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アルカディアンズ 〜とある世界の転移戦記譚〜  作者: タピオカパン
猫の国の内戦(前編)
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カラシニコフ小銃


ミャウシア陸軍省


タルル将軍とニー参謀総長が会話していた。


「なぜだ!なぜこうなる!」


タルル将軍は一室に設置された兵棋演習盤に解放軍と目される駒を投げつける。

将軍は興奮し尻尾を振りまくる。

ミャウシア人の尻尾の感情表現は概ね猫と同じである。

尻尾を激しく動かすことは猫同様イラつきや不機嫌を表す。


「なったものはしょうがありません。今は対応策の検討が先でしょう」


ニー参謀総長はタルル将軍に当たり前のことを具申する。

表情は笑っていないが不機嫌とも取れない表情だった。

もしかすると蔑みや呆れの感情でもこもってるのかもしれない。


「そんなことくらいわかっている。予備役兵と徴兵、保管装備をフル動員して徹底的に叩きのめしてやる!」


ニー参謀総長はそれを聞いて頭を掻く。

表情はほんの少しだがいよいよ不機嫌な表情になった。


「それもそうですがまず即効的な案を先にまとめるのが先決かと」


頭の悪い内容にキレ気味と言わんばかりにタルル将軍の案をやんわりスルーする。


「ん?そうか。それもそうだな。何か案があれば言え」


ニー参謀総長は机に腰を掛けたまま腰元に置いてあった書類を持ち上げる。


「初めに、我が軍が後手に回っている原因として陸軍の動きを逆手に取られたのは過ぎたことなのでこの際は置いて、現状としてNATO軍が上げられます」


参謀総長は暗に派遣軍を編成したタルル将軍を当てこする。

どうせわからんだろうとでもいうかのごとくバカにしているのかもしれなかった。


「正直彼らを正攻法でどうにかするのは不可能に近い。それにです。私の読みでは奴らは再度大規模な作戦に打って出ると予想しています」


「再度だと?まさか奴らが直接攻めてくるだとでもいうのか?そんな兵力奴らにはないだろ」


参謀総長が細目をタルル将軍に向けて言う。


「普通に考えればそうですが彼ら単体ではなくグレースランド・ザイクス連合軍の侵攻に乗じて側背攻撃を意図した本土侵攻作戦を計画しているものと私は予想していました。そしてある筋からその裏は取れました。奴らは間違いなく本土侵攻を狙っている。それがこれです」


「何!そんなことになれば...」


参謀総長は立ち上がるとソファーへ向かいタルル将軍の向いの席に座って茶のカップを持ち上げた。


「ええ、かなりまずいです。我が軍の短期動員予定兵力は1000万ですが現状は現役戦力300万です。南部に反乱軍が上陸し200万の兵力で殺到してきている。更に東部から犬耳共100万の兵力が接近中。しかも犬耳共に対して戦線の構築した場合背後強襲を地球人が虎視眈々と狙っている。なにより我が軍の士気は以前低下気味で南部戦線でも勝てるか微妙なところ。チェックメイトは時間の問題といわけです」


「ならなぜこうなる前に手を打たなかった!」


タルル将軍の追求に対し参謀総長はリアクションをとらずに茶を飲む。


「...まあいい。お前のことだ、何か考えはあるんだろう?」


「ええ、毒をもって毒を制すると言うやつです。地球人には地球人で対抗すればいい。我々と敵対している地球人に更に敵対しているグループと接触し協力関係の代診を受けました」


「下等種と手を結べというのか。断じてそんなマネはせんぞ!」


「しかし、これほどいい妙案はありませんよ?しかも今回接触したロシア連邦という地球人国家は武器の供与に大変前向きで一部兵器の贈与に応じてくれました。それがこれです」


参謀総長がソファーの脇に立てかけてあった長い包を手で叩く。


「何だそれは?」


タルル将軍が聞き返す。

すると参謀総長が包を太ももの上に引っ張り上げると包を開く。

出てきたのは銃器だった。


「小銃か?」


参謀総長は一緒に来るんであったマガジンを小銃に装着し手に持って立って言う。


「そうです。カラシニコフ小銃という”自動小銃”だとか。少し重たいですがまあ我々でも扱える大きさではありますね」


参謀総長が持っているのはAK-74M小銃だった。


「どうです、試し撃ちはいかがですか?」


「...」


タルル将軍はこの時絶対反対の姿勢を止めていた。

その様子に参謀総長はニコッとする。


「こちらですよ」


タルル将軍は直衛の兵士たちとともに庁舎を出ると広場に用意された用意された左折の射撃場に着く。


「まずは性能テストから」


参謀総長は担当の虎猫の兵士にAK-74Mを渡す。

すると兵士はレバーを引いて弾を装填し標的として設置された皿を銃を構えて狙う。


タアアン、タアアン、タアアン、タアアン、タアアン!


兵士は発砲を始め次々皿を撃ち割っていく。

その様子をタルル将軍は興味深そうに見る。


兵士が一通り撃ち終えるとマガジンを外して地面にそのまま落とす。

片手でAK-74Mの構えを続け持っていたマガジンをもう片方の手で装着しまたレバーを引いて弾を装填する。

する今度はターゲットマークがついた標的に銃を向ける。

セレクトレバーでセミオートからフルオートに射撃体制を変更する。


ダダダン、ダダダン、ダダダン、ダダダン!


兵士は的にある程度正確に銃弾を当てていく。

終わると見事に破壊された皿の破片と穴だらけにされたターゲットマークが残る。

始終タルル将軍は何も喋らなかったが何かを考えているようで口を開く。


「奴らは何をしてくれると?」


「まずは敵航空戦力を封殺するところから。それでも止めないなら本格的な武器供与を開始するそうです。あと、その前に贈与された火器や戦車、”ミサイル”を前線で試験運用したく思います」


「...わかった。ロシア軍とやらを招き入れろ」


「ではそのように手配を」


タルル将軍は兵士からAK-74Mを取り上げるとそのまま護衛の兵士と歩いていく。


「ふん、もう展開済みだ。マヌケ」


参謀総長はタルル将軍たちの猫耳でも聞こえないと思われる距離まで離れたところで本音を吐露する。

参謀総長は三白眼な眼差しで部下に命令する。


「ロシア軍に攻撃の許可を伝達。我が物顔で領空を闊歩する奴らを地対空ミサイルで叩き落とさせろ」


クーデター軍にも大きな動きが現れ始める。

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