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アルカディアンズ 〜とある世界の転移戦記譚〜  作者: タピオカパン
猫の国の内戦(前編)
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劇的な近代化


ミャウシア東部国境


ザイクス軍の機甲部隊がなにもない平野を車列をなして移動していた。


「クソ猫共!いるなら出てこい、俺が相手してやる!」


戦車のハッチから身を乗り出しそう豪語するのはザイクス陸軍でアイアンドックと名をはせている機甲軍団の指揮官のロイベルマン将軍だった。

機甲部隊の戦車はV号パンター戦車やティーガーI、ティーガーIIに似た戦車をようする。

ザイクス陸軍の機甲部隊は極めて強力であり、なかでも一番強力なのはV系II型戦車だった。

68口径86㎜砲と砲塔150mm、車体100mmの装甲板を有するこの戦車はミャウシア軍の重戦車でも破壊困難でSU-122似の122mm自走砲の榴弾で対抗できるか否かだった。

見た目はパンターIIの強化版っぽさがある。


ザイクスの種族特性はグレースランドと同じで犬の亜人である。

グレースランドがイエイヌ系だとするとザイクスはハスキーやオオカミがモチーフのような種族だった。


そうこうしていると距離1000m先の稜線からミャウシアクーデター軍の機甲部隊が顔を出して攻撃を始めた。

射程が段違いでまともに撃ち合えばミャウシア軍は撃ち返せずに一方的に撃破されるのでこの戦術をとった。

だがそもそも戦車のスペックが違いすぎる。


ドオオオオオン!!


クーデター軍の戦車の砲塔が爆炎とともに吹き飛ぶ。

撃ち返すも分厚い装甲にまるで歯が立たない。

44mm対戦車砲ではもはや昼飯の角度もない側面もほぼ弾かれるレベルだった。

撃破された戦車部隊の残骸の合間をザイクス軍戦車部隊がゆっくり通過する。

随伴歩兵部隊がいなかったのか人気があまりない。


「ふん。電撃戦を想定した布陣か、小賢しい」


将軍がそういった矢先、ロケット花火の飛翔音がした後、戦列の戦車が爆発炎上した。


「何!?」


確認するとさらに前方2000mに敵歩兵部隊の姿があった。


「た、対戦車砲か?いや、あれは...」


とても小さな点が背景を歪ませながらひらひらと正面に浮かんでいるのが見える。

少し前ならまったく見当がつかなかったが今ならそれが何なのかわかる。


「ミサイルだと!?」


対戦車ミサイルが次々戦車に命中し撃破されていく。

150mmの装甲板などまるで関係がないかのような破壊力だった。


2000m先では猫耳の兵士が対戦車ミサイルの誘導装置に顔を当て発射機を構えていた。

誘導装置がジーっと音を立てる中、猫耳の兵士が発射装置のボタンを押す。

するキュイ!と音を立て発射筒の蓋が開くと次の瞬間ジャコンッブオーン!と爆音とともにミサイルが発射される。

ミサイルが飛んで行った後、発射機から誘導ワイヤーが伸びているのが見える中、ジーっと誘導装置のシーカー動作音が続き遠くで閃光がする。

6秒後にターン!と小さな爆音が轟く。

戦車は炎上した。


使用されたのはソ連が開発した9M113コンクールス対戦車ミサイルだった。


戦いが急速に近代化していく。



NATO軍航空基地の格納庫


新設されるミャウシア空軍の将校達がアメリカ合衆国の招きでこの基地に訪れていた。


「はい。我が国には使わなくなった機体を保管するデビスモンサン航空基地があります。俗に”戦闘機の墓場”とも言われており、この機体はそこでモスボール保管されていたものです。電子装備はかなり旧式ですが国防総省としてはむしろこの程度の方が好ましいと考え、こちらを候補にしました。このF-15イーグルは中でも機体寿命や整備面で非常に都合がいいのです」


「他にも候補が?」


「ええ、F-4ファントムとF-14トムキャットですね。F-14は維持費がかなりかさむので再整備後は短期間の運用になるかと。F-16などは議会が出し渋りをしています。なのですぐに供与になりそうなのはこちらなんです」


「かなり大きいですが重量は?」


「空虚重量は13トン(ミャウシアの単位で発言、以降の単位も翻訳)、皆さんが使っている4発爆撃機のそれに近い重量があります。速度はマッハ2.5、航続距離はフリーレンジで4600km、行動半径は迎撃が1600km、制空作戦時で800kmです。皆さんの航空機にも原始的なレーダーを持つものもあるようですが、これには160km先までの航空機を識別、目標追尾し火器管制する電子装備が標準装備されています。これでもかなり旧式ですがね」


その内容に猫耳の将校達は(猫)耳を疑う。

地球の軍隊を相手にして薄々わかってはいたがスペックが尋常ではない。

この時点で自分たちより70年先の文明レベルと知れ渡っていたので納得がいく。


「えぇぇ...」


ここでミラベルが驚きとも残念ともとれない複雑な表情をとる。


「不都合が?」


「何時間飛ばされるの?流石にキツイって、双発でもしんどかったのに」


「アーニャン、巡航速度が早いから問題にならないよ」


チェイナリンは眠そうな目でミラベルを諭す。


「あ、そっか」


「それでしたら自動操縦機能をご利用ください。一定条件で戦闘機が自ら操縦してくれます」


「...マジか...」


ミラベルは小声でそう漏らすとSFを感じる。

ミラベルはスペックよりパイロット目線で利便性や都合を考えていたので自動操縦はどうやら思いの外ぐっと感じたらしい。


「先程、F-16という機体は出し渋りしましたがもっと高性能なんですか?」


「逆です。F-16ファイティングファルコンの機体性能はそこまででは無いのですが電子装備は強力で維持費も改修も安価なのでむしろ自分たちの予備として温存させるつもりでいるんです」


「そうか...」


つまり自分たちには高くて維持が難しい機体をあてがったことを理解する。


「維持費は一飛行時間あたりおよそ4万ドルです皆さんが整備するならもっと安くはなるかと思いますがレシプロ戦闘機とは残念ながら比較にならないのですが気落ちしないでください」


ミャウシアと貿易してないので推定物価で答えたがそれでもあまりの破格に後ずさりする関係者もいた。

レシプロ戦闘機10機分どころかそれをはるかに凌駕するコストを疑問視する様にざわめく。

そんな中チェイナリンが発言する。


「費用に見合った性能があると私は思います。ミサイルについてもセットで売却を?」


「はい。AIM-9L/PサイドワインダーとAIM-7M/Pスパローを供与します。F-4でもこれらの武装は使用可能です」


チェイナリンは戦闘機を見た後発言する。


「わかりました。この供与計画、お受けしたいと思います」


「感謝します。ではこちらへ」


一行は格納庫を後にする。


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