タヌキの戦線2
ドワーフのような見た目の種族の国、アルダキア王国の首都から100km離れた方南の海岸
先の海戦や空襲から数日経ち、バクーン軍は本格的な本土侵攻作戦を発動していた。
旧日本軍の艦艇に似た水上戦闘艦や輸送船が水平線上に展開しているのが大陸側から見渡せる。
海岸では旧日本軍の大発動艇に似た多数の上陸用舟艇が砂浜に着岸して歩兵を揚陸させていた。
この海岸にはほとんどアルダキア軍は展開していないようでバクーン軍はほとんど抵抗を受けずに上陸できた。
というより敵前強行上陸できるような重装備がないので敵がほとんど配置されていない首都遠方に上陸するしかなったというのが正確だ。
とはいえ、無抵抗で済まなかった。
洋上に展開していた水上戦闘艦のうち、軽巡洋艦が機雷に触雷して巨大な水柱の発生と同時に爆発炎上した。
軽巡洋艦はダメージコントロールの甲斐もなく、数十分後に沈没した。
その後もバクーン軍は上陸作戦を継続し、この地点に数万人規模の兵員を上陸させた。
一方のアルダキア軍は内陸に何重にも防御線を張り巡らせており、第一次世界大戦レベルの国の軍隊とはいえ、生半可な攻撃ではビクともしい体制を構築していた。
けれどもバクーン軍とアルダキア軍の決定的な差は航空機の性能差もさることながら機械化部隊の有無だった。
バクーン軍は第一上陸地点の地上軍がアルダキア軍に取り囲まれたのを見計らって数十キロ離れた東の海岸にも上陸して第二の橋頭保を確保する。
こちらにはバクーン軍のなけなしの機械化部隊を上陸させており、機動戦を画策しているようだ。
第一上陸地点の3個歩兵師団がアルダキア軍の防衛陣地と小競り合いをしている頃、第二上陸地点のバクーン軍は1個戦車師団の陸揚げを完了次第、進軍を開始した。
九七式中戦車に似た歩兵戦車の中戦車からなる戦車隊は急遽包囲網を作って対抗しようとするアルダキア軍のスカスカの防衛線を突破する。
防衛線の裏は第一上陸地点への増援によって予備戦力がほとんど残っておらず、バクーン軍の電撃戦を妨害する手段がない。
もちろん戦力がないわけではないが周囲には徴集兵からなる軽歩兵師団が点在するだけのでバクーン軍の戦車師団をどうこうするのは困難だ。
バクーン軍は電撃戦の要領で1日20km以上の進軍を続け、アルダキア首都南方をハサミで裁断するように横断する。
上空ではバクーン軍のプロペラ戦闘機が制空権を確保するように飛び回っていた。
数日後には首都南方の大河に到達する。
この頃には第三の上陸地点が大河西方に確保されており、さらに数日後になってこちらの上陸部隊も大河まで到達した。
この機動戦によって首都周辺の100km圏がバクーン軍によって完全包囲された。
とはいえさすがのバクーン軍も物資や兵員の都合上、完全に息切れの状態にあるので包囲が完成したもの、以降は本国からの第二陣ともいうべき増援や物資が到着するまでは惰性で小競り合いを続ける。
それから数週間後、アルダキア軍の首都防衛軍20万は抵抗らしい抵抗ができぬまま締め上げられるように包囲網が狭まり降伏に至った。
これでバクーンによるこの国を平定がなったのかというと、ここがバクーンの最大の誤算だっった。
なぜならアルダキア軍は各地に戦力を分散させていたので首都防衛軍が消えたとしてもまだ過半数の戦力が残っていたのだ。
そして首都を脱出したアルダキア政府が徹底抗戦を選択したことで圧倒的戦果によって士気を挫いて短期決戦に持ち込みたかったバクーン軍を困らせることになる。