飛行場の奪取2
降下した空挺部隊や一部の特殊部隊は敵の増援がミゥボロスク飛行場に入るのを阻止するために飛行場の南側に防衛線を張っていた。
別の言い方をすると飛行場の敵と増援の敵に挟み撃ちの状態になったともいえる。
こういう場合、進出したばかりで防衛陣地を持たない軽歩兵は敵部隊に囲まれた挙句に榴弾をバカスカ撃たれてじり貧にになるのがオチだが、そんな無計画の元で空挺部隊を敵地に放り込んだわけではない。
ミゥボロスク飛行場周辺
ナナオウギたちの特殊部隊は飛行場を防衛するために内陸から送り込まれた敵部隊を待ち伏せするために飛行場の南側にあって大河に流れ込む中規模河川の南側の対岸の雑木林に潜んでいた。
反政府軍の歩兵部隊が雑木林の中を警戒しながら進んでくる。
シモンなどは早々に小銃のタンジェントサイトを敵に合わせていた。
そしてタイミングを合わせてナナオウギたちは一斉に攻撃を開始する。
激しい銃撃戦になるがやがて待ち伏せ側で尚且つ火力でも勝るナナオウギたちは敵を押し出しながら肉薄する。
そして障害物越しにフランス軍のレモン型手榴弾を投擲したりもして反政府軍部隊に大打撃をを与えて敗走させた。
「よし。いったん引くぞ」
ナナオウギは隊長からの指示をミャウシア語に変換して猫耳の女性兵士たちに指示する。
「追いかけなくていいんですか?」
ミーガルナがナナオウギに質問する。
「相手は斥候だ。追いかけても無駄無駄。しかも、逃げたやつらは砲兵隊に俺たちの居場所をチクるからもたもたすると砲弾が頭上に落ちてくるぞ」
「やば」
ミーガルナは状況を理解して味方に合わせて後退を始めた。
ナナオウギたちが河川にかかる橋まで後退したあたりで反政府軍の77mm砲や121mm砲の砲弾が雑木林に落下し始めた。
けれどもあまり精度がない様子で散布界はかなり広かった。
だがまぐれ当たりを考慮しないといけないのが砲撃のいやなところだ。
ナナオウギたちは砲弾を搔い潜りながら橋を渡って友軍の空挺部隊の防衛陣地に逃げ込む。
防衛陣地は塹壕などではなく小規模な蛸壺が点在する簡易な陣地だった。
中には携行式のスコップを使って現在進行形で蛸壺を掘る空挺部隊の兵士も見受けられる。
ナナオウギの特殊部隊は空挺部隊の掘った蛸壺にいったん隠れる。
ナナオウギはミーガルナとシモンの3人で狭い蛸壺に入った。
ナナオウギはトラ髪美少女の二人に囲まれている状態に少しだけほほを赤らめる。
やがて空挺部隊のいる地点にも反政府軍砲兵隊のめくら撃ち砲撃が着弾し始めた。
反政府軍は偵察部隊を送り込んでもひどい返り討ちにあってなかかな敵の位置を割り出せないことからテイトウな砲撃に終始しているのでそうそう当たらなかった。
とはいえ一部の砲弾は野ざらしにしてあった物資に直撃して引火するなど戦場らしい火災の光景を映し出した。
しかし、砲弾の落下が少し続くがやがてぴたりと止まる。
その頃、ナナオウギたちを砲撃していた反政府軍の砲兵隊はNATO軍の偵察機に居場所を特定されたために航空部隊から執拗な空爆を受けていた。
F/A-18Eスーパーホーネット艦上戦闘攻撃機の編隊はレーザー誘導爆弾を用いてカノン砲や野砲の一部を破壊すると一定程度の航空優勢を確保していても敵の防空システムを警戒して一撃離脱するように上空を全く旋回せずに即帰還した。
反政府軍の砲兵隊はNATO軍に居場所を悟られないよう、慎重に前線に移動していた。
けれどもいくつかは移動中にバレて破壊され、砲撃時には隠ぺいを解く必要があることと撃てば対砲兵レーダーが使われてなくてもカウンターのために待機しているNATO軍に早々に察知され反撃を食らう。
そのため空挺部隊は反政府軍からアウトレンジ攻撃をほとんど受けていない。
橋頭保や海に近いから可能なことだ。
その程度には空挺部隊にアドバンテージを与えてた。
でなければ先に指摘したように軽歩兵の空挺部隊は重武装の敵に揉みくちゃにされて壊滅しかねないからだ。
砲撃がやむとナナオウギたちは急いで補給し、また敵に対してヒットアンドランを繰り返して味方の主力である空挺部隊の防御態勢の構築の時間稼ぎに助力しようとする。
