異世界軍同士の接触2
「地球という世界から転移してきた、ということですか?」
「どうやらその様です。話を聞く限り、そちらのお国も違う世界からここへ転移してきたということはこちらと事情は全く同じということになりますね」
マルティス艦長は手を顎に当てて考えこんでしまう。
―全くの別世界から一同に転移させられた?ではこの世界に存在する国や土地もすべて同様に?いや、土地に関しては違うかもしれない。私たちの異世界とは明らかに異なっている。けど、それよりも他の世界のものがこの世界に転移させられたのはなぜ?誰が、何のために?
彼女はこの世界に連れてこられた理由を考えるがすぐにやめてしまった。
その情報を自分も今回接触した相手も持ち合わせていないことを思い出したからだった。
「どうかしましたか?」
「いえ、状況がだんだん見えてきたので頭の中で整理をしていました。では次のお話に移ろうかなと思います」
「伺いましょう」
その後、マルティス艦長は艦隊司令官から預かっている司令通りの情報交換を行い、今後のアメリカ・ドゥーロス間の連絡確保で合意した。
「貴国との今後のやり取りは外交官を通して行われることになるでしょう。良い関係を築けることを願っています」
「こちらこそ。我々としては不思議な力で船を空に浮かばせる貴国とは仲良くありたいと我が国の政府は考えているでしょう」
「不思議な力、ですか...」
―彼らはシテナロン機関を知らないということか。ということは機械動力だけですべてを実現させているということ?確かにここまでに見てきたものは私たちの世界よりずっと高度なものばかりだった。敵に回すと厄介かもしれないわね。...待って、だとしたら...。
マルティス艦長は地球文明について考察する中である可能性に行当ってしまった。
―彼らを使えば、もしかしたら聖域へアクセスできるかもしれない。これは大きいわ。
マルティス艦長はこれから起ころうとしている争いの根源を考え当ててしまうのだった。
こうしてアメリカ合衆国にとって初めての異邦との接触はあわやの事態を免れ穏やかに幕を閉じる。
しかし、これはドゥーロスをはじめとするグランドリア世界と地球国家を巻き込む争いの幕開けでもあった。
駆逐艦アルガウォン
二日後、マルティネス艦長は母艦に戻り帰国の途に就くことになった。
アメリカの地に足を踏み入れてから既に1週間以上が経過していた。
ドゥーロス軍の空中駆逐艦アルガウォンを取り囲む米軍部隊に数台のハンヴィーが合流する。
ハンヴィーから複数人が降車し、その中にマルティス艦長の姿があった。
マルティス艦長は兵士たちに連れられて母艦へと向かうが途中で足を止めた。
米軍兵士の中に艦長が初めて見た、印象に残っていたアメリカ人がいたからだ。
アレン・ベイカー中尉だった。
アレンはすぐに自分が見られていることにギクッとする。
俺、何かやらかしたか?と内心焦りまくったが少し頬を引きつらせつつも平静を装う。
未知の言語で話しかけてきそうな女性軍人にアレンは起立したままじっとしてしまう。
マルティス艦長はアレンをしばらく見た後ほんの少し表情を柔らかくさせその場を後にし、船梯子を上っていった。
アレンは冷や汗を掻きながら彼女が通りすがった後、後姿が見えなくなるまで横目で見届けた。
しばらくすると空中に浮いていた軍艦は繋留装置を解除して浮上を始めた。
その様子はまさにSFそのもので、軍艦の後ろをUH-60ブラックホークが付いてゆき地平線に小さくそびえる山地に消えていった。
これからは1000文字でも掲載しようかと思います。
すいません。