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ゾンビと引きこもり(3)

毎日毎日、昼夜を問わず、

街を駆けまわった、

バイオロイドとして。


そしてさらに

自分とバイオロイドの力を試す機会を得る。


本当に異世界人テロリストを発見したのだ。


街の裏路地で人間の女性を

襲おうとしている異世界人。


僕はビルの谷間を跳躍して飛び回り、

そのまま異世界人の背後から飛び蹴りを入れる。

異世界人は路上を転げ回って吹っ飛んだ。


なんという解放感。

今まで抑圧されていたものすべてが、

暴力という捌け口で昇華されていくのがわかる。


助けた女の人は、

バイオロイドの姿を見ると

悲鳴を上げて逃げて行ったが、

その悲鳴すらも心地よかった。



それから僕は寝る間も惜しんで

異世界人を探し回った。

異世界人を狩りまくった、

時にはバイト仲間達と一緒に。


「おい!右に逃げたぞ」


「回り込め!挟み撃ちにしろ!」


複数のバイオロイド相手に成す術もなく、

ボコられる異世界人。


自分達は正義の味方で、

正しいことを成しているのだ

という高揚感がみなにはあった。



一人で狩りをして、

異世界人を追っていた時。


その異世界人はどんどん

自分の家に近づいてき来ていた。


はじめは単なる偶然だと思う。


しかし異世界人は

家の目と鼻の先まで迫って来ている。


まさか何故家がわかる?


僕とバイオロイドをつなげる脳波を

辿って来たのか?


ガシャーン!


異世界人が窓を割って侵入して来る。

ゴーグルを取って逃げようとしたが、

異世界人は既に目の前に立っていた。


異形の屈強な巨体を真近に見て、

パニックになって慌てふためき震える自分。


異世界人がその拳を振り上げるた。


『もうダメだ』


その瞬間、バイオロイドが

異世界人の顔をぶん殴る。


異世界人はよろけながら耐えて、

バイオロイドを殴り返した。


バイオロイドは再び異世界人を殴り返す。


それから異世界人とバイオロイドは

ひたすらに殴り合いを続ける。


僕は目の前で繰り広げられる殴り合いを

震えて見ているだけだった。


それなのにバイオロイドが殴り続けていたのは、

脳波が出ていたからなのか?


やがて異世界人は力尽き、

その場に倒れ込む。



バイオロイドもボロボロの姿で立ち尽くす、

月明りに照らされるバイオロイド。


その髑髏のマスクも壊れ

顔が剥き出しになっている。


闇に眼が慣れ

段々バイオロイドの顔がはっきりわかる。


心臓の鼓動が早くなっていく。

動悸がして、呼吸が出来ない。

頭の中が真っ白になって、ジンジン痺れる。


「ああああああああ!兄貴!」


「なんで兄貴があ!」


それは地球防衛軍に入って

『海底王国』との戦いで戦死した兄貴の顔。


なんで兄貴が、なんでお前が。

お前はいつも優秀で、

みんなに褒められて、認められて、

僕にないものをみんな持っていて、

お前さえいなければ、

お前なんか大嫌いなんだ、

大嫌いなんだ!


でも涙が溢れて止まらなかった。


何もかもがグシャグシャになり過ぎて、

何もかもわからなくなっていく。






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