けれども敵はらちが明かないと見て威力偵察や砲兵隊による前線に対する風穴開けを抜きにし、主力の数個歩兵連隊を前進させ力押しで突破する戦術に切り替えたようだ。
そこで空挺部隊は敵の主力部隊がすぐそこまで来ているという情報を受けて小橋に爆薬を設置する作業を行う。
「今度は敵の大群がお出ましか。まるで薄皮の氷の上にいるみたいで正直キツイな」
ナナオウギは爆薬の設置作業を護衛する傍ら、なかなか厳しい現状を仲間に聞かれないよう日本語でぼやく。
ぼやいた後、ナナオウギはミーガルナとシモンを見た。
二人は同僚のミャウシア兵の助言を聞きながら道端で鹵獲した対戦車地雷十数発や数発の60mm迫撃砲弾を橋の構造的に一番弱い部分に括り付ける作業を行っていた。
ほかのミャウシア兵と違って二人は兵卒程度のスキルしかないのでこういった作業は見様見真似で覚えながら遂行する。
二人以外のミャウシア兵たちはあらゆる訓練を受けたオールラウンドな技能兵であることから爆破作業にも心得があるようなので工兵が少ない空挺部隊側がお願いする形で爆破作業を担当してもらっている。
ナナオウギたちは偵察が専門の特殊部隊なので工兵作業のスキルはそこまでではないのでお任せするしかなかった。
特殊部隊は誰もが何でもできるわけではなく、そういう博士号でも持っているようなかの如く何でもできる兵士は本当にごく一部だけになっている。
敵と会敵する前に猫耳の女性兵士たちは爆薬の設置作業を終えて橋を爆破した。
爆破後にナナオウギは二人を見返す。
ミーガルナは達成感に満ちた表情を浮かべ、シモンも少しだけポジティブそうな表情をとっていた。
ナナオウギはわかりやすいミーガルナとチェイナリンよりは表情に起伏があるシモンを見て、二人には戦死してほしくないなと思いながら早く地上部隊に来てくれという思いを表情ににじませる。
橋頭保とミゥボロスク飛行場の間の平原
アメリカ海兵隊を主力とする装甲部隊がフォーメーションを維持しながら広大な放牧地を走り抜けていた。
戦車長が揺れる戦車のハッチから地平線をを眺める。
すると後方上空を2機のF/A-18Eが爆音を轟かせながら頭上を低空飛行して飛び去って行った。
飛行場の空挺部隊の援護のついでに味方の地上部隊や敵の陣地の目視確認でも行ったのかもしれない。
ここで中隊長が無線で指示を出してくる。
『あと15分で次の防衛陣地に接触する。偵察部隊がすでに交戦中だ。各車、即応態勢に取れ』
「了解」
戦車長は敵陣地がある方向を注視するがまだ何も見えない。
そうこうしていると今度は自分たちを支援するために出撃した数機のAH-1ZやAH-1Wの編隊が斜め後ろ方向の上空からローター音を轟かせながら現れると戦闘機よりはゆっくりとしたスピードで前方斜め方向へと進出していく。
少しして数km先の低空、地平線より少し上の場所で攻撃ヘリ部隊による対地攻撃が行われ始めるのが肉眼でも確認できた。
時間差でほんのわずかだが爆発音が轟いているの耳に入る。
どんどん敵に近づいているのが実感できる。
しばらく走っていると黒煙を吹き出しながら炎上するミャウシア軍の中戦車や駆逐戦車の残骸が現れた。
その少し先には先行していた偵察大隊のLAV-25歩兵先頭車からなる装甲部隊が敵陣地から少し離れたところで停進し、数十人程度の機械化歩兵も降車していた。
反政府軍の戦車を屠ったと思われるLAV-ATもエマーソン製連装TOWランチャーを立てた状態で停車している。
また、数両のLAV-M自走迫撃砲が搭載された81mm迫撃砲を使って断続的に敵陣地に迫撃砲弾を投射していた。
ちなみに主力部隊の砲兵隊の榴弾砲による砲撃支援は既に終了し、移動準備中だ。
よく見るともう少し先には車体がひしゃげたり炎上したりしてないものの大破して鎮座するLAV-25の姿もあった。
見た感じ地雷を踏んで車輪が吹き飛ばされているようだ。
無線交信を聞く限り地雷原にぶち当たってしまったらしい。
ここには地雷原があることは諜報により判明していたが、予想を超える数の地雷を埋設していたようで、偵察大隊のこの偵察中隊は地雷で足止めを食らってしまったようだ。
けれども地雷原に引っかからなかった他の2個偵察中隊はすでに敵陣に接触している。
