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アルカディアンズ 〜とある世界の転移戦記譚〜  作者: タピオカパン
猫の国の動乱
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海峡の出来事1(挿絵あり)

<<バクーン>>


ミャウシア海軍とバクーン全軍の攻防戦が火蓋を切って落とされた。

ミャウシア海軍は圧倒的な航空戦力を持ってバクーンへ襲いかかる。


まず十数個飛行隊、数百機の海軍機が半島各所に設営された飛行場から発進する。

ローター音がドップラー効果で甲高く強くなっていき遠ざかると小さく低音になっていく離陸音がとにかく響き渡り続ける。

そして多数の雷撃機や急降下爆撃機が武装を500ポンド、1000ポンド相当の爆弾に統一して出撃していく。

護衛の戦闘機隊も高高度についてそれら爆撃編隊に近づく敵がいないかを警戒する。


そのまま半島を南下していくと攻略目標である海峡が地平線から姿を表す。

そして海峡上空まで来たところでバクーン軍の迎撃機が姿を表した。

それらの迎撃機はずいぶんと高い高度で飛行していたのでミャウシア海軍の護衛部隊は負けじと高度を上げる。

会敵してその姿を見たミャウシア海軍の猫耳パイロットは驚く。

かなりの異型戦闘機でエンジンが後方に付いていて機首に小さな翼の付いたエンテ型戦闘機だった。


「何なんだあれ?」


「バカみたいに速いぞ!」


ミャウシア海軍パイロットたちに混乱が広がる。

最高速度は確実に700km/hは出ていそうな戦闘機だった。

実際最高速度は720kmであり、ミャウシア海軍の艦上戦闘機の620kmを遥かに凌駕していた。

もちろんこれは電気モーターエンジンの戦闘機で小型高出力化に目処が付きそうになかったバクーン軍が発想を転換して開発した戦闘機だった。


とにかく大出力で信頼できるけど大きさは問わないというスタンスで開発された2000馬力の大きなエンジンを搭載しており、速度を稼ぐのと重く大きいエンジンをどうにかするという命題のもとこのような形になった。

ただし旋回能力はそんなに良くはなく、直線番長と言えなくもなかった。

しかもミャウシア海軍に大型爆撃機はいないので小回りの利く雷撃機や急降下爆撃機を狙うのが難しい。

しかし、上昇速度や加速性能は非常によく高速域なら舵もよく利くので攻撃機を襲ってそのまま離脱したり敵戦闘機隊とやり合って囲まれそうならスピードで振り切る戦術にはうってつけだった。


「第1中隊、急降下!」


バクーン軍のエンテ型戦闘機が急降下して一気に攻撃機に迫ると30mm機関砲を浴びせて翼をもぎ取ると攻撃機は失速して落ちていく。

攻撃機が散開して回避するとそれを追わずにそのまま加速していく。

後方にはミャウシア海軍の護衛機の姿が見える。

しかしスピードが違いすぎたせいか追いつけない。


するとミャウシア海軍機の後方に降下しなかった仲間が現れミャウシア海軍機を追い散らす。

中にはラッキーショットで撃墜を叩き出す戦闘機もあった。

バクーン軍機は敵機を引き離すと上昇を始め、また同じような戦術を行う。


初っ端からミャウシア海軍は苦戦してしまう。

だが損害自体はそこまで酷くはなく海峡を渡り終えるとミャウシア海軍機の周りで多数の爆発が起きる。

バクーン軍の高射砲の弾幕がそこかしこで炸裂し、何機かが煙を吹いて落ちていき、目標に到達した部隊は敵の飛行場や施設、砲台へ爆撃を敢行、着実とダメージを与えていく。


そしてミャウシア海軍が第二陣の部隊を出撃させる。

もちろん第三波、第四波まである。

艦隊決戦にすら持ち込めないバクーン軍は早々にジリ貧だった。


挿絵(By みてみん)


