最高の楽しみ
食事は、僕等にとって最高の楽しみ。
この世界の食事はとても美味しくて、
お腹いっぱいになるまで食べさせてもらえる。
いつも僕等はお腹いっぱいになるまで食べた。
僕等全員に、何日もお腹を空かせて過ごした
嫌な思い出がいつもあったから、
ついつい食べ過ぎてしまうのじゃないだろろうか。
「いい食べっぷりだねえ」
おっかさん達はいつもそうやって褒めてくれた。
「残さず食べて、好き嫌いがなくてエライねえ」
そういうおっかさんも居たが、
僕等からすると好き嫌いの意味がわからない。
いつもお腹を空かせていて、口に入るのなら
なんでも食べるのが当たり前だったから。
もちろん食事の準備は僕等も手伝う。
そういうことも
出来るようにならないとダメだって、
彩おっかさんはいつも言っていた。
彩おっかさんは食事のマナーには厳しい。
ただこれは僕等子供達だけではなくて、
他のおっかさんにも厳しかった。
「前々からあんた達の食事作法は
気になってはいたんだけどね。
いい機会だから、
あんた達も子供達と一緒にマナーを直しな。」
「ああ、姐さん、
いいとこのお嬢様ですもんね」
「いいかい、食べ方ってのは大事なんだよ。
いくら惚れた相手でも、
食べ方一つ見てげんなりしちまったら、
百年の恋も一気に醒めちまうってもんさね。
そういう意味では
あたしらの任務に差し障りがあるからね。
最初の教育プログラムで
やったはずなんだけどねえ。」
おっかさん達も子供達と一緒に、
彩おかっさんに怒られながら、
ワイワイ食べるのは楽しい。
「いいかい。
食べ方を気にしないのは犬猫と一緒なんだよ。
そりゃ飢えて死にそうな時は仕方がないさ。
でもね、余裕がある時は人として
最低限はちゃんとしてなきゃいけないよ。」
彩おっかさんは子供達に向かって
いつもそう言う。
「食べ物の有難みなんかは、
あんた達には釈迦に説法だろうから、
言わなくても大丈夫かね。」
その後、彩おっかさんは
人と食べ物を分け合う気持ちとかを教えてくれた。
僕はいつもマトと食べ物を分け合っていたから
少し誇らしい。
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お風呂はいつも
おかっさん達と一緒に入っていた。
毎日日替わりで
いろんなおっかさん達と
ムショ内にある大浴場に行く。
半魚人と人魚は熱めのお湯が苦手なので、
いつも水風呂だけだ。
僕は朱美おっかさんと
風呂に入るのが苦手だった。
嫌ではないのだけど、
とにかく恥ずかしい。
「アクトは、
デカいちんちんしてんなあ、
こりゃ将来女泣かせになるぜ」
毎回僕のちんちんを見ながら
そう言うからだ。
でもおっかさん達が毎回体を洗ってくれて、
まるでなんだか王様になったような気分。
お京おっかさんは、
九九を最後まで言えないと、
湯船から上がらせてもらえなくて、
お多恵おっかさんは
風呂上りの牛乳が大好き。
人がいない時に水かけっこをする
おっかんもいたし、浴場で泳ぐおっかさんもいた。
どのおっかさんと入るのも嬉しくて、
お風呂に行くのも楽しみの一つだった。
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勉強は『チーム餓鬼道』の
教員資格免許を持っている
という人達が教えてくれる。
この世界の文化・歴史、
特に日本の文化・歴史はいっぱい時間があって、
日本の習慣・因習というものまで教えてもらう。
「これはね、
あんた達が本当の日本人になるために
必要なことだからね。
ちゃんと聞いておかないといけないよ。」
彩おっかさんはそう言っていた。
僕はその時まだ
その言葉の意味をよくわかっていなかったけど、
後になって思えば、
日本に馴染んで暮らすには
本当に必要なことだった。
そして日本国籍を取るためにも
必要なことだったらしい。
僕は勉強は結構出来るほうで、
彩おっかさんはいつも頭を撫でて褒めてくれる。
「アクトは賢いんだねぇ」