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アルカディアンズ 〜とある世界の転移戦記譚〜  作者: タピオカパン
混乱の始まり
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治安出動・災害派遣・国民保護等派遣3


モンスターを討伐することとなった有持たちは現場で検分を続けていた。


「鳥のようでいて爬虫類のようなヘンテコな生き物だな」


「そもそも鳥だって爬虫類みたいなもんだろ」


「いや、さすがにこれが鳥とかないです」


「エイリアンとか〇レデターじゃなくて〇ャオスが出てくるパターンか」


「こいつ100発撃ってやっと死んだと思ったけど案外外れ弾ばかりでまともに命中してるの少ないですね」


「あんだけ動いてたらそりゃ、そら当たらんて」


「64式だったらもっとダメージ出せたよな?」


「さあな。でもあれ連射効かねえし、ダメージだけで貫通力は大した差がないしな」


隊員たちがモンスターを囲んで考察に明け暮れる中、有持は無線機にかじりついて本部とやり取りしていた。


「現在地、連隊本部から北東5.3km地点の丘陵斜面、中隊本部から東北東1.7km。送れ」


「位置を確認した。殺傷した動物は熊か?送れ」


「熊ではありません。体長7mはある見たことない生き物です。送れ」


「見たことがない生き物とは何か?名前がわからないということか?送れ」


「違います。地球には存在しない生き物です。まるでモンスター映画に出てくる怪物です。送れ」


「了解したが確認が取れない。連隊本部から指示を仰ぐ。別命あるまで待機せ現場を保持し待機せよ。送れ」


「了解」


上への報告を終えた有持はため息をつきながら仲間に伝える。


「全員聞いてくれ、このモンスターの死体を保持する。おそらく各小隊が増援に来るはずだからそれまで周囲を警戒しつつ待機する」


「了解」


「まじかよ」


隊員たちが小声で不満や不安をつぶやいてしまう。


「陸尉、こいつらってここに住んでた土着の生き物なんですかね?」


「あ、そういえば...」


「え、何?ほかにもいるって話?」


「生き物ならそうなんじゃねえの?」


「陸尉ヤバくないっすか?」


有持は隊員の指摘で重大な問題に気付いた。

生き物なら当然個体数があってしかるべきという重大な問題だ。


「いや、まさか。そんなはずは...」


いや、むしろいて当然だと有持は悟ってしまう。

それを裏付け、絶望させる鳴き声が遠くから轟いてくる。


ギャオオオオ!


その鳴き声を聞いた瞬間、身動きする前に隊員たちの緊張が一気に高まる。

そして有持の号令を待たずして周囲に小銃を向けて臨戦態勢に入った。

しかも鳴き声は複数だった。


「嘘だろ...」


正直先ほどの怪物が複数で襲ってくれば火力不足で押し切られてもおかしくないだけに不安が募る。

しかしそれらは鳴き声の主たちは一向に姿を現さない。

けれどある程度経ってからそれらは予想を裏切る形で現れた。


「上だ、上!」


モンスター3匹が上空を飛行しているのが木と木の間からわずかに見える。

モンスターたちは自分たちに目もくれずに飛び去っていく様子だ。


「助かった...」


隊員たちから安どのため息が漏れる。

だが有持の顔は焦ったままで、すぐに無線機を出して本部に通信する。



第○○普通科連隊 本部管理中隊


82式指揮通信車


「鳥か?送れ」


「鳥じゃありません。さっきからそう言ってるんです!翼鳥10mはあるモンスターです!ギャオスみたいなもんです!送れ」


「正確に報告せよ。送れ」


そこへ連隊指揮官がやってくる。


「何かあったのか?」


「はい、第2中隊からモンスターが出たと報告を受けましたが詳細がわからず、遭遇した士官を直接呼び出して報告を聞いているところです」


「モンスター?いったい何のことだ?」


「わかりません。巨大生物に襲われ、他の個体がこの市街へ向けて飛び去ったとのことです」


「そのモンスターとやらがこっちに来るのか?」


「はい」


「報告の真偽がわからない以上対応しかねるが...」


そこへ隊員が走ってやってきた。


「高射小隊が未確認の飛行物体を探知。低速で接近中です!」


「まさか...」



高射小隊


師団・旅団には高射特科部隊が配置され、任意で各部隊に小隊や中隊が割り振られる。

高射特科とは自衛隊用語であり、一般用語では防空砲兵を指す。

この連隊には93式近距離地対空誘導弾、略称 近SAMからなる高射小隊が随伴していた。

高射部隊の目であるJTPS-P18 低空捜索用対空レーダが飛行物体を捉えた。


「方位041、距離4kmに飛行物体現出、数3、50ノットで第○○連隊本部へと接近中」


師団対空情報処理システムを装備する管理本部の車両ではスコープに映った未確認飛行物体を捕捉追尾を始める。



本部管理中隊


「ではそのモンスターは人を襲うんだな?送れ」


「そうであります。明らかに人を餌と捉えて捕食するつもりで襲ってきていました。市街に向かったのは餌を求めて襲いに行った可能性があります。送れ」


「了解した」


連隊長は有持との通信を終えるとすぐに通信手に聞く。


「師団本部から指示は来ないのか?」


「来ません」


「間に合わないか、責任を取る覚悟を決める必要がありそうだ。高射部隊に攻撃準備を要請するんだ!」



高射小隊


「目標が航空機でないのを確認し後、半径2km以内に入り次第攻撃開始!」


射手は射撃コンソールを操作し師団対空情報処理システムからデータリンクで指示された目標に照準を合わせる。

93式近接対空誘導弾システムのキャニスターが旋回して目標を射線に捉えた。


「目標視認、航空機ではありません。巨大な鳥です!」


対空警戒員が目標を確認し報告する。

無線で指揮官たちがしきりにやり取りを続けた後、攻撃命令を出すだけになる。



本部管理中隊


「本当に攻撃するんですか?師団本部から攻撃命令は下りてません」


「だが報告通りなら後2分程度で市民に犠牲が出ることになりかねないかもしれない...」


「しかし違ったらどうするのですか?今の状況では判断材料が無さすぎます。そもそも相手が生き物の場合、治安出動では武器使用の基準を満たしていませんし、有害鳥獣駆除命令も出てません。残念ながら現状で言えば...」


「確かにそうだ。だがそれでもやったほうがいいはずなんだ...」


「そこまで言うのでしたら...」


「ありがとう。攻撃命令を命令してくれ」


「了解!」


連隊長は悟ったような顔で部下にそう言って、部下も敬礼して返した。

この件の後処理が後々どのように影響するかを知る者はこの時点で誰もいない。



高射小隊


「発射用意、...発射!」


三発の91式携帯地対空誘導弾が発射され加速していく。

数秒後ロケットモーターの燃焼が終了し、最高速度に達した状態で滑空に移行する。

そしてミサイルは安定翼を動かして命中コースに乗るとその直後、目標に命中して爆発が起こった。


ミサイルは目標の主翼や胴体に全弾直撃し、撃ち落された。

モンスターはまだ息があるものいるがその後で地上にたたきつけられた衝撃ですべて即死した。



更に別の場所では航空自衛隊もそれらへの対応に追われていたのだった。

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