偵察部隊の威力偵察の報告では敵の対戦車能力は著しく落ちてるからそのまま取り付いていいらしい。
とりあえずはこの地雷原を通過しないと4km先の敵陣にたどり着けないのでマインプラウを装着したM1A1やM1 ABVが前衛に就いて敵陣に向かって突進する。
進み続ける中で対人地雷らしき小さな爆発がプラウの先端で起こるがこの程度なら停止する必要はない。
やがて敵陣がある非常になだらかな丘が有効射程に入るが陣地は稜線裏にあるので攻撃はまだできない。
ほとんど傾斜がない丘を登り終えると敵の塹壕線が姿を見せた。
戦車隊は一斉に砲撃して敵の火点になりそうなところにところかまず砲弾を撃ち込む。
後方からついてきたAAV7から歩兵も降車するが対人地雷の地雷原と思われる陣地手前をのこのこ歩かせるわけにもいかないのでM1 ABVが導爆線のついたロケットを射出して塹壕の一部もろとも地雷原に穴をあけた。
次いでM1 ABVやマインプラウを装着したM1A1が塹壕めがけて地面をえぐりながら突き進むと塹壕の一部を埋め立てるように塹壕の一歩手前で停止する。
反政府軍のミャウシア兵の数人は土を頭にかぶりながら危うくドーザー役の戦車の押し出した土砂に生き埋めにされるところだった。
もはや塹壕から顔を覗かせればブローニング重機関銃やM240機関銃、戦車砲弾すら飛んでくるので反政府軍兵士は反撃を封じられてしまう。
戦車壕に入っていた中戦車や旧式の重戦車も航空攻撃ですべて破壊され炎上している。
隠蔽してあった対戦車砲やRPG-7などの携行式の無反動で反撃する間もなかった。
こうした支援の下で歩兵部隊が塹壕にとりつく。
歩兵部隊による塹壕戦は1時間程度という短時間で蹴りがつき、反政府軍の防衛陣地が陥落した。
地上部隊はここで停止することなくさらに東南東方向へと東進する。
陣形を組み直した装甲部隊はまただだっ広い放牧地を進んでいると今度は1km先の防風林から反政府軍の戦車隊が突如として姿を現してゆく手を阻もうとしてきたのだ。
戦車部隊はほんの少し動揺する。
どうやら偵察大隊にはバレないよう隠れてやり過ごし、主力である自分たちが来たところで厳重な隠ぺいを解いて一矢報いるために出てきたようなのだ。
ある種のゲリラ戦を仕掛けられ少々意表を突かれた格好になった。
先制したのは敵の戦車だった。
敵はまぐれ当たりを期待したのかもしくは先に撃たないと撃つ機会がもうないと考えているのか1km離れたところを移動するエイブラムスに搭載された77mm戦車砲で先制攻撃していた。
数発がM1A1エイブラムスの至近に着弾するが一発も命中することはなかった。
撃った砲弾が地面に着弾し、土煙で視界が一部遮られる。
『敵だ。敵戦車が高速で接近。各車、攻撃開始!』
「方位101!徹甲弾装填!」
「オンザウェイ!」
オンザウェイという戦車長の掛け声の後、砲主は敵戦車に対してAPFSDS弾を行進間射撃で撃ち込んだ。
敵戦車は吹き矢のような砲弾が命中すると弾薬が誘爆して砲塔が空中に飛んでいくほどの爆発を起こした。
敵戦車は次々と120mm砲弾が命中しては炎上する。
数分間の砲撃戦の末、敵部隊はエイブラムス戦車に砲弾を一発も当てられないまま全滅した。
敵部隊を殲滅した装甲部隊はここで停止する。
被害がたくさん出たから態勢を立て直すとかではなく、心もとなくなってきた弾薬や燃料の補給と後方部隊の隊列を整えるのと砲兵隊が榴弾砲を設置して自分たちをカバーさせる時間を与えるのと随伴しているミャウシア政府軍の歩兵を周囲に展開させるために停止する必要が出てきたからだった。
この日の進軍速度は数十キロ/日だった。
前々回、ミーガルナのフルネームがあるのにど忘れて再命名しちゃいました。
すいません。
今回の一部はBF3の戦車パートのパクリです、はい。
というよりやりたかった感があります。
https://www.youtube.com/watch?v=Adn5Jn_rA1M
すいません。
猫耳特殊部隊ちゃん達は後々日本でメイド喫茶したりヤクーザと抗争したりナナオウギがコンクリート詰めになりそうなプロットがありますが尺の都合もあるので没になりそうなならなさそうな。