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アルカディアンズ 〜とある世界の転移戦記譚〜  作者: タピオカパン
猫の国の内戦(中編)
135/136

タヌキの戦線3


アルダキア内陸の要塞周辺


「撃てぇ!」


バクーン軍の砲兵隊が70mmクラスの野砲を用いてアルダキア軍の防衛陣地に一斉砲撃を行っていた。

時折、旧日本軍の一式陸攻に似た爆撃機が空爆したりもする。

しかし、それでも効果は薄いようで要塞はビクともしていない。



アルダキアの主要な沿岸地域を制圧したバクーン軍は内陸へと進軍したものの、第一次世界大戦的な戦術思想から脱却しようとするアルダキア軍が重厚な塹壕陣地からなる防衛拠点やあらゆる地形や隠蔽を駆使したゲリラ戦術を実践したため、各地で激しい消耗戦を強いられた。

そこでだいたいの戦略目的を既に達成していたバクーン軍はアルダキアに部隊番号が数十番台の予備役や徴集兵からなる歩兵師団群を残し、重装備の主力部隊を更に東方の国へと同じように投射した。



アルダキア王国東方の国アシリアの平原


アルダキアの東にはアシリアという国が隣接していた。

この国の構成種族はミャウシアやグレースランド、バクーンなどの亜人種より更に特殊だった。

それは上半身がヒトで下半身が馬の胴体といういわゆるケンタウロスのような亜人をヒトが統べるという風変わりな種族構成と社会体制をしていたことによる。


ケンタウロス用の軍服を着た女性だけで構成されたケンタウロス兵数十人が隊列をなしてステップ気候気味の大地をちょっとした土煙を立てながら小走りで走っていた。

ケンタウロスたちは下半身の馬の背中に多数の荷物を乗せたり吊るしたりして積載している。

どうやら物資輸送が彼女たちの任務のようだ。


そこへバクーン軍のプロペラ戦闘機が現れた。


遠方の空にバクーン軍の航空機がいることに小隊の隊長の女性が気づく。


「敵の航空機だ!隠れろ!」


部隊のケンタウロスたちは直ちに散開して周囲に点在する低木やまりもの様な雑草の塊に寄り添うように隠れた。


そして上空を2機のバクーン軍の戦闘機編隊が通過する。


やり過ごせたとケンタウロスたちがほっと息をついた時、通り過ぎた2機の戦闘機が遠方で旋回を始めた。

どうやらバクーン軍のパイロットは散開する前のケンタウロス兵の隊列を目撃していたようだ。


バクーン軍の戦闘機が周囲の茂みに機銃掃射を行った。

機関銃の弾によって一直線に土煙が舞う。


茂みに隠れていたケンタウロスの女性は体から血を流してぐったりしている。

大きい体なので口径が12mmクラスの機関銃弾が2発も命中して絶命していた。


過ぎ去った戦闘機編隊は遠方でまた旋回する。


ケンタウロス兵たちは物陰に隠れつつ手持ちの武装で反撃を始めた。

ケンタウロス兵たちは7mmクラスのボルトアクションライフルを基本装備としつつ、ドラムマガジンを装着したルイス軽機関銃に似た機関銃を火力支援火器として装備していた。


ケンタウロス兵たちは死に物狂いで小銃を撃ってはボルトを動かして次弾を装填する。

火力支援担当兵もこの手の機関銃では珍しくフォアグリップが装着されているのでこれを握って力任せに10kg以上ある軽機関銃を持ち上げて敵機に向けて撃ちまくる。


戦闘機に数発の銃弾が命中したものの大きな損傷を与えるに至らなかった。


戦闘機編隊は再度機銃掃射して二人のケンタウロス兵を射殺した。


小隊長のケンタウロス兵が手を使って口笛を吹く。

一人のケンタウロス兵が小隊長のものとに走って駆け付ける。


小隊長は無理難題を押し付けたのか駆け付けた兵士が引きつった表情になる。


そんな中、敵の戦闘機がドップラー効果音を轟かせて戻ってくる。


「今だ、行け!」


小隊長の掛け声に覚悟を決めた兵士が小銃を両手で抱えたまま戦闘機の進行方向に対して垂直方向に全力疾走する。


戦闘機は気を取られて照準器をその兵士に向け発砲する。

兵士の後ろを着弾の土煙が追いかけるように音を立てて吹き上がる。


その間に兵士たちが戦闘機に銃撃を続けた。


走っていた兵士は何とか無傷で走りきり、呆れたとも信じられないと言いたげな表情をしていた。

一方の戦闘機側は銃弾を食らいすぎたのかわからないが再攻撃をせずにそのまま飛び去る。


部隊は戦死者を特定の場所に安置すると直ちに隊列を組み直して目的に急ぐように移動する。

同隊は数時間後に目的地の小都市に到着し、友軍に運んできた物資で補給した。



バクーン軍はアルダキア同様にアシリアに対しても上陸侵攻を行って首都や沿岸地域の相当部分を制圧した。

アリシアの国軍は第一次世界大戦レベルの戦術思想を持つアルダキア軍より更に十数年程度古い戦術思想を持っていて、アシリアの特徴であるケンタウロス騎兵とヒトの歩兵による突撃戦法を主体としていたが、多数の重機関銃を用いるバクーン軍相手には全く通用せずに初戦で大損害を被ていた。


