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アルカディアンズ 〜とある世界の転移戦記譚〜  作者: タピオカパン
猫の国の内戦(前編)
51/136

上陸作戦2


<<ミャウシア中部上空>>


爆装したF-16戦闘機やユーロファイター戦闘機が編隊をなして飛行を続けていた。


「こちらズワールド4−2、現在地から目標までの距離20マイル。これより爆撃体制に入る」


「こちらスカイピース、了解。北西部からミャウシアクーデター軍と見られるインターセプターの動きが見られるが接触不可能と予想される。作戦に支障はない、攻撃を開始せよ」


「了解」


NATO軍の爆撃編隊が攻撃目標を捉え始める。

標的は鉄道だった。


「投下」


切り離されたレーザー誘導爆弾が目標にめがけて落ちていく。

十数秒後、地表に閃光が発生し爆煙が生じ、鉄道はクレーターによって寸断された。

爆撃編隊は少しコースを変えて10分後には渓谷に架けられた鉄道橋上空に達してこれも爆撃して崩落させる。


NATO軍航空部隊はミャウシア蜂起軍の上陸作戦を直接的には支援していなかった。

彼らは彼らにしかできない重要任務を淡々とこなしていたのだ。

それはミャウシアクーデター軍の南部への展開を阻止するための後方阻止である。

攻撃目標はミャウシア中部から南部にまたがってそびえる山地や山脈にしかれた鉄道、幹線道路、橋と付近の給油施設である。

戦果としてはこちらのほうがよほど重要であり、これいかんによって上陸部隊の作戦達成度と損害が非常に大きく左右される。


また懸念されていたロシア軍伏兵の姿は見られずNATO軍航空部隊を邪魔できる存在は皆無だった。

けれど最悪の事態を想定し作戦機不足が深刻な中でも敵防空網制圧部隊が編成され常に待機していた。


爆撃編隊は爆弾を全て投下し終え、方向転換して湾へ向かう。

海峡付近まで来ると早期警戒管制機E-3セントリーの姿が遠方に見え始める。

このE-3はNATO所属でルクセンブルク籍の特定の国家に属さない共用機であった。

E-3機内では連合軍の誘導も行っていた。


「こちらNATO所属スカイピース、ポイント332辺りを飛行中の編隊へ、あー、ミャウシア海軍の飛行隊か?どうぞ」


「こちらミャウシア海軍第53航空師団だ、どうぞ」


「クーデター軍機と見られる編隊を探知。ポイント534を南南東に向けて飛行中。迎撃可能か?」


「迎撃可能だ。制空任務機を向かわせられる。誘導してくれ」


「方位066へ変針せよ。予想到達時間は10分だ」


「了解」


海上を飛行中の少しスピットファイアに似たミャウシア海軍のレシプロ戦闘機の編隊の列が1機ずつ少しだけ上昇するように旋回して変針していく。


またE-3の近傍には2機の空中給油機の姿も見受けられた。

ロッキード トライスター空中給油機とKC-135R空中給油機の編隊だ。

爆撃部隊は始終巡航速度を保てば単独でも往復できなくはないが作戦行動半径との兼ね合い、ユーロファイターがF-16より航続距離で少し劣っている関係から空中給油機もスタンバイしていた。

