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鬼面忍者 ~異世界冒険忍法帳~  作者: リナシ
三、忍術兵器の巻
30/36

三十段目 誰かがウォッチンユー



 俺たちが森に逃げ込むのと、空が白んでくるのと、馬蹄の音が大きくなり、追手の姿が見えてきたのはほぼ同時だった。


「見たところ、追手は20人程度でございますね。」

「だが、アイツらはおそらく先遣隊さ。

 ワタシたちが城壁の外に出てから、追撃が来るまでの早さからして、多分連中は探索都市ヤエナの外周全体に人を配置していた。

 なら、ヤエナの反対側にいた人員も後から追って来るはず。」

「森の中とは言え、後ろに追手を張り付けたままってわけにもいかない。距離を離すために足止めが要るな。」


 足を止めることなく走り続けながら、慣れた獣道を森の奥へ向かう。

 その時、かすかに異臭がすることに気付いた。

 この森で何度も狩った魔物の臭いだ。


「この臭い……狼人間ウェアウルフか?」

「こんな時に面倒な……!」


 臭いがするということは、そう遠くないということ。ウェアウルフもこちらに気付いているだろう。


「いや、これはむしろ幸運だろう。」

「どういうことでございますか?」


 背から刀を抜き、近づいてくる臭いに対して走りながら構えた。


「ここは俺に任せてくれ。特に、フレイスは手を出さないでくれ。」

「? ああ、わかった。任せるよ。」



   ●●●



 十数分後。

 追手は先ほどまで達蔵たちがいた地点を通過しようとしていた。


「まて! なにか臭わないか?」


 先頭を走る男が異常を訴える。


「確かに……なんだか獣臭いな。」

「見ろよ、ウェアウルフの死骸だ。」


 曲がりなりにも諜報機関の人間。すぐに臭いの元に気付いた。


「随分血まみれになってるな。魔物同士の争いに負けたのか……

 まあいい、奴らに関係ないなら放っておけ!」


 指揮を任されていた男が言い放ち、再びフレイスの一行の追跡に戻ろうとした時――


「「「グルウゥゥゥ……!」」」


「なっ!? ウェアウルフの群だと!?」

「そうか……! この血の臭いを嗅ぎつけて!」


 半ば包囲するように、多数のウェアウルフが集まってきていた。

 ウェアウルフは狼に似た外見通り鼻が良く、手負いの獲物を狙うことも多い。


「クソッ!! ってことはこの死骸も……!」


 よく見れば魔物同士の争いではありえない、鋭利な刃物による傷が全身に刻まれている。

 別の魔物をおびき寄せて、追手の足止めを図る達蔵の罠だったのだ。


「こんな数、相手にしてたら奴らに逃げられちまうぜ!」

「こうなったら、半数を残し、半数が先行して……」

「だが、それじゃあ人数が少なすぎる! 連中を完全に見失ったら、すべてオシャカだ!」


 じりじりとウェアウルフの群が包囲網を縮める中、襲撃者たちに焦りがつのる。

 ――そのウェアウルフの群が、極太の光にのみこまれて消滅するまでは。


「奴らの罠か。姑息なマネを仕掛けてくるな。」


 光を放ったのは、フードをかぶり杖を手に持つ、典型的な魔導士だった。


「副長! 追いついていたんですね!」

「ってことは、局長は……!」

「ああ。私より先行してる。もうすぐ追いつく頃合いだ。」



   ●●●



「……一人だけ、追ってきてる奴がいるな。」


 ウェアウルフの死骸である程度の足止めはできたようだが、まだ単独で追跡を続けている奴がいる。

 俺たちは追手があくまで複数人のチーム単位で行動していると思っていたので、これは予想外だった。


「まさかただのバカってこともないだろうさ。

 おそらく、一人でもワタシたちを追跡できる自信があるようなヤツ……」


 目的地までは、まだかなりの距離がある。

 こんな時は――


「作戦その1だ。カルヴァ、頼む!」

「承知いたしました!」


 足止めだけを目的とするならカルヴァの影縫いは最適だ。自分の影にまで注意を払って動き回れる奴はまずいない。

 ウィルフリドと戦った時同様、手裏剣をばらまいて罠として、影が手裏剣にかかれば即、影縫いを発動させるようにした。

 だが、手裏剣をばらまいた地点を敵が通過しても何も起きない。


「駄目でございますね。影が手裏剣に触れないよう、回避されたようでございます。」

「影縫いを警戒してる……ってことは、こっちの手の内はバレてるってことか。」


 流石は諜報機関。そう簡単にはいかないらしい。


「なら、作戦その2。こっちから打って出る!」


 今なら相手は一人だ。3対1で瞬殺し、後続が来る前に姿をくらませる。


「反転し、こちらから攻撃を仕掛けるぞ!」

「ああ、わかった!」


 足を止め、一定の距離を保ってきた追手に対して逆にこちらから距離を詰める。

 だが、こちらが距離を詰めた分、向こうも同じ距離を同じ速度で下がっていく。

 俺が木を足場に三次元的に動いても、フレイスが火炎視線レーザービームを撃っても動じず、一定の距離をキープしている。


「こいつ……時間稼ぎに徹するつもりか!」

「まずいよ、達蔵! このままじゃ後続のヤツらに追い付かれる!」


 忍者おれの足でも距離を詰められないとは……

 悔しいが、追手は相当な実力を持つ――おそらくは、忍者。


「やむを得ない、作戦その3だ!」

「その3は何をするのでございますか?」

「せめて後続の連中だけでも追いつかれないように、このまま逃げ続ける!」

「それじゃ、あの追手(アイツ)はどうするんだい?」

「……短時間で片付ける手立てがない以上、連れていくしかない。」


 屈辱だ。この忍者おれがついていながら、それもホームで追手を振りきれないなんて。


「すまない、フレイス、カルヴァ。計画通りってわけにはいかなさそうだ……」


 鬼面の下で、顔がゆがむのを自覚した。



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