<<バクーン軍司令部>>


狸のような耳や尻尾を持った種族であるバクーン人の見た目は多様である。

なんというか見た目の面白みや民族性のある身なり、体格の個人差が大きいのもあってか少しカオスさもあるなんとも言えない人達だった。


だがそんな彼らも猫耳種族ミャウシアの空前絶後の物量に押され意気消沈だった。


「第11飛行場、ほぼ壊滅です。ヴァルハマナ地域の飛行場も軒並み叩かれ使用不能です。今復旧作業に入っていますが既に敵の二波、三波が迫ってきています」


「だめかぁ」


「地球人の奴ら、秘策があるとか抜かしておいてまだ何もしていないのか?どういうつもりなんだ!」


「作戦海域に到達しだい攻撃を開始するとの連絡が入っています。まもなく攻撃を開始するそうです」


「この状況本当にどうにかできるのか?」


「かけるしかないだろう」


「....」



<<ミャウシア海軍野戦飛行場>>


大勢の猫耳整備員が機体を搬入したり、搬出したり機体に潜ってスパナやドライバーなどの工具で戦闘機や攻撃機を整備していた。


そんななかサイレンが鳴り響き始めた。

皆、動転したように激しく動き回り始めた。


「敵襲!」


しばらくすると滑走路で大きな爆発が相次ぎ、巨大な穴が出現する。

上空を見ると微かにだが航空部隊が上空を通過するのが見える。

高射砲による弾幕が展開し始めるも届いている様子はなかった。


「くそ!奴らか!」


それはアメリカ海軍のF/A-18Eスーパーホネットの編隊だった。

海峡から数百km離れた大洋上をアメリカ軍艦隊、イギリス軍艦隊、フランス軍艦隊で陣形を組んで航行していた。


「目標の破壊を確認。引き続き攻撃続行」


「スイート1、2、発艦します」


F/A-18Eが2機がタイミングをずらして蒸気カタパルトによって加速してニミッツ級航空母艦から発艦していく。


ブオオオオオオオォォォォォ!


発艦した1エレメントのスーパーホーネット2機が上昇を始めた。


武装は2000ポンド爆弾などの大型爆弾ありとにかくミャウシア軍の飛行場を使用不能にするのが目的だった。

狙いはミャウシア海軍の戦闘の遅延、停止にある。

同時にミャウシア海軍に余り被害を与えたくない思惑もあった。

ニミッツ級航空母艦の指揮所では将校が話している。


「本当にその子がこの状況を何とかしてくれるのか?」


「さぁな、赤毛のお嬢ちゃんがなんとかしてくれるかもしれない程度の話だが。この写真の子だ」


「ああ、俺の娘と同い年に見えるな。見えるだけで皆成人してると言うんだから驚きだ」


「その手の話だと収容所内で隠れて捕虜を集めて小学生の服を着せたりしたロリコン看守の逮捕者もでるくらいだからな」


「まったくだ。話が脱線しすぎてしまったが、その子がここへ来るのか?」


「それはわからないが上はそれも考えているらしい」


その頃、チェイナリンは欧州連合軍の用意した部屋で取り調べを受けていた。

この時のチェイナリンの服装は病院服であり点滴も受けていた。


「では君はミャウシア陸軍航空隊のパイロットで訳あって処断されて軍を抜け出したということかい?」


「そうです」


「では君は今ミャウシア内で噂されている反政府運動に携わっているのかね?」


「その通りです」


「わかった。じゃあ聞きたいのだけれどこの反政府運動とミャウシア海軍の海峡侵攻に関連はあるかわかるかい?」


「関係があります」


「具体的に聞いていいかい?」


「現在反政府運動に身を投じているのは海軍の首脳部と下野した元連邦政府高官、私を含めた一部の陸軍兵士です。決起の理由は私達の部族、氏族の復権にあります。ご存知の通り連合軍と戦っているのはタルル派以外の他部族で強制的に連合と戦わされている状態です。海軍の海峡攻略はまだ組織として健在な海軍がグレースランド沖合に移動し、連合と戦っている派遣軍と合流してミャウシア南部を占領するという計画にのっとって行われているものなのです」


「なるほど、そういうことか。その計画の長は誰かね?」


「具体的なリーダーはいるわけではありませんが、計画を立案して運動組織したのは私です」


「!?」


欧州連合軍の尋問官が驚く。


「では君がバクーン侵攻を指示したのかい?」


「いいえ、ですが結果としてはそうなります。私は派遣軍との合流を提案しただけでしたがそれには海峡攻略と主力であるグレースランド海軍とバクーン海軍の撃破が不可欠でした。できるなら話し合いで通してもらえればと思っていましたがそれでは不確実さとクーデター政府に動きを察知される恐れがあるので、海軍上層部は実力行使で打破しようと試みたのだと思います。ですがクーデター政府には動きを察知されてしまっています」


「では戦うのは本望ではないと?」


「私も海軍もそうです」


「和睦を提案すれば乗ってくれるのかい?」


「条件次第ですが恐らく乗り気はあるはずです」


「ちなみにだがその計画が成功してミャウシアに正当政府を作れたとしたら君たちは我々とどのような関係であるつもりだい?」


ここで尋問官が語気を強める。


「私の一存で決められるものではありません。ですが私なら共存協和の道を歩んでほしいです。暴力が支配する世界を拒んでの蜂起ですからそれが前提であり理想です。この戦争はあまりに無益で、私達は潰し合いをしているような余裕はありません。そうでしょう」


「そうか、少し待っててくれ」



尋問官が部屋を出ていくがしばらくしてまたやってくる。


「軍司令部や政府から直通の電話が来ている、出られるかね?体調が回復しているのであればすぐにでも海峡の来てほしいが...」


「喜んで」


そう言うとチェイナリンは席を立ち部屋を出た。

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