ユーロファイターの編隊はロッキード トライスターへ、F-16の編隊はKC-135Rへ近づき給油作業を始める。


なんで別れたかというとそれはユーロファイターとF-16では給油方式が異なっていたからだった。

ユーロファイターの給油はプローブアンドドローグ方式なのに対してF-16の給油はフライングブーム方式であり互換性がないのだ。


ユーロファイターは給油装置を胴体から引き出すとロッキード トライスターの後部からにょきにょき伸びてきたホースのコーンにそれを突っ込む。

一方F-16はKC-135Rの後部から伸びてきたブームを機体の中央にある穴に突き刺した。

こうして戦闘機への給油が始まり燃料に余裕を持ってグレースランドについ先日設けられたNATO軍専用の航空基地へ帰投する。


そして爆撃編隊が海岸上空まで到達した。

F-16戦闘機のコックピットから見下ろす沿岸にはものすごい数の白線が見えた。

それは上陸作戦に従事する揚陸艦、輸送船、貨物船、貨客船、駆逐艦、巡洋艦と更に無数の上陸用舟艇の一群の航跡だった。

駆逐艦や巡洋艦は時折発光しているのも見えるがこれが艦砲射撃なのはすぐ見て取れる。

高高度の空から見るとそれらの動きはとてもゆっくりなのでなんとなくだけれど穏やかに見えてしまいそうだった。

だが実際はものすごい勢いで人が死ぬ死闘なのである。


情報ではほとんどのビーチは抵抗軽微であっさり上陸できたがクーデター軍の展開が間に合った一部のビーチは大激戦になり損耗率50%、死傷数4万人の大損害を出して大パニックになってしまったところもあるらしい。

できれば自分たちの手で支援したところだが作戦機数に全く余裕がない自分たちではどうしようもなかった。

それに種族特性的に容姿があれなだけにNATO軍将兵たちは余計不憫な感覚に襲われしまうのだった。


そんなこんなで爆撃編隊はひっきりなしに船舶の航跡が見える湾を飛んでいった。

湾を渡り航空基地まで来ると戦闘機は高度を落とし滑走路へ進入する。

この時、駐機場には多数のNATO軍輸送機が控えていた。

その周りにはすごい数の人だかりができていて大半は背中に大きなバックを背負っていたので疲れないよう座っていた。

種族的には大半がミャウシア軍兵士で一部がNATO軍兵士だった

彼らはこれから輸送機に乗り込みミャウシア南部へ向かい空挺作戦を実施する。

作戦内容は純粋な兵力の投射と戦術的な用地奪取である。

ミャウシア蜂起軍では空挺という概念が希薄だったがNATOに手ほどきを受け実施に積極的なっていた。

しかし経験や練度があまりにも稚拙だったのでNATO軍側は兵力の投射と無難な占領作戦だけに抑えるような計画をたてた。

経験上まともに何かをさせればクレタ島強襲やマーケットガーデン作戦みたいな惨事になるのが容易に想像できたからだった。

またミャウシア兵たちは空挺を1回くらいしか訓練していない新米オンリーだったのでインストラクター感覚な先導役のNATO軍空挺部隊も降下する。


そんな中、待機中にNATO軍兵士のごく一部が規律ゆるゆるでミャウシア軍の小隊や分隊に混ざろうとしていた。

目的はコミュニケーションを大義名分とした実質のナンパだった。

その中にはフランス陸軍兵士のナナオウギもいた。

通訳して欲しいと規律のゆるい(+ロリコンの気あり)兵士たちにせがまれ付き添っていた。

このグループはまだミャウシア人と接触したことがなく、軍隊でも顔面偏差値が大変優秀な小さな猫耳ガールの天国と聞き夢を膨らませていて実際そうだったので理性を蒸発させる。

合コンか、と言いたくなるナナオウギだったが彼も自身が数少ない通訳なので連絡係として専用のミャウシア人分隊が直属で2個分隊与えられていたので心境は複雑だ。


幸いナンパされた猫耳美少女達は気に触った様子はなかったので何事もなく作戦開始前には解散した。

ナナオウギは満足そうに隊列に戻る兵士を見て、異世界転移前の陸上自衛隊中部方面隊所属時に会った、夢はエルフやケモ耳の女の子でハーレムを作ることと言ってはばからない厨二病全開のオタクを思い出す。


「ここにいたらさぞ喜んだんだろうな」


と漏らしてしまった。

かく言う自分も猫耳の想い人ができているだけに人のことはとても言えないと思うのだった。


そして作戦開始時間直前になり兵士たちはC-130輸送機やエアバス A400M アトラス輸送機、C-160 トランザール輸送機、EADS CASA C-295輸送機などNATO軍内からかき集められた輸送機にパラシュートを背負った兵士たちが分乗していく。

兵士を満載した輸送機の群れは滑走路に進入すると徐々に速度を上げて離陸いていった。


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