別の世界の事情
ドゥーロス王国 王都の王宮
国王及び宰相と思われる二人が広間で会話をしていた。
「アルフェリアに差し向けた艦隊は迎撃を受け敗走したようです、国王陛下」
「うむ。やはり付け入る隙は無しか」
「さようのようです」
「となるとアプロス、ディマルグも同様であろう。ここはやはり外征で新天地を確保する以外に活路はないか」
「ですが調査の結果、我が国の国土はアルフェリアとディマルグに挟まれ大陸と大陸を結ぶ地峡の形でこの世界に転移したようなのです」
「では我が国に逃げ場はないというのか?」
「少なくとも陸伝いでとはいかないようです」
「...なら海の向こうはどうなのだ?無論、そちらの調査も行ったのだろう?」
「それについてなのですが、...大変申し上げにくいのですが、この世界の海は大変広く今のところ対岸を発見できておりませぬ」
「なんだと?では八方塞がりというのか?」
「....」
「何ということだ...。世界が滅亡の淵にある中でこの世界に転移させられたのは神の思し召しではと思ったが。だが問題は全く解決していないとは、何たる皮肉かのう」
「ですがまだやりようはありましょうぞ。今後の方針案を至急検討いたしますのでお気を落とさずに」
「うむ。期待しておるぞ」
「はっ」
そう言うと宰相は広間から退室した。
残された国王は視線をがたがた揺れる窓に移した。
外の天候は思わしくなかった。
天候なら数日で回復するのが当たり前のことではあるが、この悪天候はその常識から逸脱しまるで止む様子はなかった。
王宮の居住区の一角
王宮の一角にある部屋では若い女性が本を読んでいた。
本は彼らの世界の歴史書、考古学的な文献で女性は本を読み続ける。
まるで自分たちの歴史を振り返っているようだった。
その間、窓はずっとガタガタ音を立てていた。
彼らのもとの世界・グランドリアにはいくつものケイホーンという嵐が有史以前から乱立して拡大を続けてきていた。
伝承では古の時代の高度な古代文明が何らかの目的で作ったものらしい。
自分たちが使っている動力機関もこの時代に作られた遺物を参考にして利用していた。
だが大断絶と呼ばれる大きな災いで文明は崩壊しほとんど記録が残らない暗黒時代が訪れ現代にいたっているのでケイホーンが何の目的で作られたのかはわかっていなかった。
女性はさらに文献を読み進めるとある絵にたどり着いた。
その絵には塔のような建築物が描かれていた。
この文献において何かしら重要なものらしく女性はそれをとにかく注視し続けた後に本の裏の製本に関する記述に目を通した。
「著者はアディス・バーレムと...サロモン・ナール?愚か者の賢者とはふざけた名前ね」
そして本を閉じた女性は机にあったベルを手に持ち鳴らした。
すると部屋のドアが開けて執事と思われる年配の男性が入ってきた。
「お呼びですか?ソニア様」
「爺や、お願い事があるんだけどいいかしら?」
「...また外へお出かけになられるのですか?」
「もちろんよ」
「...止めても無駄なのでしょうな」
「ええ、その通りよ」
女性は困った様子の執事に笑顔で返した。
「わりました、王女殿下。いつまで引き留めておけばよろしいのですか?」
「そうね、明日の朝には戻るわ。好きよ、爺や」
「はー...」
そう言うとソニアは手慣れた様子で支度を始め、執事の手引きで部屋を後にした。
王都は常に雨風が吹いていたが路上では人々が商売を何事もないかのように商売を続けていた。
王女であるソニアは臣民に紛れながら町の中を歩くが人々の様子を見て複雑な様子だった。
―市場に出回る物資がまた少なくなっている。一昨年から国土がケイホーンに大きく侵食されるようになって食料が乏しくなっている。そんなところに異世界転移の天変地異が起きたら無理もない。でも...。
ソニアは空を見た。
空に立ち込める薄暗い雲が雨風を容赦なく吹かし続けていた。
―今や全土の大部分がこの状態、次の年は不作なんてレベルでは済まされない。タイムリミットは刻々と迫っている。父上も宰相たちも新天地の模索に躍起になっているけど...。
ソニアはとても狭い裏路地に入る。
ここでは先ほどの雨風が嘘のように止むが雨水がぽたぽた落ちてくる。
だがとても暗く壁や地面の輪郭が多少見える程度の明るさしかなかった。
そんな路地を進んでいくと目当ての建物をソニアは見つ、ドアを開ける。
―私は私で別の道を歩ませてもらうわ。
ソニアは建物の中へ入っていった。
最近の流れが試行錯誤過ぎる...。
もうキャラクターたちの動き次第でいくらでも話変わりそう。
流れが変になったらまた大規模改稿したいと思います。
すいません。