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非人道的地球防衛軍とゾンビ兵  作者: ウロノロムロ
第一次海底王国戦争・前哨戦
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内通者、魚住さん

「ご無沙汰ですねぇ、魚住さん」


「おー、彩ちゃん」


「相変わらず綺麗だねー」


「あれ、今日は一人じゃないの?」


「はじめまして、防衛軍の天野正道です」


天野は手短に挨拶を済ませた。


「すいませんね。

あたしも魚住さんと

二人きりがよかったんだけど、

うちの野暮助がどうしてもって

言うもんだから。」


「そうかい、

まぁ今日は大事な話だから、仕方ないかね」


「じゃぁ彩ちゃんとは今度ゆっくり二人きりでね。」

「なんだったら一緒に温泉旅行でお泊りしちゃう?」


「もうやだぁ、魚住さんたら、面白いんだがら」


魚住さんは、

恰幅のいい、白髪の初老男性で、

どこか垢抜けていない純朴さを残していた。

天野は魚住さんを見て、

田舎の町内会の会長さんを思い出す。


「はじめての兄さんには、

自己紹介しなくてはいけませんな。」


「『海底王国・魚人族』の子孫になります、

魚住です。」


魚住さんは確かに

目と目の間が左右に離れた

ヒラメ顔ではあるが、

それ以外は特に魚人族を連想させるような

容姿ではなかった。


むしろどこからどう見ても

その辺りにいる普通の気のいいおじさんだ。


彩姐さんの雰囲気づくり、

演出が効を奏したのか、

顔を真っ赤にして鼻の下を伸ばしながら

彼女にデレデレしている魚住さん。


彩姐さんとの軽妙な掛け合いで

ひとしきり世間話が繰り広げられた後、

話は本題に入る。



魚住さんは年配の男性らしい

落ち着いた口調で語りはじめる。

まるで世間話の続きでもしているかのように。


「儂らの遠い昔のご先祖様が、

『海底王国』」から、スパイとして

この世界に送られてきましてね。


そのままこっちに住みついて、

もうすでに何百年も何世代も経っているんですが、

儂らは今でも時々故郷に情報を提供しているんですわ。


儂らは潜入して土着民に紛れ込んで生活を送っていた

間者や草の子孫みたいなもんですわ。」


「昔はそういうのも結構多かったみたいでね。


『半漁人』とか『人魚』とか

今でもこの世界に伝説が残ってるじゃないですか。

あれみんな儂らのご先祖様ですわ。


他の異世界人も混じってるのかもしれないですけど、

あまりに昔のことなんでよくはわかりませんがね。」


「こちらの世界に暮らすようになって、

そのうち地元の人間と子供をつくってね。


そういうのが何世代も続いたのが儂らなんですわ。


そうやって代を重ねるごとに

どんどん『魚人族』の血も薄くなってきますからね、

もう何世代前からか、

見た目も全く普通の人間と変わらなくなったんですよ。」


「たまにテレビで、

水泳のオリンピック選手とか見ると、

あ、こいつ『魚人族』の出身だなとか

わかることもありますけどね。」


「今はこうして彩ちゃんみたいな防衛軍の方にもね、

『海底王国』のネタを提供させてもらってるんですよ。」


「仲間を裏切るような真似をして、

一体どんな了見だって思われるかもしれませんがね。」


「遠い昔の儂らのご先祖様は、

大事な使命があって

この世界にスパイに来たんでしょうが。


もうそれから何百年も何世代も経っているわけですし。


儂らもすっかりこの世界に

慣れ親しんで暮らしているわけですから。


今さらこの世界に滅亡されてしまっても、

故郷に帰るわけにもいきませんので、

儂らも正直困ってるんですわ。」


「今さら、この世界を滅ぼすから、

故郷に帰って来いと言われましても」


「もうすっかり

エラ呼吸の仕方も忘れてしまいましたわ」


「まぁ、とっくに

エラなんて無くなってるんですけどね」


「もうやだぁ、魚住さんたら、面白いんだがら」


『しまった!ここは笑うところだったのか』


『異世界住人あるあるネタはよくわからん』


突然起こった笑いに天野はついていけず、

なんとか相手に

不信感を抱かれないようにしようと焦った。


「日系の二世三世の方も

日本人の血は流れていても、

日本で一度も暮らしたことがなくて、

日本のことを良く知らないという方が多いですからね。

同じような感覚なんでしょうかね。」


相手に合わせて

いいことを言った風にしたかったのだが、

今一つすべった気もして天野はさらに焦る。


「そうですね」


「それじゃあ、儂らは魚系日本人ですかね」


「もうやだぁ、魚住さんたら、面白いんだがら」


『しまった!ここも笑うところだったのか』


『完全に親父ギャグじゃねぇか』



「でも『魚人族』が

この世界にやって来た当時は、

見た目も『魚人』のまんまで、

女にもてるはずもありませんから、

人間の村の女さらったり

結構悪さしてたみたいですよ。」


「儂も彩ちゃんさらって悪さしちゃおうかなー」


「もうやだぁ、魚住さんたら、面白いんだがら」


『全然笑うところがわかんないよ』


『頼むからいい加減、

このゆるーいキャバクラみたいな流れ

なんとかしてくれ』








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