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非人道的地球防衛軍とゾンビ兵  作者: ウロノロムロ
第一次海底王国戦争・開戦
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特殊工作潜入部隊

その頃、巨大クジラに侵入し

バイオウィルスを注入するという

特殊任務を与えられた部隊は、

偽装ユニットを使って身を隠し、

巨大クジラが見える

建築物の陰に潜んでいた。


ここに辿り着くまで、

敵兵との遭遇、

爆撃対象エリア等を考慮したルートで、

大きく迂回して車で移動し、

近辺からは足で進んで来ていた。


足での移動も敵兵がいないルートを

選んで進んで来たが、

それでも途中いたるところで

屍が転がっており、

凄惨な現場となっていた。


「酷いすわ、惨いすわ、

自分もう吐きそうですわ」


屍の山を見て、気分が悪くなり

途中で何度も吐いた漁人さん。

多古、伊香も同様に何度も吐いていた。



「よく考えたら俺泳げないわ」


伊香は突然思い出しように言った。

よく泳げないのにこの任務に志願したものだ。


「兄さん、そんなアホな!

泳げないとか、ヘソで茶沸かしますよ!

生まれた時からみんな泳げるのが

普通ちゃいますか」


魚人さんは伊香を鼻で笑った。


「そりゃ『海底王国』は

海しかねえんだから当たり前だろ」


「何言ってんすか、

『海底王国』にも陸ありますよ」


「そうなんか?」


「そりゃそうですわ、

じゃなければ自分ら何で人型なんすか。

人の部分の意味ないじゃないですか。

間違えた進化したままの

魚類みたいじゃないっすか!」


多古は何も言わずにぼーっとしている。



通常は沿岸付近で水の中に

その巨体を潜ませているクジラ。


定期的に兵を吐き出す時だけ

砂浜まで上がってくるので、

口を開けるタイミングはわかりやすかった。


問題はクジラが口を開けている

いつのタイミングで

内部に侵入するかである。


口を開けてすぐに突入すると、

口の中で大勢の兵士が

既に出撃準備をしている可能性が高い。


この際、

偽装ユニットで偽装して侵入するが、

敵兵に見つかった場合は

生存確率がゼロに等しい。


兵士が出撃し、

口を閉じる直前のタイミングで突入すると、

口の中に閉じ込めらる可能性がある。


閉じ込められた場合、

クジラのサイズや歯の硬度から考えて、

まず脱出は不可能だろうと考えられた。


「尻の穴から出ればいいんちゃいますの?」


魚人さんは気軽に言っていたが、

口から内蔵を延々と歩き

無事に尻の穴に

辿り着けるとは思えなかった。


「俺はな、

クソみたいな奴だと言われるけど、

本当のクソにはなりたくねえんだよ」


よくわからないが恰好つける伊香。


「兄さん、

そのセリフカッコイイですわ、

まじリスクペクトですわ」


なんだかよくわからない勘違いが

繰り広げられる。



本作戦の指揮を取るコードネーム・流は、

クジラが口を開けたタイミングで

突入することを決めた。


偽装ユニット頼みではあるが、

ここまで実績があるアイテムだけに

問題はないと考えたのだろう。


ただ懸念される点と言えば匂いだ。

偽装ユニットでも隠せないのが匂いであった。


特に野生動物に近い種族だと

匂いで存在を知られてしまう可能性が高い。


だが幸いなことに

今回の相手は魚類であり、

空気中の嗅覚がよいとは思えないのが

救いであった。


クジラの数は三体であるため、

三班に分かれ、

各班が一体ずつ担当することになった。


砂浜付近の敵兵による

警備はほとんどいなかった。


好戦的な気性なのであろうか、

戦闘でのひたすら突き進む行動に

通じるものがある。



クジラ達が浅瀬よりその背中を見せ、

どんどんクジラの姿が水面上に上がってくる。

数百メートル級の巨大クジラ三体は

壮観であった。


まるで水中から

山々が浮かび上がって来るのではないか

と思うぐらいに。


偽装ユニットで身を隠し、

砂浜で待機していた侵入部隊は、

クジラの到着地点に近づいていた。


巨大クジラが咆哮と共に

その口を大きく開くと、

周囲の大気が揺れ、

振動しているのがわかった。


その咆哮も

鼓膜が破れるのではないかという音量で、

体が振動で揺れた。


振動が収まると同時に

一同は口の端から中に飛び込んだ。


クジラの口から半漁人の大群が

飛び出してくるのとほぼ同時に。


半漁人は全く気づかず、

ただひたすら飛び出して行く。


おそらく入れ込み過ぎて

周囲への注意が散漫になっているのであろう。


クジラの口の中は案の定、

粘着質でベタベタしていた。


クジラの体内奥で

何かが広範囲に発光しているのが見える。


それが異世界とこの世界をつなぐ

ゲートであろう。


このようなところに長居は無用とばかりに、

メンバーは口内の肉の壁に、

バイオウィルスが入ったユニットを突き刺した。


それからわずか数秒で

肉の壁に瘤状のものが出来、

それが大きく膨れ上がっていく。


体内のいたるところで

その瘤が無数に増えて行き

どんどん大きくなっている。


その腫瘍は体内にまだ残っている半漁人を

押し潰すまでに大きくなり、

体内が完全に腫瘍で埋め尽くされるまで

さほど時間はかからなかった。


このままでは

自分達も押し潰される危険性があるため、

侵入メンバーはクジラの口から飛び出した。


魚人さん、多古、伊香は腫瘍に挟まれ

押し潰されそうになっていたところを、

他のメンバー総出で引っ張り出してもらい

事なきを得た。






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