居座り幽霊
『チーム餓鬼道』の最初の面接で、
百体以上いた幽霊は約三分の一まで減っていた。
最終面接は、進士司令官、天野、真田、
財前女史、一条女史で行われた。
「そうかそうかー、
ついにゴーストゾンビソルジャーかー」
一条女史は感慨深そうに頷いていた。
意外と信心深い財前女史は事前に経を唱えている。
無理やり引きずり出されて来た
気の弱い真田の顔は真っ青だった。
ひたすら幽霊達との面接を繰り返す五人組。
最終面接の最中に成仏して行く幽霊も
少なくはなかった。
面接の中で話しているうちに
気分がすっかり落ち着き、
未練や執着がなくなってしまったのであろう。
もしくは諦めがついてしまったのかもしれない。
-
その中で一際青白く光輝いている
美しい女の幽霊がいた。
幽霊特有の青白い光を纏っていなければ、
普通の人間ともはや見分けがつかないほど
ハッキリ具現化している。
余程霊力が高いのではないかと思われた。
その幽霊は名を澪と言った。
彼女は未確認飛行物体の攻撃に巻き込まれて
命を落としたが、
一人残して来た幼い息子が気がかりで仕方なく、
この世に強い未練を残していた。
「あの子のことが心配で心配で、
私も死んでも死にきれなかったんです。
まだあんなに小さいのに
一人ぼっちになってしまって。
幽霊になってからも、あの子の傍で
ずっと見守っていたんですけど。
孤児院に引き取られても
なかなか馴染めないようでして。
孤児院の子達からもいじめられたりしているようで。
よく一人で泣いていたりもするんです。
もうあの子が可哀想で可哀想で、
私も見ているのも辛くて悲しくて。
もう一度だけでいいから、
あの子を私の手で抱きしめてあげたいんです。」
幽霊の澪は涙ながらにそう話した。
財前女史は涙を流しながらうんうん頷いてた。
「これだけはっきり誰にでも見えるわけですし、
話すことも出来るのですから、
肉体がなくてもお子さんに
声を掛けてあげたらいいんじゃないですか?」
天野は肉体でなくてはならない理由を問うた。
「あの子に幽霊の姿の私を見せたくはないんです。
でももう一度あの子に会って、
あの子を抱きしめたい。あの子と話をしたい。
あの子にも母親のぬくもりを
もう一度伝えてあげたいんです。
私だってもう一度あの子を抱きしめて
ぬくもりを感じたいんです。」
もはや財前女史は声を上げて大泣きしていた。
「私も天涯孤独の境遇ですが、
親はなくとも子は育ちます。
それもまたその子に与えられた試練ですから。
むしろそうした環境でもまれて、
強く育つことが大事なのではないでしょうか。」
進士の言葉には説得力があった。
同じ境遇で育ったのだから。
しかし進士のような人間になる可能性もあるわけだが。
感情が無く、
人と常に距離を置いて孤独を守ろうとする進士に、
この手の人情話が伝わるとは到底思えなかった。
「しかしながらあなたは非常に霊力が強そうです。
志望動機も問題になることはなさそうですし、
新しい肉体を提供してもよいかとは思います。」
涙ながらに礼を言うお美代。
「司令官も意外にツンデレだからなー」
一条女史はニヤニヤしていた。
-
結局、最終面接を通過したのは、
二十体いや二十名であった。
その中には何故か落ち武者の御嶽さんも入っていた。
選考に漏れた幽霊達は
一次面接の担当者に励まされていた。
「これが最後という訳ではありませんから。
是非また次頑張りましょう。」
『チーム餓鬼道』の指導の成果か、
幽霊達もすっかり前向きになっていた。
「志望動機を練り直して、また来ます。」
「自分を見つめ直して、また来ます。」
『どうでもいいから、
人目に付かないように帰れよ、お前ら』
天野の思惑をよそに、
結局幽霊達はそのままムショに居座り、
後にムショ内には幽霊居住エリアが出来る。
そして、随時新規幽霊が募集されることになり、
今回選考漏れした幽霊達は
『チーム餓鬼道』を手伝って、
幽霊のリクルーティング活動をすることになる。
とにもかくにも幽霊大量発生騒動は、
一晩かかって一応の終息を見た。
すべて終わった頃には、すっかり夜が明けていた。




