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アルカディアンズ 〜とある世界の転移戦記譚〜  作者: タピオカパン
混乱の始まり
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治安出動・災害派遣・国民保護等派遣2


地上で人々が右往左往している中、上空を戦闘機が飛行していた。


航空自衛隊 RF-4EJ


「これより撮影を開始する」


F-4ファントムの偵察機型であるRF-4EJが上空の映像をフィルムに収めていく。

機内には複数種の望遠カメラやパノラマカメラが内蔵され、機外に搭載した偵察ポットも使ってくまなく撮影していく。

ただし、すべての情報はフィルムや内蔵ドライブに保管されるので偵察機が基地に戻らないことには結果はわからない。

もともとかなり旧式のためアメリカ軍のSHAred偵察ポッドの様にデジタルカメラで撮影した動画や画像を直接送信するようなハイテクさはないのだ。


そんな偵察機が上空を通過していくのを有持は眺めていた。


「空自も大変そうだな」


そうつぶやく有持は町から出て郊外のまばらな住宅街を探索していた。

この頃には太陽が雲から顔を出し、その異変に誰もが気付き始めていた。


「なあ、ここ異世界だよな?」


「かもしれない」


「じゃあさ、〇レデターとか〇イリアンもありだったりするわけか?」


「そうだとして、いて欲しいの?」


「いや、それはヤバいな」


「それにしても誰もいないな。みんな市外に行っちゃったみたいだ」


郊外にいた人のほとんどは市街に移動してしまっているらしかった。

何人か会った住民もそそくさと町へ向かっていった。


「なんか小説とか映画に出てくるゴーストタウンのそれだな。シチュエーションがね、もうね、ヤバい」


語彙力のない返答を聞き流していた有持は全く人影のない家々や田園を歩いていく。


「なんか変な匂いがするぞ。おい、こっちに何かありそうだぞ!」


散開していた分隊が声がするほうに集まる。

最後の一人が現場に着くと他の全員が地面に落ちているものを見て固まっていることに気づく。


「なんか臭いんだけどそれ何?」


分隊員が仲間を除けてその物体を見たとたん度肝を抜いて尻から倒れこむ。


「うあ!な、何なんだよこれ!」


そこには腸をぶちまけた巨大なイノシシの死体が転がっていた。

胴体は完全に食い千切られ頭部周辺と後ろ足で分離していた。

問題は体重150kgを優に超える程のイノシシがこんな形で捕食されることはまずないことだ。

少なくともここが日本ならありえないことだった。

日本だったら。


「嘘だろ、モンスターがいるのか?」


「わからないが食い殺されたということは間違いなさそうだ」


「...陸尉、後退しますか?」


「んー...」


悩んだ挙句無線で指示を仰ぐも先ほどから無線がつながりにくい状態が続いている。


「だめだ、無線の調子がおかしい。うんともすんともない。ただこのまま放置してもいいのかも、ちょっとなあ」


「どうするんですか?追跡しますか?」


「んー、わかった。他の分隊は直ぐそこだろ?集めて追跡しよう。流石に銃が効かないんなんてことはないだろうし」


「了解」


有持は散らばっていた分隊を集結させると付近の捜索を始めた。

小隊は縦進陣をとり血の跡や足跡のようなものを追って小山の中へと入っていく。


すると今度は鹿の肉片と巨大で鮮明な足跡を林の中で発見した。


「いよいよこれヤバいですって、これ。どう考えても普通の生き物じゃないですって、ライオンでもこんなとんでもない食い方しないですよ」


「うぅっ」


先ほど立て続けにグロ物を見続けたせいか気分が悪くする隊員もいた。


「ああ、これ以上進んだら方向もわからなくなるし、今回はここまでにして引き返えそう。相手が得体の知れないモンスターだってわかっただけでも十分だもんな...」


ギャアオオオオオ!!


「!」


大きな鳴き声が前方の斜面から聞こえ、自衛隊員が皆そちらの方向に驚いて顔を向けた。

そのには誰も見たことがない超巨大生物がいた。

しかも見た感じは翼をもつ飛行生物の形態を取っている。


「で、でたああああ!」


自衛官たちが一斉に驚いて声を張り上げる。


案の定巨大生物が突進を始めてくる。


「後退!走れ、走れ!」


分隊は全速力で斜面を駆け降りる。

だが追っては自分たちより何倍も速かった。


「だめだ、応射だ、応射!」


分隊は射撃体勢に入ると一斉射撃を始めた。

89式小銃とミニミを腰撃ちや伏せ撃ちで発砲する。


銃声が森中に轟くなか、モンスターはお構いなしに突進を続ける。

けれど隊員たちが怯んで逃げ出すことを脳裏に浮かべてしまうくらいに距離を詰められたあたりでモンスターがよろけ、間伐木に頭から激突してそのまま根こそぎなぎ倒した。


自衛官たちは間伐木を回避するため立ち上がって小走りで避ける。

よく見るとモンスターは銃撃で頭が血まみれになってる様子で、視力を落としているのか弱ってるのか動きが鈍い。


「畳みかけろ!撃って撃って撃ちまくれ!」


有持はマガジンを交換するとコッキングレバーを引いて弾を装填し射撃を再開する。

モンスターは頭を振りながら再突進する。

今度は分隊がいると思われる方向にめくらで突き進んでいるようだった。


分隊の隊員たちはとっさにモンスターをかわす。

モンスターはそのまままた樹木に激突してそれなぎ倒した。

そして体を方向転換させた時には他の分隊も現場に到着し集中火力を浴びせ始める。

モンスターは再度突進しようとするが途中で立ち止まりそのまま体を横にドスンと倒れこむ。


「し、死んだのか?」


「...」


隊員たちがモンスターに銃を構えながらそうつぶやき始める。

有持は89式小銃を構えながら近づく。

死んだかどうか確かめるため突いたりするが反応がない。


「死んだらしい」


有持がそう言った瞬間、モンスターは最後の力を振り絞ったようにもがき始めた。


「うわっ!」


有持はすぐに後ずさりしてモンスターの眉間と思われる場所にセミオートで5.56mm弾を何発も撃ちこむ。

撃つ終わった後モンスターが動くことはなかった。


平成ガメラが頭をよぎってます。

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