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アルカディアンズ 〜とある世界の転移戦記譚〜  作者: タピオカパン
混乱の始まり
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赤い国


異世界に転移した中国のとある大都市


一台の車が市内を走っていた。

車の後部座席には位の高そうな制服軍人が座っていて、車のサイドガラスから市街の様子を眺めいていた。


市街には中華人民解放軍陸軍部隊が展開していて物々しい雰囲気だった。

歩兵部隊が各所を検問していたり行進していたし、88式戦車や各種様々な59式戦車、96式戦車などの機甲戦力も路上に停車していろんな方向に主砲を向けていた。


一方で街角の一部の商店や路駐車両が黒焦げになっていたり、道路にはいろんな破片が散乱していた。

中国も他の国々同様に暴動があったようだ。

だがその性質は大きく異なっていた。

中国共産党政府や人民解放軍に対する全土での大規模な反乱運動があったのだ。


車内の少し位の低そうな別の士官が町の外を眺める上官に声をかける。


「大校(准将)、何か変わった様子でもありましたか?」


「いや、何でもない。陸軍は仕事を淡々とこなしているなと感心しているんだ」


「...、ですがおかげで我が海軍は肩身が狭くなってしまって大変です。異世界転移の混乱と人民の大反乱も合わせて困ったものですよ」


「そんなに不満だったか?」


「当たり前です。国家主席がこの世界に転移せず、混乱してしまった党指導部は権威に傷がついてしまった上、人民は人民でいくら経済不安や世界大戦の混乱に不満を抱えてるからといって党に反乱するなどという愚行に走ってあの様です。そのせいで陸軍軍閥筆頭の()将軍による党中央軍事委員会の私物化を許してしまった。前国家主席の政敵だった反動から野心丸出しにして、大混乱鎮圧の功績と陸軍を掌握している現状を最大限利用して幅を利かせています。たまったものではありませんよ」


「そうくさるな。国内は再び安定してきているし、いずれは党指導部も持ち直すかもしれん。今は将軍が引き継いで掲げる対欧米軍事戦略に注力するだけだ」


「...大校はずいぶんと将軍の横暴にも寛容なのですね」


「ああ、力こそが正義だからな」


「力?」


中国人民解放軍海軍大校のこの将校は先ほどから外を見ていたが、それと同時に彼自身が幼かった昔の経験を思い返いしている様子だった。

それはかつて天安門と呼ばれた広場で繰り広げられた凄惨な光景だった。

79式戦車や63式装甲兵員輸送車を有する鎮圧部隊が迫ってくる様子を今の情景と重ね合わせるように見ていた。

彼がその情景どのように捉えていたかは定かではない。


「そうだ、権力でも軍事力でも同じことだ。力を持つ者こそが全てを統べる資格があるのだ。3000年の中華民族の歴史は力を持つ者、皇帝がそれを体現してきた。そして真に力ある皇帝の下で民族は大いなる繁栄と発展を遂げてきた。それは国家主席でも同様だ。ならば将軍が真に力を持つ者か、まずは付き合ってやってそれを見定めてもいいと私は考えている。将軍が勢いに乗って党中央委員会を牛耳るって国家主席にとって代わるというあれば、それはそれで構わん」


「...合理的と言えばいいのかどうなのか。これが盗聴されていたらどうするおつもりですか?」


「おそらくはされてないだろう。それにここにいるのはお前だけだしな」


「まったく、あなたという人は。これで空母打撃群司令官、武大校だというのだからだというのだから、こちらの方も困りものですな」


「まったくだ」


車は海軍基地に着くとゲートを通って桟橋の方へと向かった。

そこには055型ミサイル駆逐艦や052型系ミサイル駆逐艦、054型フリゲート、053型系フリゲートなどの水上戦闘艦艇の他、各種艦艇、004型航空母艦と呼ばれる超大型原子力空母の姿もあった。

それら停泊中の艦艇群や海軍施設の要員は出港準備のためか準備作業に追われている様子だった。


大校達が空母に乗り込み艦橋に上るとすかさず報告が入った。


「司令、米軍が報告されていた例の勢力とは別の航空艦隊を保有する勢力と戦闘状態に入ったと報告が入りました」


「ほう、奴らも積極的だな。なら後れを取るわけにはいかんな。であればまずは日本無力化を成功させなければな」


大校はそう言って艦橋から海の向こうを眺めた。



中国軍の研究施設


「ようこそお越しくださいました。李将軍」


「なに、面白そうだから異世界の生き物を見に来ただけだ。...ほう、あれが亜人という奴か」


「はい」


李将軍と彼を取り囲む軍人たちは研究員に話しかけていた。

その隣の隔離された部屋に獣耳の亜人が閉じ込められている。


「言葉は話せるのか?」


「そのようです。独自の言語を持っており、他の言語を習得する能力も持っています。知能は確認に時間がかかりますがおそらくはヒトと同程度有しているのではないでしょうか」


