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アルカディアンズ 〜とある世界の転移戦記譚〜  作者: タピオカパン
猫の国の動乱
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蜂起と本格侵攻の準備2

<<欧州連合軍最高司令部>>


最近の流れから庁舎を更に増設し本格的な統合司令部へと拡張されつつある欧州連合軍の最高司令部ではあらゆる軍事オプションについて検討がなされていた。

とりわけ今はバクーンをどうするかだった。


「通信傍受や元ミャウシア軍捕虜の協力者による密偵でミャウシア海軍は窮地に立たされていることはわかっていますがこの外征で立場を本当に確立できると本気で考えているのでしょうか?」


「何か裏がありそうですがそれはクーデター政権に対する反逆なんでしょうかね?ミャウシア陸軍の遠征部隊と繋がりは?」


「今のところそのような動きはありませんが無いとは断定できません。そこまでヒューミントもシギントもできませんから」


「この際外交的にミャウシア海軍を味方につけられないか?」


「味方に引き入れるのか?だがそれでは彼らには祖国がない状態になる。我々では面倒を見きれないしそんな条件望まないだろう」


「何か引っかかるな」


「それよりまずは海峡封鎖をどうにかすべきだろう」


「開戦までにこちらの戦闘機部隊の配備は間に合いそうにないのがなあ」


「アメリカ軍の空母打撃群はどうだ?明後日にはフランスに入港する。アメリカ政府に打診して参戦を即すのは。それなら防衛計画を建てようがある」


「我が軍のクイーンエリザベス級さえ稼動状態にあれば」


結局決め手にかける欧州連合も後手に回らざるを得ず、防衛計画の策定にこぎ着けずにいた。。



<<ミャウシア陸軍前線司令部>>


派遣軍は主に欧州方面軍とグレースランド、ザイクス方面軍の二手にわけられていて、欧州方面軍は牽制部隊で主力は後者である。

派遣軍はタルル派以外の人員で構成されていて指揮系統に関してはそのままだが意思決定を行う司令部はタルル派が牛耳っていた。


「わざわざ総参謀本部直属部隊の将校が使いで来ると聞いたから身構えてしまったのになんなんですかあなた?まさかネニャンニャ族の小娘とは」


「ご希望似添えず申し訳ありませんがそれより司令部からの通達です。全軍に進軍を指示してください。書面はこちらです。」


「他のものに持ってこさせろ」


「それ以上反論するのであれば与えられた特別権限で准将、あなたを更迭できますがいかがなさいますか?」


「ちぃ」


前線司令部に来ていたチェイナリンは噛み付いてきたタルル派の指揮官の反応を無視して命令書を手渡す。

今回チェイナリンたちは総参謀本部からの命令の伝達と陸軍航空部隊統率のための配置転換で前線へ着ていた。

チェイナリン達の計画には好都合だった。


「隊長、こんな感じで皆顎で使われてるようですけど本当に大規模に裏切らせる事なんてできるんですかね?」


「やってみなきゃ」


チェイナリンはミラベルのぼやきに正直に答える。

すでに海軍が自分の提案した計画に基いて動いたことを知っているだけに今更できませんでしたなんてことには絶対させないと思うのだった。



<<ミャウシア陸軍省>>


ニー参謀総長の執務室でいつもの二人が談義していた。


ニー参謀総長は懐中時計を見ながら呟く。


「そろそろ派遣軍が派手にドンパチを始めた頃だね」


前線では大規模な戦闘が始まっていたのだ。


「それにしても海軍の人達何を考えてるんだかねえ。今更タルル将軍が機嫌良くするはずないのに功績作りを始めちゃって」


「敵に寝返るとか南部の構成国を占領するのが目的ならわからなくもないですが」


「だとしたらまず無理だろうね。寝返るのは彼らも考えないだろうし占領するには陸戦隊の数が足りない。狙いはもっと別だよ。派遣軍とグルになって南部を強襲する線はありそうだけど彼らには交渉役になりそうなキーマンがいないのがね」


