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鬼面忍者 ~異世界冒険忍法帳~  作者: リナシ
三、忍術兵器の巻
34/36

三十四段目 千の偽り万の嘘



 フレイス、カルヴァが戦う音が聞こえる中、俺は局長を名乗る敵と相対あいたいしていた。

 壁を蹴り、手裏剣を投げ、天井を走り、刀で切り結び……

 そんなことを繰り返して、一つわかったことがある。


「俺と同じ流派…… しかも、腕前は俺より上、か。」

「いかにも。」


 覆面で顔は見えないが、局長とやらは声や目元の感じから俺より年長だろう。

 その上で、俺と同様に幼少より修行漬けの日々。

 しかし、それならば俺以上に修練に時間をかけているということ。

 さらに、平和な世界に生きていた俺とは違い、実戦経験も豊富だ。


 まいった。俺に修行をつけてきた、俺の親父よりも強いかもしれない。

 今はまだ、かろうじて戦っていられる。

 だが徐々に、しかし確実に押されてきている。このまま戦い続ければ確実に俺が負ける。


「ええ、ままよ……!」


 向こうが刀を振るうタイミングに合わせて分身、左右から挟み込むように同時攻撃を仕掛ける。

 よほどの達人であっても、不意を突いてのこの技はそうそう躱しきれないはずだ。


「知ってるぞ、その技も!!」


 だが、防がれた。

 左側の俺に意識を絞られ、向こうからのカウンター。同時攻撃のタイミングをずらされたため右の俺の攻撃も空振りだ。

 手傷を負ったこともあり集中が乱れ、分身を維持できずに解除。


「隠し技も通用しないってことか……」


 まるで俺の上位互換だ。

 これはいよいよ打つ手なしか? と思いかけた時。


「そんな小手先の技に頼っている程度の奴なら、オレが出るまでもなかったか……」


 そんな、おかしなことを奴は口走った。

 今のセリフは言う必要のないことだ。

 忍者なら、むしろ小手先の技で勝てるものならいくらでも使う。そう教わるものではないのか。

 それに、「オレが出るまでもない」? 相手を侮ることは、忍者が陥りやすい『三病』の一つだ。

 たとえ心に思っても、口に出すのは避けるはず。

 もしかしてこいつは……


「あんたは強いな。俺には勝てそうにない。なら、最期に一つ聞かせてくれないか?

 あんたにとって『忍術』とは何だ?」


 この質問の返答次第で、俺の運命は決まる。はたして……


「決まっている。

 偉大な英雄、山上源蔵が遺した最強の『戦闘術』だ。」


 予想通りの答えが返ってきた。


「……なんだ、降参か。」


 俺が「勝てそうにない」などと言ったから、そう思うのは当然だろう。

 なにしろ俺は、刀を鞘に納めたのだから。

 だが違う。逆転の目を見つけたのだ。


「いいや、前言撤回する。

 あんたが強いってのは俺の勘違いだ。

 あんたごときを倒すには、忍術どころか刀もいらない。」

「なんだと……!?」


 奴は今、覆面の上からでもわかるほど明確に激昂している。

 確実に自分より劣っていると思っている相手に、こうも侮辱されれば当然だろう。

 実際、今「強いのは勘違い」と言ったのは嘘だ。


「あんたは忍者なんかじゃない。あんたが鍛えてきたわざはまがい物だって言ってるんだ。」

「何を言っている?

 あれだけオレに一方的にやられていたのに……!」

「やられたフリだ。もうあんたの忍術は見切ったってことだ。」

「……なんのつもりか知らないが、そうまで言うならやってもらおうじゃないか……!!」


 当然、やられたフリというのも嘘だ。依然としてこいつは俺より強い。

 だが、奴は俺の挑発に乗ってくれたようだ。

 奴は刀を担ぐように構え、左手で印を結んでいる。

 何をしてくるかはわからないが、奴にとっての必殺の戦術を繰り出してくるのは間違いないだろう。


「山上流忍術奥義だ!! こいつで死ね!!!」


 奴は数歩分はある間合いを一瞬で詰め、同時に3人に分身。

 上下左右前後、すべての退路を断つ三次元的な動きで迫り来る。

 高度な剣術と忍者的な体捌き、まさに奥義と呼ぶに相応しい技。

 そんな技を、俺は――


「……は?」


 『変わり身の術』で防ぎ、奴の足元に滑り込んでいた。


「すまん、『あんたを倒すのに忍術はいらない』って言ったのは嘘だ。」


 全身を伸びあがらせるアッパーカット。

 渾身の必殺技を放ったことで隙ができた奴の顎に直撃。脳を揺さぶり、一撃で昏倒させる。


「聞こえてないだろうが…… 俺が今言ったのはほとんど嘘だ。

 本当のことは一つだけ、あんたは忍者じゃない。忍者は奥義なんて使わない。」


 限界ギリギリの無理な動きで変わり身を使ったので、全身が悲鳴を上げている。もし今新手に襲われたら逃げるしかないだろう。

 だがそれでも、俺より確実に強い相手を下し、俺は生きている。


「多分、数百年のうちに忍者の心構えとかがなくなって、戦闘術や隠密としての技術だけが残ったんだろうな。

 だけど忍術の本質は『生存術』だ。嘘でもハッタリでも何でも使って、生き残れば勝ちなんだよ。」



   ●●●



「達蔵、そっちはどうだい?」

「山上様! ご無事でございましょうか?」

「ああ、なんとかな。」


 2人も無事…… いや、ボロボロの大怪我だ。

 だが生きて、勝利した。


「大将がやられたのに、踏み込んできませんね。」

怖気おじけづいてるんだろうさ。実際、勝てると思ったからこの3人だけで襲ってきたんだろうし。」


 2人が引きずってきた敵も、ボロボロだったり完全に気絶していたりだ。


「で、どうするんだい? コイツらをさ。」

王国ヴィラハのこの連中には、二度と俺たちを追ってこないようにしなきゃいけない。」

「それは、そうでございましょうね。」

「だから、こいつらに"忍術兵器"をくれてやる。」

「忍術兵器って…… あれをかい?」


 フレイスが壁の石板を親指で指す。


「目的のものをくれてやるんだ、文句はないだろう。

 とりあえず、暴れないように拘束して、と……」



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