混乱2
出島の城塞周辺の海
朱印船のような軍船が出島の城を包囲していた。
そこへ2隻の巨大な船が現れたことで混乱が広がった。
「なんだあれは?敵の援軍なんて聞いてないぞ?」
「それよりあの閃光の後はなんか様子が変だ、あの太陽はどうしたというんだ?」
まばゆい光が起きて以降、おかしなことが多すぎて混乱している中、それに拍車をかけるように謎の大型船が現れ対応が遅れる。
海上自衛隊 あさぎり型護衛艦 あおぎり
「哨戒ヘリが帰投します」
「撃墜されなくてよかったですね。強硬偵察が決めた時は領空侵犯であることや中国軍の攻撃を懸念しましたよ。けれど明らかにあそこは中国大陸ではないようですし...」
「当然だ。むしろ正直言うとタイムトラベルものと見てる」
「ありえなくないから反応に困ります」
「ああ。それで司令部からの返答は?」
「何もありません」
「艦長、セント・ジョーンズが先行します」
アメリカ海軍 タイコンデロガ級巡洋艦セント・ジョーンズ
「VHF、高周波とも全く応答がありません」
「答える気がないのか、答えることができないのか、答える術すらないのか...」
「おそらく見た目通りなのでは?」
「ではそう仮定するとアレは紛れまない”戦争”が起こっているということになる。司令部の返答はまだないのか?」
「艦隊司令部から通信が入りました。水上艦船に対する威嚇発砲を許可し、追い払えとのことです」
「よし、攻撃用意!」
朱印船のような軍船
船長たちはタイコンデロガ級が接近してくるのを見てどう対処するかについて話す。
「なんて大きさだ、しかも帆がない。どうやって動いているんだ?」
「わかりません。そもそもあれは船なんですか?」
「形状から言えば船のはずだが」
その船の正体についてあれこれ考えている最中のことだった。
本船すぐそこで3つの巨大な水柱が上がる。
何が起きたのかわからなかった。
そして5秒ほど経ってから遠方から3回の爆音が鳴り響いててくる。
そこで何が起きたのかわかった。
巨大船が発砲したのだ。
「まさかあの距離から発砲したのか?」
アメリカ海軍 タイコンデロガ級巡洋艦セント・ジョーンズ
「指定ポイントに全弾命中」
「目標の反応を警戒せよ。応答はあるか?」
「船団が本艦へ発砲しました」
「レーダーで確認、弾道から本艦には届かないと思われます。」
「威嚇はしたがまさかここまで予想通りの反応を示すとは。アオギリからの返信は?」
「返信きました。やはり攻撃はできないとのことです」
「だろうな、今の彼らにこれは判断できまい」
そして船団からの攻撃は1km手前に次々と着弾する。
「反撃と取るべきか悩むが敵意はあると見た。Mk.38で攻撃を行う。目標、船団の最先頭の船」
Mk.38 mod2 25㎜機関砲の砲身が動き軍船に照準を合わせる。
「ファイア」
「ファイア!」
ダンダンダン!
ダンダンダン!
M242ブッシュマスター機関砲から25mm砲弾がバースト射撃で撃ち出された。
船団の先頭船が大きな音を立て破片と爆煙を撒き散らす。
そして火の手が上がる。
弾薬に引火したのだ。
船上では火に水をかけて鎮火に努める人の姿が見られるが、途中で諦めたのか乗員が次々海に飛び込んでいく。
そして軍船はそのまま火だるまになって炎上し続ける。
船団の旗艦
「今の砲撃見たか?」
「連続して撃ってきただと?!しかもなんて威力なんだ...」
25㎜砲弾は炸薬が入った砲弾であり鉛玉しか撃ちだせない彼らにしたらとてつもない威力だった。
「船団長!どうしますか?」
船団の司令官は呆気にとられていた。
常識外れの存在に思考が追い付かない。
だが本能的に太刀打ちできない相手だというのはすぐに分かった。
最初の攻撃は水柱からとてつもない破壊力だということは推測できていた。
その後の連続砲撃は威力は低いがそれでも自分たちの船を簡単に葬り去る威力があった。
しかも命中率3割越えの正確無慈悲な砲撃精度だ。
だがそれ以降は追加攻撃してこないので冷静に考えられるようになる。
「奴らの目的は何だと思う?」
「それは...」
船団長の質問に部下は返答に困ったが続ける。
「最初の攻撃は威嚇ではないかと。次の攻撃は小砲での見せしめではないでしょうか」
「だとしたら相当おかしな連中だ。全滅させられるのにそれをしないんだからな」
「ほかに意図でもあるのでは?どうされますか?」
「退却だ」
「しかしそれでは残党討伐の命に背きます!」
「じゃあこのまま全滅するか?」
「それは....」
タイコンデロガ級巡洋艦セント・ジョーンズ
「目標、船体が崩れバラバラになっていきます」
「木造船相手で25㎜は流石にやりすぎだったか...」
「船団の帆が動いています。現海域からの離脱行動と思われます」
「...そうか」
いずも型護衛艦 いずも
「米海軍の哨戒機から入電。当陸地が未確認の土地、もしくは地球の存在しない陸地であると通報しています」
「厚木所属の哨戒機からも報告が多数上がっています」
「状況が全く見えてこないな」
「やはりここが”地球ではない”という前提で考えると筋が通ると思うのですが」
「だとしたらここはどこなんだ?」
「それは流石に...」
「あおさぎりが指示を仰いでいます。詳細はこちらです」
「陸地は日本ではない...じゃあ哨戒ヘリでの探索は領空侵犯になってしまったということか?やってしまった、あさぎりに撤退命令を出せ」
「待ってください、友軍のタイコンデロガを置いていくというのですか?しかも攻撃の許可についても仰いでいます」
「法的根拠がない。これ以上の相手国に対する同意なしの作戦行動は言語道断だ。第一、自衛艦隊司令部と未だに通信ができないんだ」
「ですがさすがに引き上げるのはまずいです。それに当該域に大きな脅威はないそうです。せめてタイコンデロガ随伴は継続したほうがいいです」
「...そうだな、わかった。あおぎりには自衛以外の交戦許可は出さず現場待機だ」
「了解」
とある海上
UH-1Yヴェノムの編隊が飛行を続けていた。
AH-1Zバイパー攻撃ヘリの姿もある。
「相手は何だと思う?俺はエイリアンだと思うよ!」
「ならお前は冒頭で串刺しにされるモブ兵士だな!HAHAHA!」
「異世界だって絶対、エルフとか妖精がいるんだって絶対!」
「チャイニーズカートゥーンの見すぎだろそれ」
「おめえ、さては4○○erだな」
機内では現状を面白おかしく話す兵士が多かった。
その様子をアレンはとくに制止はしなかった。
過激でなければジョークの言うのはいい傾向だと考えてのことだった。
ヘリ部隊は陸地に向かって飛行を続ける。