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ゾンビと引きこもり(2)

仕事は、『海底王国』の戦争で封鎖された

立ち入り禁止区域の後始末からはじまる。


瓦礫の山をどかし、重い物を運ぶ。

当然僕は重さを感じない。


確かに地味なVRゲームをやっている感じ。


本当の現場は

もっと凄惨なものであったようだが、

そういう部分はCGで

ショッキングではない程度の画像に

差し替えられているらしい。


バイオロイドは相当パワーがあるらしく、

体の何倍もある大きさの瓦礫も

楽々と動かしてみせた。


その辺りの自分の体との感覚のずれを

修正するのには若干時間がかかった。



現場では他に何体も

バイオロイドが働いている。


僕と同じようにやはり遠隔で

動かしているのだろうか。


はじめは全く交流がなかったが、

いつしかバイオロイドを通じて

話をするようになっていった。


バイト同士が段々仲良くなるというのは

こういうものなのだろうか。


バイオロイド越しになら、

意外によく喋ったりする自分に

自分で驚いたりもする。



こうした、

自分は体を動かさない

不思議な肉体労働がしばらく続くと、

僕達はいろいろな仕事を

頼まれるようになっていった。


昼間はナノマテリアルの

偽装ユニットを使うという条件で、

行動範囲も広げてもらう。


最初は簡単な見回りや監視程度だったが、

その内に重要な任務を任されるようになる。


ここ最近、異世界のテロリストや

犯罪者が頻繁に出没していて、物を壊したり、

人を襲ったりしているらしい。


そうした異世界のテロリストや犯罪者が

出没していないか見回りをする仕事だ。



そこでバイオロイドは

一時的に防衛軍に持ち返られて、

再調整される。


その後の能力は動かしている自分でも

びっくりするぐらいだった。


自動車に追いつくような速度で走り、

俊敏に動き、ビルの谷間を跳躍で飛び回る。


普通の人間では体験出来ないようなことを

疑似的にでも体験していることに、

僕は興奮していた。


街中を颯爽と駆け抜ける爽快感。


バイト仲間達と

バイオロイドで街を駆けまわると、

まるで自分がとんでもない能力を

手に入れたような気になってくる。



夜、ビルの屋上で地上を見下ろすのは、

まるでヒーローになったような気分だった。


「自宅警備員だった俺達が、

自宅以外も警備するようになったぜー!」


バイト仲間の一人が興奮して叫んだ。

僕も思わず興奮して叫ぶ。


「これからは自宅外警備団だ!」


こんな風に誰かと一緒に興奮することなんて

今まで一度もなかった。


気分が高揚しているのが自分でもわかる、

生きているような気がする。


-


どこかで自分は他人とは違う。

自分には何かが出来る。

ずっとそう思っていた。


だが、誰からも認められることはなく。

誰からも受け入れられることもなく。

むしろ何も出来ない奴だとみなに笑われた。


そうじゃない。

お前らにはわからないんだ。


この世には自分の居場所はどこにもなく。

いやそうじゃない。


自分が誰も必要としていないのだと思い込む。

相手にされていないんじゃない、

僕が相手にしていないんだ。


しかし今僕は明らかに他人とは違っている、

特別な存在だ。






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