「しかも南部の解散した自治政府の元メンバー達の秘密組織の動きも活発です。その強襲の線が正しいなら明らかに何か繋がっている」


「多分繋がってるよ。問題は首謀者が誰なのかさ。今日諜報部から報告書が届くことになってるからすぐにわかるよ」


トントン。


ドア叩く音がする。


「噂をすればなんとやらだね」


入ってきた士官が報告を行う。


「失礼します。調査資料をお届けにあがりました。こちらです」


士官が資料を提出する。


「ご苦労さま。下がっていいよ」


「はっ」


士官は部屋を出るとバタンとドアを閉める。


「どれどれ」


ニーは封筒を開けて中に入っている資料に目を通す。


「!」


まず最初に目に入ったのは南部の秘密組織の資料で、それにはゥーニャの写真が添付してあった。


「おやおや、そんなところで何してるんですか元書記長。これは偶然じゃ無さそうだね。さて海軍の方はっと」


開けた封筒から海軍に関する資料を手に取る。

それにも写真が添付されていたがこちらにも見覚えのある人物たちが映っていた。

しかし参謀総長の表情はどんどん険しくなっていった。

それはチェイナリンの部下達が映った写真だった。

ここに来て参謀総長は一連の流れの首謀者が誰なのかを悟った。


「やってくれましたね。やっぱりあの時片付けてしまうべきでしたよ。根っこがまっすぐなやつを引き入れるのは相応のリスクが伴うということですか」


「参謀総長。まずい事態でも?」


「少しね」


ニー参謀総長は電話機の受話器を取り電話をかける。

交換局員とやり取りしたあと目的のところに電話がつながる。


「もしもし、参謀本部総長のニー・マリステル中将だ。...ああ、他言無用で頼む。今、うちの要員が出向いていると思うんだが、至急逮捕しろ。...そうだ、フニャン中佐とアーニャン大尉だ。生死は問わない、抵抗する場合は始末しろ。以上だ」



<<ミャウシア軍前線>>


チェイナリンは各部隊の指揮官や司令部要員にアプローチを試みるも派遣軍を組織的に反逆させるという当初の計画が難航していた。

指揮系統は既存の部隊編成のままだが命令系統が想像以上にタルル派にチェックされていて師団や軍団単位でどうこうさせるのが難しく、それより下の連隊別でアプローチするのは数が多すぎるし連帯性にかけるので現実的ではなかった。

師団や軍団単位で離反の動きがあれば怒涛の勢いで他の部隊も追従するかも知れないだけに確実にそこは抑えておきたかったが上を抑える人達もそれくらいの対策はちゃんとしていたのだ。

計画は暗礁に乗り上げた。


「どうしますか、隊長?このままじゃ」


「わかってる」


ミラベルの質問にチェイナリンは明確な答えが出せない。

なんとかするしかないが妙案が思い浮かばない。

そうこうしているうちに配属先の部下が声をかける。


「中佐、出撃命令が下りました。いつもどおりですが今度は総攻撃です」


「わかった。すぐ行く」


チェイナリン達は駐機場に急ぐ。

そこには一個航空団に属する3個飛行隊150機以上のレシプロ戦闘機が暖気運転を開始して出撃準備を整え待機していた。

パイロットたちが集まり続々と搭乗していく。


チェイナリンは中佐なので1個飛行隊の隊長であり3個飛行中隊、50機程度を指揮することになる。

チェイナリンの合図のもと、飛行隊の全員が戦闘機に搭乗し始める。

そして戦闘機達は続々と滑走路に侵入するとランディングを始め離陸していくのだった。


チェイナリン達の飛行隊に配備されているのはNYA-1B戦闘機であり、今まで乗っていたNYA-1A戦闘機と比較するとキャノピーがファストバック式から水滴型に変更され、強化された水冷エンジンにより最高速度は585km/hから630km/hになった。

ただしNYA-1P戦闘機も低中高度向けの機体でなおかつ速度でもグレースランド軍やザイクス軍のレシプロ戦闘機より速度が遅かった。



<<グレースランド国境付近>>


グレースランド軍は国境から50km先の外地に絶対防衛線を構築し徹底抗戦の体制を整えていた。

またミャウシア軍同様に新型装備を順次ロールアウトして投入していた。

空軍機もそうだが陸上でも国境線に配置された45トン級D58中戦車がそれであった。

75口径80mm砲を搭載した傾斜装甲の戦車である。

ミャウシア軍のパウツ中戦車やグーレースランド軍のD42中戦車やB28重戦車を圧倒する火力と装甲を有しており、彼らの技術水準からすればイギリスのセンチュリオン戦車出現に等しかった。

しかしミャウシア陸軍も新型中戦車を投入していて機甲戦で絶対有利を確保するほどではなかった。


前線では多数の犬耳の兵士が塹壕に入って戦闘体制を整えていた。

ミャウシア軍が攻略を遅延させている間に大規模な徴兵制を実施して陸軍の総兵力は60万人まで拡大おりザイクス軍も80万まで増えていた。

だが現役志願兵300万で攻めてくるミャウシア軍には到底数でも練度でも敵わなかった。

唯一士気だけは圧倒してるのが救いである。


「上空を空軍が通過していきます」


前線上空、高度5000mを白い筋の雲を無数に伸ばしながらグレースランド空軍の戦闘機が通過する。

そして真っ直ぐだった白い雲の筋達が反対の方角から伸びてくる白い雲に近づくと一気に蛇行していく。

航空部隊の戦闘が始まった。


戦闘は一気に拡大する。

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