しかし、バクーン軍はここでも短期決戦に失敗した。

アシリアもアルダキアと同じように徹底抗戦を選択し、いったんバクーン軍の圧力が強い地域から遅滞戦闘を行いつつ後退して戦線を整理すると内陸部で籠城するように持久作戦を展開する。


アシリア軍はそれまでのケンタウロス騎兵や歩兵による敵主力への突撃戦法は無駄であると結論付け、陸路で繋がっているアルダキアとの情報交換で戦術を急速にアップデートした。

敵の敵は味方ということらしい。


ヒトの歩兵は攻勢の際は浸透戦術を行い、塹壕戦や機動部隊対策の遅滞戦闘、ゲリラ戦の導入を行う。

また、ケンタウロス騎兵も兵站部隊、砲兵隊や戦闘工兵の足、ヒトの歩兵部隊の機動支援により重きが置かれ、その機動力を最大限有効活用する運用がとられた。


一方で当のバクーン軍ではアシリア軍の戦闘能力は高くない見てアシリアにはそこそこ戦力を侵攻させつつ更に東の国、クシュメールという国にもあまり時間を空けずに侵攻を行っていた。


そしてこちらの侵攻作戦は大失敗に終わっていた。



クシュメール共和国沖合


ヒトが操縦するF4Uに似た逆ガル翼のプロペラ戦闘爆撃機の編隊とF-86に似た戦闘機の編隊が時限信管によって空中炸裂した砲弾の黒煙が舞っている洋上上空を飛行していた。

プロペラ戦闘爆撃機は主翼の下に50kg以上の重量があるロケット弾を複数発搭載している。


その下の海上ではバクーン軍の機動艦隊の航空母艦2隻が炎上しながら回避行動をとっていた。


バクーン軍はこの国の偵察に何度か失敗して偵察機を失うなどしており、相応の技術水準にあるとみていた。

そこで直接上陸は断念したうえで国境から100kmほど離れたアシリア領に主力部隊を上陸させ、そこから陸路でクシュメールへ侵攻することを選択した。


また、侵攻直前に特定した軍事施設に対する空襲を行って敵の妨害を阻止しようとした。

それがバクーン機動艦隊による本土襲撃だったのだがこれは見事にクシュメール軍に防がれると同時にカウンター攻撃を決められてしまっていた。


バクーン軍は仕方なく地上軍によるゴリ押しを決行するがこれも散々な結果となる。



アシリア領国境の砂漠


バクーン軍の戦車師団がクシュメール国境に向けて砂丘のほとんどない礫砂漠をとろとろと疾走していた。

その後方を多数の歩兵連隊や歩兵師団群が必死に追いかける構図となっている。

戦車師団とはいえ、工業力の乏しさから旧日本軍の一式装甲兵車に似た兵員輸送車が一定数いるだけで突撃の際は相当数の歩兵には走ってもらう必要がある。


ある程度の備えがある軍団であれば対処は十分可能な戦力だ。

ところが待ち構えるクシュメール軍の戦力はどんなに多く見積もっても2個師団程度の戦力しかなかった。

けれどもバクーン軍はひどい目に合わされた。


まずはクシュメール軍のF4Uに似た戦闘攻撃機と航空爆弾で爆装したF-86似の戦闘機からなる十数機が襲い掛かってきた。

命中精度は低いので割と攻撃は外れているがそれでも数両の九七式中戦車似の歩兵戦車が木っ端みじんに破壊された。

その後も断続的に航空攻撃を加え続ける。

逆にバクーン軍は前線飛行場を空爆で叩かれ続けていたうえにプロペラ戦闘機は敵機を全く捕捉できないのでやられ放題だった。


30両以上の戦車が破壊され、隊列が乱れたところで待ち構えるクシュメール軍の地上部隊と衝突した。

クシュメール軍の戦車はオーストリア軍のSK105キュラシェーアに似た軽戦車でバクーン軍の戦車と大した重量差はないのだが地球でいうところの第一世代主力戦車と同等の戦闘力を持っている。


よって一方的な砲撃戦となり、ほぼアウトレンジで叩かれ続ける。

戦場のクシュメール軍はせいぜい2個戦車大隊規模の機甲戦力しかないのだが数個戦車大隊で攻めてくるバクーン軍を押しとめ続けた。


機甲部隊による中央突破は早々に突破困難と見たバクーン軍は大きく勝る兵力を利用して両翼を伸ばして半包囲による敵の後退狙う。


しかし、クシュメール軍は少ない兵力を迅速に割り振り、両翼の各戦線にそれぞれ2個戦車中隊と2個砲兵大隊、2個歩兵旅団を配置して少数ながら強固な防衛陣地を即席で作り上げる。

数日してクシュメール軍は全軍から捻出した1個歩兵師団と1個砲兵旅団、1個戦車大隊の増援を戦地に送り込み手薄なラインの守りを更に固めた。


戦闘は二週間続いたものの、クシュメール軍の絶対防衛線を全く動かせないまま大量出血を続けるバクーン軍は戦死傷者の増加に加えて現地の水源不足や補給不足による飢餓や戦病者の激増にも苦しんで根負けし、国境線から退却を開始した。


ここら辺の種族やら国は設定は見切り発車も多いので後で改定するかもなのですいません。

ある程度状況把握回やってヒミカとかの話挟んでミャウシアVSバクーンやったらまたミャウシアに戻します。


イメージの補足として再掲載

次の話とかで本文に挿入するかも


戦況図

挿絵(By みてみん)


ケンタウロス兵のそれっぽいイメージ

挿絵(By みてみん)

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