混乱(挿絵あり)
<<見知らぬ海上>>
事件から40分後
2機のオスプレイが海上を飛行していた。
「ウェイズ1-1、こちらタッグ2-1。沖縄を確認できない。繰り返す、沖縄を確認できない。レーダーに一切反応が無し、どこにも陸地がない。」
「タッグ2-1、こちらウェイズ1-1。間違いないのか?」
「間違いない。艦隊は沖縄からそんなに距離がないはずだ。間違えるはずがない。」
「タッグ2-1、引き続き捜索できるか?」
「ダメだ、これ以上捜索した場合、自位置を見失う可能性がある。」
「了解。タッグ2-1、2-2、帰還せよ。」
「了解。」
<<ワスプ級強襲揚陸艦ダッソー>>
「司令。やはり索敵機は沖縄を発見できませんでした。海上自衛隊の索敵機は無線のやり取りで判明している艦隊を確認しました。が、予定の作戦域に展開しているはずの一部艦隊、艦艇を確認出来ていなようです。」
「まるでSF映画だな。准将、各艦に警戒を続けるよう伝えてくれ。海上自衛隊の艦艇にも警戒と確認を続けて要請してくれ。」
「わかりました。」
「艦長、まだ通信は回復しないのか?」
「はい、未だ司令部からの応答はありません。今もしきりに呼び出しています。」
通信兵が報告する。
「カールビンソンから報告が入りました。ここから400マイル先に陸地を発見したそうです。また、各部隊との通信が続々と回復しており、発見した陸地から我軍と自衛隊からの通信、哨戒機のコンタクトも確認されたようです。」
「つまり、日本列島ということか?」
「いえ、それが陸地は日本とは全く異なるようです。ですが陸地には日本の住民及び施設、自衛隊や我軍がいることは確認されたようです。」
「何だそれは。」
他の通信兵も報告する。
「短波通信が入りました。本国からです。」
「内容は?」
「それが、状況は先程の報告と同様のようで、大混乱に陥っているようです。」
「一体何が起きたというんだ。」
想像力を振り絞ってもいまいちわからない状況。
だがこれが人民解放軍の攻撃によるものではないことはわかっていたし、犠牲者出ているわけでもないので、悪い状態だが最悪というわけではないので、まずは落ち着いて現状把握に勤め続けるしかないと任務部隊司令官達は思った。
だが、この混乱に割って入るように報告が入る。
「沖縄の捜索に出た巡洋艦セント・ジョーンズから入電。セント・ジョーンズに同行したフリゲート艦アオギリの哨戒ヘリが陸地を確認しました。先ほどの報告とは違うものと思われます」
「距離は?」
「方位065、距離100マイル」
「一体ここはどこなんだ?」
「セント・ジョーンズから報告です。発見した陸地の一角で暴動のような騒乱が起きているのを確認したとのことです」
「なんだそれは?もっと正確に報告できないのか?詳細を確認させろ。」
「こちらダッソー、セント・ジョーンズ聞こえるか、先ほどの・・・」
「全く、一体何なんだこの世界は。」
世界が大混乱に陥る中、とある大陸の一角で攻城戦が発生していた。
とある城塞
中国の古代の城塞を思わせる城で人とは違う身なりの者たちが剣や槍、大変レトロな大砲、マスケット銃を手に戦っていた。
「先ほどの光は一体?」
「なんか様子が変じゃないか?」
「何をしているかあ!ボヤっとするな!戦え、戦えええ!」
「はっ!」
うおおおおお!
