アメリカと空中艦隊2
<アメリカ海軍 航空隊>
「こちらドック2-1、山地上空を通過中」
F/A-18Eの編隊が山間上空を抜けて一同、海を目指して飛行を続けていた。
<ドゥーロス軍空中艦隊>
「...ということだ、エルネスタ・マルティス艦長。貴官の任務は連中の懐に飛び込んで外交に徹することだ。貴官は貴族の中でも相応の教育と社交経験がある。交渉術はある程度持ち合わせているだろうというのが我々の認識だが、それに間違いはないかね?」
「...」
女性士官が艦隊旗艦の艦橋で司令官と話し合っていた。
「問題ないかね?」
「...問題ありません」
「では貴官を使者に任命する。対応は指示通りで頼むよ。以上だ」
「了解しました。マルティス家の名にかけて務めを果たしてみせます」
「うむ、期待している」
女性士官が艦橋を後にする。
「よろしいのですか?」
「よろしいも何も2等艦の士官で使えそうでなおかつ足切りしても特段問題にはならんのが彼女だけだから任命したまでだ。なら君が行くかね?」
「いえ、それは...」
「なら話はここまでだ」
「了解」
<駆逐艦アルガウォン>
艦長の女性士官が駆逐艦に戻ってきた。
「艦長」
「うん」
「これより本艦は特務艦として前方距離50にあるあの陸地へと進む。我々の任務はあの未知の国と接触しできる限りの情報を持ち帰り、関係を持つことだ。ここから先はいかなる切迫場合であっても私の許可なしに火器の使用は認めない。では行動を開始する。速力を30まで落とせ!」
「了解」
空中駆逐艦のクルーたちが所定の位置について操艦する。
一方、艦隊は変針を開始し陸地から距離を取るように徐行を開始した。
駆逐艦は艦隊から離れゆっくりと陸地へと進んでいく。
<アメリカ海軍 航空隊>
「海岸まで20マイル」
「レーダーコンタクト、目標を捕捉した。これより攻撃を開始する」
「こちら管制、了解した」
<アメリカ北方軍暫定司令部>
「大統領、攻撃隊が位置に着きました」
「攻撃の許可を出す。それと目標はまだこっちに向かってきているのかね?」
「確認中で、...今報告が入りました。目標が二手に分かれたのを確認」
「それはどういうことだ?」
「確認させます」
「報告します。一隻が空中艦隊を離脱しこちらへ向かっており、他の艦隊は転進し接近を止めました」
「接近を継続中の艦艇は小型艦で速力も半分以下に落として航行中とのことです」
「...将軍、向こうの意図がわかるかね?」
「詳しくは何とも。ですがこれは使者を送った。そう考えると辻褄が合いのではないかと...」
将軍はその場にいる他の将校と顔を合わせるがそれ以外考えずらいといった雰囲気を出す。
そこでオペレーターが割って発言する。
「攻撃隊が目標を射程に捉えました。攻撃を開始します」
<アメリカ海軍 航空隊>
F/A-18Eのパイロットがコンソール右側のディスプレイに映る緑の空中軍艦に照準を合わせていた。
「ターゲットロック」
その報告を聞いた指揮官が大統領に聞く。
「大統領」
「わかっている、攻撃をやめさせろ」
「攻撃中止」
「攻撃中止」
<駆逐艦アルガウォン>
アメリカ海軍の戦闘攻撃機の編隊が駆逐艦の上方を高速で飛び去っていく
「十数機が本艦の上方を高速で通過します」
「艦長、まさか」
「ええ、本気で攻撃するつもりだったんでしょうね。けど向こうはそれを止めた。いい出だしじゃない」
「だといいんですが」
駆逐艦は速力を維持したまま直進を続けアメリカの上空に達した。
地上に近代的な町やきちんと整備された田園が広がっているの目にした乗員たちはここ近代的な国家あることを認識した。
「私たちの国と大して違いを感じないわね」
「ですが相手が人間かどうかという疑念がぬぐえません。おぞましい怪物かもしれませんよ」
「それも直にわかるわ」
「艦長、左舷前方から何かが接近してきます!」
それはアメリカ陸軍のUH-60 ブラックホーク汎用ヘリだった。
ブラックホークの編隊は駆逐艦を囲むと進路の変更を強要してきた。
「艦長!」
「相手の意図に従うのよ。変針」
「取り舵」
駆逐艦は誘導に従ってさらに内陸へと進みアメリカ軍が強制着陸させたいポイントへと向かう。
やがてアメリカ軍の基地が見えてきた。
アメリカ軍の駐屯地は陸上自衛隊と違い、非常に大規模でまるで一つの都市のようでもある。
基地内になる駐車場にはカバーをかけられたM1エイブラムス戦車やLAV-25歩兵戦闘車などが多数駐車されていた。
ちなみに巨大な駐車場は十か所あり軍用車は1000両ありそうだった。
なおこの時、およそ50両の戦車は空中艦対応のため基地を出て着陸ポイントに集結していた。
その基地に隣接する射撃場と思われる空き地まで来ると誘導していたブラックホークが駆逐艦をそこへ着陸させようとする。
駆逐艦は上空で停止すると錨のようなものを地面に勢いよく落下させ地面に突き刺させた。
そして徐々に高度を落としていき最終的に艦底は地面に着地した。
もちろん着地地点は機甲部隊に完全包囲されていた。
艦橋では艦長がアメリカ軍の装甲部隊を双眼鏡で見やる。
「見たことないタイプの兵器ね。車に大砲か、自走砲の一種ね」
相手の戦力を見極めた後、相手がどんな生物かを確認する。
「なんだ、私たちと何ら変わらない人間じゃない。心配して損しちゃった」
マルティス艦長は双眼鏡越しにM16小銃を抱えたアメリカ軍兵士を見る。
その兵士は眠たいのかしきりにあくびをしてこちらを見ていたがすぐに仲間と無駄口をたたく。
「ずいぶんやる気のない兵士だわ」
艦長が見ていた兵士はアレン・ベイカー海兵隊中尉だった。
包囲していたのはアメリカ海兵隊である。
「艦長、準備が整いました」
「今行く」
艦長が駆逐艦に搭載された船梯子の前に来るとゆっくりとその梯子を下りて下船する。
前方には防護服を着たアメリカ軍兵士が小銃を構えて待ち構えていた。
そして艦長は地面に着地すると真剣な面持ちで歩き始めた。
はい、退屈な話です。
潜水艦同士の魚雷戦とか中距離空対空ミサイルの撃ち合いとかパーッとしたのか期待ですが順序ががが。