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アルカディアンズ 〜とある世界の転移戦記譚〜  作者: タピオカパン
猫の国の内戦(前編)
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戦いの前


NATO首脳会議


「今回の議題は非常に多いですがそれぞれに何かしらのコミットができることを期待したい」


「何はともあれ、まずミャウシアとロシアだ。クレムリンはミャウシアを我々の喉元に突きつける矛にしたいらしい」


「いつもの手口と同じです。ロシアは代理戦争も辞さないつもりのはずだ」


「このまま予定されている軍事行動を完遂すべきだ!」


旧ワルシャワ条約機構構成国の東欧諸国は過去の苦い経験からロシアに対し激しい反感を抱いていた。

ポーランドやNATO加盟国ではないが重要なオブザバーとして参加するウクライナ、異世界転移前にロシアの介入で国家が崩壊寸前に陥ったバルト3国などは強硬論を固持し曲げないつもりでいた。


しかしNATOは様々な国々の共同防衛機構であり各国の温度差はかなり幅がある。


「しかしこのまま闇雲に対立を深めては地球のように一線を越えてしまう事態を招きかねない。ここは話し合いを第一にすべきだ。そもそも経済が破綻気味の中で増え続ける戦費に我が国の国民は危機感を持っているのです」


ドイツからハト路線の意見が出る。

元々ドイツは冷戦終結以来、こういった軍事対立を国民が嫌っていることもあリ政府も国民の意を組んでハト路線にできれば持っていきたい考えがあった。


「話し合いで解決できるのであれば歓迎だ。こちらの軍事行動を止めさせたいのがロシアの狙いで、軍事行動を続ける限り介入をエスカレートさせるならキリがなくなるし、最悪核を持ち出す事態になる」


フランスもドイツに同調するがドイツほどハト度は高くない。

そっちでもいいんじゃないかという感じである。


「だが現状の軍事行動を途中で切り上げるのはまずい。我々の支援がなければ連合軍は総崩れになる恐れがある。自力はどうしてもミャウシアクーデター政権の方が圧倒している。それにロシア政府が介入を止めない保証がない」


イギリスはさらにハト度が下がる。

一方イタリアはあまり発言がない。

政権がコロコロ変わるのでその都度安全保障観がコロコロ変わりやすくこの場合は周りの流れに合わせるつもりでいた。


この通り意外にも欧州連合軍の屋台骨を成す4大国は強硬的ではないかった。

責任ある立場なので軍事対立を嫌うのは当然であったのは言うまでもない。

ちなみに異世界転移によって国力が皆1/3くらいに落ち込んでいたのでもはや大国とは言えなかったが。


そこでNATOの盟主であるアメリカに結論が委ねられる流れが形成される。

そしてアメリカから代表としてきていたアメリカ合衆国 国防長官はアメリカとしての意思を述べる。


「我が国としてはこれからも軍事プレゼンスを主導していくつもりであり、今後予定されている軍事作戦を決行するつもりです。懸念はもちろん我々も抱いていますが、それ以上にここで手を引いた場合の最悪の事態を考えれば後に引くことはできない。どうかNATO諸国の皆さん、お付き合いを頂きたい」


アメリカの考えはシンプルだった。

そこで欧州連合の各国もアメリカの従来通りの姿勢に今度の展開にある程度の展望が見えたことから意見の一致をみた。


ヨーロッパの軍港、港


「オーライ、オーライ」


イタリア陸軍のC-1アリエテ戦車が港の埠頭に集められていた。

これらの戦車は順々貨物船に載せられていく


別の埠頭には海上自衛隊の艦艇が数隻停泊していた。

その近くの軍事施設で自衛官達が集まり訓示をしている。


「よって今回の派遣において我々海上自衛隊の主要任務は機雷の掃海任務と輸送船の護衛、作戦海域での海上哨戒にあります。今回の同盟国の求めに応ずるための特措法及び自衛隊法改正によって我々の任務とその重要性はますます大きくなってきているだけに諸官の努力、活躍を期待します。以上です」


これから行われる軍事作戦では自衛隊は戦闘に参加しないが支援任務として輸送、哨戒、掃海、補給、護衛の5項目で活動する。

政変後の日本政府としては転移世界での確固たる地位を獲得と”転移後の騒乱の教訓”、経済復興の糸口の一つとして国際貢献を大義とした軍事プレゼンスの推進するため、その第一歩としてアメリカ主導の40万の大兵力を投入する「自由の夜明け作戦/オペレーション・ダーンオブフリーダム」に間接的に参加した。


その「自由の夜明け作戦」の最大の障壁はロシア軍の地対空ミサイルシステムであり、これがある限り作戦の効率的な実施は不可能だった。

だが今回のNATOの協議でロシア政府に最後通告を行う。


ミャウシア領全域を飛行禁止空域に指定し、域内で活動した場合は本意、不本意にかかわらず攻撃が及ぶ恐れがあり安全を保証できない。

ただちに域内からの退去、もしくは安全地帯への移動を勧告する。


というものだった。


ロシア側は返答を渋った後、ミャウシアでの活動を認めNATOの軍事行動に反対、抗議し拒否した。

ただし核の使用はほのめかさなかった。


やれるもんならやってみろ。


そんな回答だった。

だがさすがのロシアも地対空ミサイルシステムの配置を変更し、前線配備のミサイルを9K37 ブークだけに絞った。

S-300とS-400はミャウシアクーデター政権中枢地帯に配備し、殺られてもそこまで問題ではない中距離地対空ミサイルの9K37 ブークで邪魔を図ることにしたのだ。

場合によっては供与機だったという言い訳も考えてのことで、この時点で航空戦力の配備と核戦力の配備は時期尚早だった模様である。

転移前の第3次世界大戦で少し反省の気があったのかもしれなかった。


いよいよ戦いは壮絶な中盤戦に差し掛かろうとしていた。

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