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アルカディアンズ 〜とある世界の転移戦記譚〜  作者: タピオカパン
猫の国の動乱
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両軍接触


<<ミャウシア海軍艦隊旗艦>>


ミャウシア海軍の旗艦を擁する50隻あまりの艦隊が土砂降りの雨の中を低速航行していた。

艦隊旗艦の艦橋には窓を見ながら焦燥感にかられるニャマルカム大将の姿があった。


「貴官はこの戦い、どう転ぶと思う?」


大将は参謀に尋ねる。


「正直、ろくな戦いならないでしょう。各提督に軍閥の気がでてからはやりたい人達ののりで作戦を立ててる状態ですから。我々参謀部の言い分を無視して各艦隊の横の繋がりで立てる作戦に秩序だった動きができるはずありません。しかもその作戦自体、ただ敵を減らすだけの消耗戦で戦略的には何の意味もないものです」


「まさにその通りだ。だかもうタイムリミット間近だ。私もタルル将軍のようにダメな将軍を力ずくで失脚させるよう工作すべきだったかと少し後悔しているよ」


「どちらに転んでもろくな結果になりそうもないですね」


「違いない」


そんなにやるせなさそうな会話を大将は参謀としていた。

参謀はタルル将軍の出身部族でタルル将軍のもと今のミャウシアを支配下に置こうとしている虎模様の髪質のニャーガ族の人だった。

クーデター以後、ニャーガ族とそれ以外の部族は完全に敵対関係にあり、モザイク国家ミャウシアにあっても民族遊離が始まり、特に軍では完全に部隊が自主的に別れて二分状態だ。

そんな中で多部族派に留まり留まっていられる参謀は風変わりな人物だった。


そんな時だった。


「右舷前方1km先に未確認の艦影見ゆ。高速で本艦隊に直進してきます!」


「何だと?!」


雨で艦を視認しづらかったが目標を視認しづらかったがそれがミャウシア軍の駆逐艦でないことはすぐにわかった。


各艦が動揺する中、現れた駆逐艦は全速力で艦隊に入り込んでいこうとする。

ようやく応戦体制にはいった艦隊は主砲を向けようとするがこの時、駆逐艦は艦隊の陣形に突入する。

ミャウシア艦は急いで主砲を旋回させるがこの時点で15cm砲や22cm砲は近すぎて狙いを定められなかった。

122mm砲で狙い始めるも今度は味方艦が邪魔で誤射しかねない。

仕方なく22mm機関砲や33mm機関砲でバスバス撃たれることとなったが榴弾ばかり装填されていたので、駆逐艦の鋼板を強烈にノックするだけになってしまう。

けれど装甲板のない艤装はズタズタになった。


そこで重巡洋艦が突出して駆逐艦に体当たりをかまそうと転舵してくる。

排水量12000トンの装甲艦に体当りされては駆逐艦と言えどもただでは済まない。

しかも近接対空火器が豊富でますます駆逐艦の構造物にダメージを与えてくる。


だが駆逐艦は重巡洋艦の動きを見切っていたのかすんでのところで全力回頭し、すれ違いざまにかするようにぶつかった。

なんとも言えない重鈍な音が鳴り響くとそのまますれ違う。

だが重巡洋艦は置土産を残していた。


ズドオオオオン!