「なるほど。何か利用価値はありそうか?」


「そうですね。走るのが速い物や耳がいいといった特徴はある物もいるのでヒトではできないようなことができたりするでしょう。まあ、何かしらには応用できるのではないでしょか」


「そうか。遠征軍による大陸の占領はほぼ無抵抗で進んでいる。実験体はいくらでも手に入る、自由に使って構わんぞ」


「承知しました。それと異世界には通常のヒトと思われる種族もいます。我々との違いもあるのか気になりますのでそちらも検体として拘束をお願いしたい」


「いいぞ、手配しよう。それと例の物を見たい」


「わかりました。こちらです」


一同は歩き出して別の施設へと向かう。

施設に入り、先ほどよりも先進的な隔離部屋の前に一同が集まる。

そこには少し変わったヒトのような少女が立っていた。

見た目は水色の髪に赤紫の瞳としたヒトの少女だが、地球人ではまずそんな容姿はあり得なかった。

少女は他の人が見たら感情を読み取れずに違和感を感じるほどの無表情で現れた軍人たちを見た。


「アレか?」


「はい」


「ただの髪を染めた小娘にしか見えんが」


「ですが驚きの連続です。なんせ発見したのは地中からですので」


「地中だと?」


「はい。正確には地下に埋まっている未知の組織でできた生体プラントのような構造体です。おそらく一種の人工子宮のようなものでしょう。あの検体はそこから発掘し、蘇生したものです」


「何とも想像しがたいが、亜人は地面から生える奴もいるということか」


「いえ、これほど特異な生態を持っているのは流石にアレだけのようです。他は動物と変わらない繁殖方法です。アレが特別なだけかと」


「他にわかっていることは?これだけのために私に声を掛けたわけではないよな?」


「はい。先ほども申しましたように驚きの連続です。蘇生後の態度は極めて従順であり、まるで人形のようです。指示すれば指示した通りの行動をとります。知能も極めて高くわずか1か月で初等教育を修了しまったのです」


「ではあの小娘は中国語が話せるのか?」


「もちろんです」


研究員が近くの機材のボタンを押してマイクをオンにした。


「001番、現在の履修状況を報告しろ」


「はい。001番は初等教育を履修完了しました。001番は現在、中等教育の履修を続行中です。履修達成率は8%です」


001番と名乗る少女は恐ろしく機械的で簡潔な報告を行った。

そして始終無表情だった。


「驚いたな。つまり、お前たちはこれを兵隊にできると言いたいのだな」


「その通りです。近いうちに軍事訓練を施すことを計画中です。しかも発掘されたのはあの検体だけではありません。多数発見されているのです。これは一種の生物兵器として利用できるのではないでしょうか」


「確かに」


「しかも驚きは他にもあります。この生物は同種であれば他の個体と声もしぐさも使わずに意思疎通が可能なのです」


「...て、テレパシーということか?」


「はい。これが電磁波によるものなのか、あるいは別の何かで媒介しているかは確認中です。発見は以上ですが、すぐにでも他の発見を報告できると思います」


「素晴らしい。奴らが一体何なのかは正直、私にはどうでもいい。だがロボット兵のように扱えるのならぜひ実用化しろ。予算は確保する」


「ありがとうございます」


研究者は軍人に連れられその場を離れた。


「これなら報告が入っている科学的遺物とやらも期待が持てそうだ。欧米とやり合うならこれくらいなくてはな。西沿岸の地球諸国の攻略計画には使えんだろうが、いずれ大規模な戦線を抱えた時には使えだろう。米軍が開発していた軍事戦略AIの国産プログラムも完成して良好に機能している。組み合わせれば我が軍の更なる躍進に繋げられるな」


将軍はそう言って軍人たちを連れて施設を後にした。

その後ろ姿をガラス越しに被検体の少女はじっと無表情で見つめた。


彼らの正体とこの少女のその後の軌跡を予想できる者はこの時点で誰もいない。


流れ自体は数年前からプロットにあるやつ

天辺に誰を据えるかは決めてなかったので将軍は思い付き

次は空中艦隊の国の方

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