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アルカディアンズ 〜とある世界の転移戦記譚〜  作者: タピオカパン
混乱の始まり
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この世界で

航空自衛隊の防空指令所


「現場で判断しろだって?なんてことだ...。シビリアンコントロールを知らないのかあの大臣は」


防空指揮所の司令官は語気を強めて文句をたれる。


「どうされますか?」


副官は指揮官に実際どうするのか聞くが指揮官は呆れたように返答する。


「そんなもん、決まってる。座視するしかない」


「お気持ちはわかりますがさすがに何かしらの行動をとったほうが...」


「君だって領空侵犯の対応規定はわかるだろ?権限に関する条文規定がないんだ、どう対応するかは政府以外に決定権がない。なら現状は威嚇さえご法度だ」


「事後承認はどうですか?」


「だれが責任を取るんだ、俺は嫌だぞ。スクランブル機に攻撃を誘発させて正当防衛を引き出すなんて無責任な行為だってやらせないからな」


「どうやら選択肢はなさそうですね」


「今まで交戦規定をろくに設けてこなかった付けが回ってるんだ、仕方ないさ。とにかく雑な説明で構わない、攻撃の指示を取り付けるんだ。無線に出ないなら連絡機を回して直接聞きに行かせよう」


「了解」


「同時に情報を彼らとも共有しよう。運が良ければ、向こうで迅速に攻撃命令が下りるかもしれない」


こうしてしばらくの間日本と思われる島の上空は無防備となると思われたが、それとは別の組織がこれに対処した。



とある空を飛ぶ2機のF-15C戦闘機


とある戦闘機のコックピット内では日本に侵入してきた飛行生物をヘッドアップディスプレイに捉えて狙いを定めていた。


「ガンズ!」


パイロットが操縦桿のボタンをを押すと機関砲が撃ちだされ目標の飛行生物は羽ばたくのやめて落下していった。

それを高速で戦闘機が追い抜いていく。


撃墜したのは在日米空軍のF-15Cだった。


既にアメリカ軍側はこれらのモンスターの存在と脅威度を確認し把握していたこと、日本の軍当局の機能不全を顧慮し、作戦行動に移っていた。

日本の政府関係に事前通告したが反応が鈍いのは織り込み済みだった。


もちろんアメリカ側も日本同様に大混乱なのは共通していたが、こと軍事関係に関しては非常時における指揮系統と権限統制がしっかりしており、明確な交戦規定と高い情報収集能力によって迅速に事態に対応することを可能としていた。

根本から実践経験の積み重ねが違うのだ。



とある園田


モンスター遭遇のさらに二日後、有持の部隊は県道と思われる道にたたずんでいた。

有持は双眼鏡で周りの林や空に例のモンスターがいないかくまなく監視する。

何もいなさそうなので双眼鏡を下ろし自部隊をチラ見する。


先日の件以降は質問攻めばかりで疲労したうえ、今度は陸上自衛隊の各部隊あげての夜警である。

疲れてあまり考える気がしてこない。

そのせいかモンスター対策で持ち出され、地面に置かれている62式MGが目に入るとイラっとしてしまった。


いわゆる”失敗作”の部類に入る兵器で俗称で、言うこと聞かん銃、ベストオブバカ銃、62式単発機関銃、無いほうがマシンガンと揶揄されている。

とにかく動作不良の過大な銃火器で昨日の試射だけですでに何回もジャムっていた。

無理な装薬システムと過度な軽量化を目指した銃身の肉厚削減、それに輪をかけた品質不足の不良品偽装納入などいくつもの問題が積み重なっていたのが原因だ。


正直こんなのよこされるくらいなら要らんという話だ。

なのでさらに部隊の脇に駐車していた73式小型トラックに目をやる。

こっちは固定銃架にM2ブローニング重機関銃が据え付けられていて大火力を提供してくれる代物だ。

いざとなればこっちが頼りだ。


そんな時だった。

有持は突然声をかけられる。


「質問いいかしら?」


「え?」


有持が振り向くとそこには一眼レフカメラを首から下げた女性の姿があった。

マルチポケットジャケットを着て複数のバックを背負ったいかにも戦場カメラマンという容姿をしている。

けれど一番目を引くのは砂色の髪色に三つ編の髪型、活発そうなのに落ち着いた雰囲気、外国人のようで日本人のようにも見える不思議さだった。


「フリーのジャーナリストだよ。近隣で盛大に銃撃戦したって聞いて、ちょうど近くに滞在してたし自衛隊初の実戦とやらの感想と写真が欲しくてさ」


有持はまだ女性をじっと見て情報を頭に入れ続ける。

それを見た女性は説明するように話を続ける。


「名前言ってなかったね。あたしこういうものだよ」


名刺を渡されるが全部英語で書かれてて読めない。


「あ、悪い、悪い。今日本の名刺探すからちょっと待っててね」


女性はバックから名刺の束を出すと扇状に持ち替え、日本用の名刺を探す。


「こっちこっち。ほんとごめんね」


再度渡された名刺にはオリビア・T・グローブスと書かれていた。


「外国の人?」


「国籍はね、でもハーフだからこっちもネイティブ同然だよ。ミドルネームはトキモリ」


有持はある程度納得した。


「ところで戦闘の話の前にこの世界についての感想について聞きたいな」


「この世界、ですか?」


「うん。ぶっちゃけここに地球じゃないらしいんだよね。それでさ、だとしたら皆地球に帰りたいって思うのかなって思ったんだ。自衛官のあなたはどう思う?」


「え、....」


正直そんなことまで考えが回っていなかった。

現状では判断しようがないと思えるし質問の意図もよくわからないしなんでどう思ったのか疑問に思う。


「...逆になんでそう思ったんですか?」


「ん?そうさね、住む場所は選ばなかったし、帰る家もないしさ。帰れなくてもこの世界でエンジョイするればいいやって。でも他の人は違うでしょ?あたしとは背負ってるものが違うんだから。それでどう?」


そんな考えもあるのかと思いつつ思考する。

実家が気がかりだったりするが混迷状態にあるこの日本や世界を考えたらすぐ結論が必要とは思わなかった。


「...しいて言うなら、帰りたいかわからない」


「なんで?」


「なんでもです」


「そこをなんとか」


彼女はどうしても聞きたいという表情で有持の顔を覗き込む。


「第一取材許可なんか出てないですよ。まず広報に聞いてください」


「うわ、出た。あたしらみたいな人種が一番嫌いな奴。好きな場所で好きにやるのがジャーナリストなの。そっちの都合なんて知らないわ」


彼女がフンッって顔をしたので何だこいつと思いながらも門前払いにはしないことにした。


「それに戦闘の話も機密事項なんですからね。抽象的な話しかできないですよ?」


それを聞いたグローブス女史は有持をチラ見してまた不思議な雰囲気で表情を柔らかくする。


「...ふふ、そうこなくっちゃ」


取材は続く。

大幅改稿するかも

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