駆逐艦の至近から巨大な水しぶきが轟音と共に出現した。

重巡洋艦は信管セット30mの爆雷をばら撒いていたのだ。


その一発が駆逐艦に至近だったため船体を大きく揺らした。

そのせいか煙突から黙々と黒煙が吹き出して効果があったように見えた。

しかし速力は落とさず、旗艦に向かって全速力で突撃をなおも続ける。


ここで高い位置にあった旗艦の122mm連装砲の副砲が誤射の危険がないと判断して2基4門が一斉射した。

この時、駆逐艦は旗艦に並走する気だったのか大きく回頭して高機動な動きをしていたので2発が外れたが残りの二発が命中して火災を発生させた。

だがそれもお構いなしに駆逐艦は旗艦の懐に飛び込む戦艦の脇に付いた。

そして駆逐艦はついに旗艦のソミューニャ級戦艦にぴったり張り付いて並走をしたのだった。


こうなるともう手出しできない。

旗艦では搭載されている軽機関銃や重機関銃が駆逐艦に向けられ、多数の猫耳の水兵が小銃を持ってハッチから一列に走って出てくると左舷の甲板に集まって来た。


多数のミャウシア兵が火器を向けるなか、駆逐艦の甲板に一人のミャウシア人が姿を表した。



<<戦闘海域>>


雨雲の前線が徐々に減り、見晴らしが良くなってきた中で、連合軍とミャウシア軍の戦闘は激化していた。

両軍が砲火を交えていく過程で、潜水艦が猛威を振るい始めていた。


それはミャウシア海軍の潜水艦の存在だった。

もともとミャウシア海軍は数百隻潜水艦を持ってきていた。

雨天のせいで大した成果を出せずにいたが天候が回復したことでその数が物言い始めていたのだ。


「私達は3番手の3万トン級戦艦を狙うわ。魚雷戦用意!」


ミャウシア海軍の潜水戦隊がグレースランド軍艦隊に対し、魚雷攻撃を加える。

発射された魚雷のうち1本がグレースランド海軍の超弩級戦艦の艦底に到達すると爆発した。


この魚雷は磁気信管魚雷であり、まったく装甲のない艦底に入り込めれば通常の表層航行と違い爆圧が艦底以外に逃げ場がなくその破壊力は通常の2倍以上に達する。

この一発は致命傷になった。


弾薬庫を吹き飛ばしたため砲弾に誘爆して船首側の甲板から巨大な黒色の爆煙が拭き上げた戦艦は急速に沈み始め、多数の乗員が海に飛び込んで脱出を図る。

それを潜望鏡で見ていた艦長は尻尾をピンと伸ばしてガッツポーズをとった。



<<グレースランド海軍第4艦隊>>


「第3艦隊が敵の潜水艦のクロスファイヤーポイントに突っ込み、戦艦ウォードックを撃沈されたそうです」


「言わんこっちゃない。これでは消耗戦だ。今ならまだ退却できるんだぞ」


第4艦隊司令官はこの作戦に相当不満がある様子だった。

彼自身は講和派で王女に内通する人物の一人だった。


「司令、所属不明の暗号通信が入りました。閣下がおっしゃった特定のイニシャルのものを抜粋したものです」


「見せてくれ」


艦隊司令官は暗号の書き写しを貰い受けるとメモ帳を取り出すと通信の内容と照らし合わせる。

すると先程までの険しい表情が明るくなると部下に命令する。


「すぐに打電してくれ」



<<ミャウシア海軍旗艦>>


艦内を3人の訪問者が兵士達に連れられて歩いていた。

そのうちの男女二人はあまりにも狭くて天上の低い通路に難儀していた。


「いくら何でもこの天上は低すぎる...」


「さすがの私でも屈まないといけないのは...」


ミャウシア人の平均身長は140cmであったためミャウシアの船は全てそれを基準に作られている。

だから170cm程度ある王女と少佐では天上に頭が付いてしまいそうになるほどの小さい通路しかないのだ。

まるで小人の国に迷い込んだようだった。

それをチェイナリンは申し訳無さそうに見ていた。


「でも悪くはないかもです...」


王女は通路には不満があったがそれ以上に満足なことがあった。

艦内はミャウシア兵がそこらじゅうにいる。

多様な容姿をしていて小柄で皆見た目が非常いい。

可愛い物好きの王女には目の保養になっている様子で、特に全体の3割を占めるミャウシア人男性は総じてショタっぽいことから明らかにそっち系の目で見ていた。

見られたミャウシア兵は「え?」と言いたそうに困った顔をする。


だがそんな王女を兵士たちがボルトアクションライフルの銃底で押して立ち止まらせないようにする。

さすがの王女も少し冷静になった。


三人は艦橋に入るとニャマルカム大将と参謀が3人を見ていた。

そして両者は今後を大きく左右する話に入るのだった。

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