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アルカディアンズ 〜とある世界の転移戦記譚〜  作者: タピオカパン
混乱の始まり
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別の世界の事情2


ソニアは店に入った。

店内はかなり薄暗く誰もいないように見える。

ソニアは店内をキョロキョロ見渡した。


壁や棚にはいろんな雑貨が置いてあって値札もついていたりし、一応商店であることはわかる。

だが商店というには裏路地の奥深くなうえに店内は薄暗すぎた。

本当に商売しているのかも怪しい。

もしかしたらこれは偽装で裏でよくない事ことをしてそうにすら感じてしまう。


だがここで別の棚に商品とは違うものが飾られているのに気付いた。

それは絵画とよくわからない骨董品、本だった。


「いらっしゃい」


暗い部屋の奥から声がすると足音が聞こえ、声の主がソニアの前にゆらっと現れた。

声の主は若い女性で和らい表情をしていた。


「へー、お嬢ちゃんがお客とは珍しいね。この店は初めて?」


ソニアは年が離れてなさそうなのにいきなり年下扱いされたことに少しだけ戸惑うが何事もなく返事する。


「ええ、こんなところにこんなお店があったなんて気づかなかったわ」


「そうね、ここにくるお客なんてこの辺の物好きな常連さんだけだもの。それだけに新しいお客さんは大歓迎よ。大した雑貨はないけどお探しの品はあるかしら?」


そこでソニアはバックから例の本を出して店主の女性に見せた。


「実はこの本の執筆者についてお聞きしに来たんですけど、お時間を頂いてもよろしいですか?」


「本?」


店主の女性は差し出された本を手に取る。

ソニアは暗かったことと服装のせいで店主の左腕がないことにこの時気づいた。


ソニアの目線が自分の左腕にあることに気づいた店主は答えた。


「ダメかしら?」


「いえいえ、そんなことは!」


「あら、そうかしら。ふふ」


ソニアは店主の言葉に慌てて返したがむしろ店主はソニアを揶揄うつもりだったのかクスっとする。

ソニアは少し気疲れしたようにほんのちょっとため息を漏らした。


「ごめんなさいね。ついつい遊びたくなる性分なの」


女性は本を受け取るとそばにあったロッキングチェアに腰かけて本のページをめくり始める。

ソニアは売り物じゃなかったんだと心の中でつぶやく。


「んー、考古学とケイホーンについての考察文献ね。心当たりが無いわけじゃないけど、どうしてこんなものを?」


「実は考古学について勉強してまして先日その本を手に入れたんです。そしたらこの本には興味深いことがたくさん書いてあって驚きました。なんで今まで誰もこれを話題にしたことが無いのか不思議なくらいなんです」


この本は謎に満ちたケイホーンと先史文明についての調査の過程と結果が書かれていた。


「この本の執筆者であるアディス・バーレムは考古学者であると同時に冒険家でケイホーン制覇を目指していたみたいなんです。彼はケイホーンの中心に近づくにつれて古代の遺跡が多く残存していることを書き記載しています。本の終りのほうでは中心部登頂についても書き記しています。なんでも彼はケイホーンの中心部で巨大な塔のようなものを見たと。その塔の周りには先史文明の都の廃墟が今も横たわっていてケイホーンと先史文明の関係が強く示唆していると、そう書いてありました」


ソニアが話す様子を店主は柔らかい表情で見ていた。


「しかしその本は肝心のケイホーン中心部についての記述が大変少なくてまるでそこで調査を止めてしまっているような感じなんです。それでアディス・バーレムという方について色々聞きまわってこちらを伺ったんです」


「なるほど。お嬢ちゃんはそれでここに来たのね」


店主の女性はいかにもなるほどと言いたげな表情をした後、ロッキングチェアに座ったまま棚に置かれた白黒写真の写真立てを見た。

そこには店主の女性と老人の二人が映っていた。


「アディスは私の祖父よ。一昨年に既に他界したの。実はここも祖父から受け継いお店でこの棚は祖父の遺品を飾ってある棚で冒険中に採取したものやそれに関連した絵画よ」


それはソニアが商品ではないと思った骨董品の棚だった。


「それはお気の毒に...」


「まあね。でも本人はそれなりにいい人生だって言ってたしいうほど悲しい話でもないよ。ただ...」


店主の女性は少し間を開けて本を見た後続ける。


「ただ、この本の続きをやり残したって言っていた。...そうだ、良かったらあなたがこの本の続きを引き継いでくれないかしら?」


「え?わ、私が?」


「そう、あなた自身この本の続きを探求しているんでしょ?だからここへ来たんじゃない」


「それは、そうだけど...」


「もし引き継いでくれたら祖父の遺品を自由にしていいわよ。この棚以外にも研究資料がまだたくさん残っているの。きっとあなたの役に立つわ。実は私もそっち方面の端くれだから何か手伝えることがあれば協力は惜しまないんだから!」


店主の女性は満面の笑みだった。


「...」


ソニアは考え込む。

しばらくして返事する。


「わかりましたお引き受けします」


「ありがとう。祖父は限りなく天国行きだっただろうけどこれで化けて出る可能性は万に一つもなくなったわね。ふふふ」


「はぁ、...」


ソニアは店主の女性のテンションやノリに付いていけずにいた。


「そういえば共同著者のサロモン・ナールという方に心当たりはありませんか?」


「サロモン・ナール...」


店主の女性が口に手を当て考え込む。


「ごめんなさい。聞き覚えはありそうなんだ、いまいちピンとこないんだわ」


「そうですか」


ソニアは仕方ないとばかりに切り替えた。


「たぶん資料を整理したらわかるかも。そうね、今日のところは帰ってもらって後日また来てちょうだい。それまでに資料はまとめておくから」


「わかりました」


「あー、あと良かったらこれ買っていったら?お店に来たんだから買い物くらいしていかなきゃ」


「え?」


「私の見立てじゃ、あなた結構お財布が暖かいと見えるわ。なーに、大した値段はつけてないから。この首飾り、いいお守りになるわ、きっと。間違いないわ」


「...はい」


ソニアは仕方なくその首飾りの代金を渡した。


「あ、それと言い忘れてたけど私の名前はミーシャ、よろしくね」


「私はソニアです。こちらこそよろしくお願いします」


ソニアはそう言って店を出た。

それを見届けた店主のミーシャはまたロッキングチェアに座りなおして目を瞑り、何か思い返した様子だがここで笑い出した。


「ふふふ、あははは!」


「サロモン・ナール、か。我ながらそんな阿保みたいな名前付けたのすっかり忘れてたわ。これから面白くなってきそうよ。ねえ、アディス。あなたと私のやり残したこと引き継いでくれるって、あの子」


ミーシャが棚にあった本を手に取り、ページをめくる。

そこにはソニアが持っていた本に描かれた塔とソニアに売った首飾りの本体が載っていた。


ミーシャはそれを見ながらロッキングチェアをゆらゆら前後させ続けた。

次回はアメリカ?かも

ミーシャとかいう思い付きキャラですが、このキャラそっくりの立ち位置のキャラがもう一人います。

あれです。

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