
今度は難民どころか、
あんた達を死なせてしまうかもしれない。
あたし達だって、
そんなことになっちまったら
悔やんでも悔やみ切れやしない。
あたし達が死んでも、
せめてあんた達だけは生き残っておくれ。
あたし達の分も幸せになっておくれ。」
他のおっかさん達もみんなずっと泣いている。
我慢しきれなくなったおっかさん達が
僕等に飛びついて来てみんなを抱きしめる。
おっかさんも僕達も
みんな集まり固まって泣いた。
-
そしておっかさん達との
お別れの日がやって来た。
僕等は過疎の村にバラバラに送られて、
そこで暮らすことになるらしい。
ここと同じように
村のコミュニティーの子供として
育てられて行くそうだ。
必要なお金は、よくわからないが、
この世界の政府と防衛軍が
負担してくれるらしい。
龍之介は本当のお母さんの事情で
もう少しここに残ると言っていた。
僕等にはまたおっかさんが沢山出来て、
今度はおとっつあんも出来るらしい。
みんながおっかさんで、みんながおとっつあん、
親がそんなにいっぱいいる子供は
僕等だけなんじゃないだろうか。
それはそれで幸せなことなのかもしれない。
「本当にすまないね。堪忍しておくれよ。」
彩おっかさんは悔しそうな顔で泣きながら、
みなにそう言い続けた。
彩おっかさんが僕を抱きしめると、
やはり柔らかくて、
温かくて、優しくて、いい匂いがした。
ここで過ごした数年間、
彩おっかさんはずっとそうだった。
僕は本当のお母さんを知らないから、
本当のお母さんというのは、
彩おっかさんみたいなのだろうと
ずっと思っていた。
このいい匂いの彩おっかさんともうお別れで、
もうこうして抱きしめてもらえることは
二度とないかもしれない、
そう思うと僕は涙が止まらなかった。
「本当にすまないね。堪忍しておくれよ。」
彩おっかさんは泣きながら、
ずっと謝り続けた。
おかっさん達とのお別れは名残惜しく、
何時間もかかってしまう。
おっかさん達は、
車の後を追って走ってついて来た。
途中で追いつかなくなると止まって、
泣きながら。
いつまでも手を振っていてくれた。
車から見えなくなるまで、
いつまでも、いつまでも。
ここには、
金銀財宝のお宝はなかった。
でもお宝以上のものばかりだった。
おっかさん達とここで暮らした日々は、
いつも黄金色に輝いていた。
ここで暮らした数年は
かけがえのない宝物だった。
黄金の国・ジパングは確かにあったし、
確かに僕は黄金の国・ジパングにたどり着いた。
おっかさん達との思い出は
いつまでも黄金色に輝いているから。