一部動揺していた兵士たちが再度大声を出して城塞に攻め入る。
彼らの姿はミャウシア人同様、動物のような耳や尻尾を生やした亜人だった。
その特徴は一言でいうと狐である。
「何としても食い止めるのだ。逆賊を一兵たりともこの城壁から先に通してはならん!ヨクヨウから援軍が来るかもしれんのだ。それまで持たせろ!」
「しかし、この状況ではいくら義理があったとしても援軍を諦めてしまっていることも考えられます。ここは夜中に船を出して撤退を図ったほうが....」
「そんな真似できるか!ここで尻尾を巻いて逃げればすべての拠点をとられた我々の権威は地に落ちたも同然。それこそ敵に思うつぼだ。今はただ耐えしのぐしかないのだ」
「ですが...」
「もうよい。東側の城門の守備につけ」
「はっ」
意見具申した兵をこの城塞の指揮官と思われる男が追い払う。
兵が離れるのを見て指揮官は飛び切り大きなため息をついてしまった。
「はぁ...」
彼らはもう逃げ場がない絶体絶命の状態だった。
負ければ皆殺し、降伏しても全員打ち首は免れない。
ここは海を背にした城塞だがすでに朱印船のような軍船に海を包囲されている。
夜中逃亡を図っても逃げきるのは難しかった。
そして今はがむしゃらに防衛のために戦って後先のことは考えないようにしてしまおうと思うのだった。
城塞では絶えず弓や槍、銃弾の応酬が続くが時折、砲撃が飛んできて城壁が一部崩れる。
そこで指揮官はあるものの姿を見つけた。
「アレは...」
そこには最前線一歩手前で負傷者の手当てやその他の雑務をこなすとても高貴な身なりの女性の姿があった。
「皇女殿下、何をしておられるのですか?ここは危険です。一刻も早くお下がりください」
「わかっています。そこの人!けが人を運ぶから来なさい。私はこちらのけが人を運びます。」
「殿下、お手を煩わせることなど・・・」
「私は望んで手当てしているのです。それに私を遊ばせておく余裕が無いことも私が何をすべきかとあいこともわかっています。無用な気遣いは結構よ、コウ。」
「・・・。では謹んでお願い致します。」
「わかりました。」
皇女は兵士と共に負傷者を運ぶ。
頼もしい皇女の姿は兵の士気に貢献していた。
誰も弱音を吐かないし、吐けなかった。
しかし指揮官である自分は万策尽きて妙案もない状況に困っていた。
何かないか、何か。
このままでは先帝の意思と殿を務め散った皇太子殿下の努力が無駄になってしまう。
だが敵の包囲網は徐々に狭まっていくのである。
「神よ、どうか我々をお救いください。」
そんな時だった。
「何だあれは!」
見たことのない飛行物体が轟音をたてながら真上を通過していく。
その姿に全員が慄く。
敵は弓矢やマスケット銃を放っている様子も見える。
しかも周りを見渡すと左舷前方に2隻の船の姿が見える。
敵なのか味方なのか、正体不明の存在に動揺が広がる。
現れたのは海上自衛隊のSH-60J対潜哨戒ヘリだった。
「暴徒らしきものの詳細を確認。対象はまるで中世の戦場のような様相を呈しています。....そうです。見間違いではありません」
SH-60Jが上空を旋回する。
「おい、なんなんだあれは?」
「あんな化け物見たことありません!妖鳥とも全然違います」
「我々を襲う気か?」
想像力を振り絞っても何が起きるのか見当もつかなかった。
「おい、水平線から船が来たぞ!」
兵士の声にコウは海に目をやる。水平線に船が2隻見える。
その船の影は小さいが距離を考えればむしろ自分たちの使っている軍船よりはるかに巨大だと言えるくらい影の視角は大きかった。
その船の姿は徐々に大きくなっていく。
<<タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦 セント・ジョーンズ>>
「艦長、領海付近まで接近しています。中国領だった場合、攻撃を受ける恐れが...」
「いや、中国領だったら300マイル手前で迎撃を受けているはずだ。世界大戦中だぞ?」
「確かにここまで全く敵影がないのは異常ですが...」
「それよりあの出島の城か?あそこにいる奴らは一体何なんだ?仮装パーティーか何だか知らんがここが中国でないならやりようはある。司令部に指示を仰ぐぞ」
アメリカ海軍ワスプ級強襲揚陸艦ダッソー
アレンたちがこの艦で待機状態に入ってしばらくたっていた。
「作戦変更だ。全員ヴェノムに乗り込め!」
突然の指示にアレンが戸惑う。
「作戦変更って?沖縄戦か台湾戦じゃなくか?」
「そうだ。作戦計画はない、緊急展開任務だ」
「じゃあ乱戦覚悟ってことなのか?」
「いや相手は刃物しか持たない暴徒らしい。今状況を確認中だが即時投入できるよう準備を行うんだ。さあ、早く乗れ」
「...了解」
アレンたちの小隊が乗ってきたUH-1Yヴェノムに分乗する。
そして少し多々後、UH-1Yは離陸し戦場へと向かった。