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幸福な日々

それから、防衛軍の仕事を手伝ったりもした。


掃除や洗濯、荷物運びなんかを

大人の人達と一緒になってやる。


「そういうことも大事なことだからね。」


彩おっかさんはいつもそう言っていた。

頑張るとおっかさん達は

頭を撫でて褒めてくれた。



それ以外の時間は

自由に使っていいことになっている。


ムショ内の公園や娯楽施設は

自由に出入りしていいと言われていた。


そんな時はよく、

多古さん、伊香さん、魚人さんが

一緒に遊んでくれる。


僕等はいつも一緒に遊んでくれる

三人が大好きで、おっかさん達に、

多古さん、伊香さん、魚人さんが

おとっつあんだったらいいのに

と言ったことがあった。


「さすがにそれはないわあ」


「いくらあんた達の頼みでも

それはちょっと」


おっかさん達は口を揃えてそう言う。


でも僕等は仕事で忙しくしている

天野の兄ちゃんや他のおいちゃん達より、

一緒に遊んでくれる三人のほうが好きだった。


「なんだお前ら、

カブト虫とか捕ったことないのか?」


夏のある日僕等は、伊香の兄ちゃんに

カブト虫の捕り方を教わった。


食べるため以外に虫を捕まえるというのが

僕等には不思議で仕方なかった。


「なんや自分ら、川で魚捕ったことないんか?」


魚人さんが川魚の捕り方を

教えてくれると言い出して、

みなで近くの川までキャンプに行くことになる。


「よく考えたら、

わし淡水魚違うやんけ」


言い出した本人の魚人さんは

川で大騒ぎしていたが、

みんなで食べたバーベキューは楽しかった。


「多古です。」


いつも多古さんはそう言って

ボーっとどこかを眺めていた。


-


春は、お花見をして、

ムショの外に遠足に行って、

運動会なんかもあった。


夏は、花火大会や夏祭り、海やプール、

キャンプにも連れて行ってもらった。


秋は、紅葉狩りやハロウィン、


冬は、クリスマス、大晦日、お正月、スキー、

バレンタインとイベントがいっぱいだった。


クリスマスには博士が

サンタクロースの恰好をして

プレゼントをくれたし、

スキーは元の世界の寒冷地を思い出したけど、

楽しくて全然違った。


毎年毎年、おっかさん達と

そんな楽しい一年を過ごして

本当に幸せだった。


こちらの世界は毎日が夢のようで、

元の世界のことが

だんだん遠い昔のように思えて来た。


もしかしたら元の世界のほうが

夢だったのではないかと

思いはじめるほどだ。


この幸せな日々がずっといつまでも続く。


おっかさん達と一緒に

ずっといつまでも暮らしていられる。


僕等はそう思いはじめていた。


あの事件が起きるまでは。





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