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アルカディアンズ 〜とある世界の転移戦記譚〜  作者: タピオカパン
猫の国の内戦(中編)
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空挺作戦3


ミャウシア領アルーム平原の農村


空挺降下した混成特殊部隊は周囲を警戒しながらいくら闇の中を移動し続けていた。

できれば夜明けまでに現地に潜入している政府軍の特殊部隊というか工作員と合流したいところだった。


「左舷前方から荷馬車のようなものが接近している。隠れろ」


小声で隠れるよう全員に伝達、直ぐに茂みに低姿勢で紛れた。

相手はどんどん近づいてくるが、よーく見るとただの猫耳の農婦のようで、おそらく鳥の仲間だと考えられるダチョウより大きな異世界の運搬用家禽に荷馬車を引かせて移動しているだけのようだ。


農家が過ぎ去ると部隊は移動を再開する。

しばらく歩き続けるが10~20kmくらい移動すると、レンジャー訓練を受けた屈強な兵士とはいえ地球人より持久力の劣るミャウシア兵達に疲労感が少し見られるようになる。


ジワリと移動速度が低下し、予定合流地点に到達したころには夜明けまでの時間は少なかった。


「予定地点に到達したが時間があまりないな。ところで潜入部隊はちゃんと我々の位置をわかっているんだろうな?ナナオウギ、その猫耳娘達にもう一度聞いてくれないか?」


分隊長がナナオウギにジョークとも不安とも取れない質問を投げかける。


潜入部隊の連絡手段の電信符号は当然、反政府軍もキャッチしている。

最悪、暗号解析されている可能性もあった。

そうした中で潜入作戦用の地図座標の記号はまだバレてないだろうから座標を頼りに合流を計っているのだ。

軍司令部もそれによくゴーサインを出したなとナナオウギは改めて首をかしげる。


「わ、わかりました」


ナナオウギも少し不安だった。


「ちょっと聞きたいんだけど...」


ナナオウギがミャウシア兵達の通訳係なのでダメもとで聞いてみるが、やはりミャウシア兵達も固有の意思疎通手段があるわけではないらしく、本人達もお手上げらしい。


―おいおい...

とナナオウギが思ってしまった矢先、口笛が聞こえた。


隊員たちは小銃を構え直し、スコープを覗いて周囲を確認するが人影を見つけられない。


「こっちだよ」


微かに声が聞こえる。

その声の方向に銃を構え、ハンドサインの指示を出して隊員の一部が前進する。


進んで近づくと物陰に女性の姿があった。

帽子をかぶっているがはみ出している髪を見るとニャーガ族のようなストライプ模様の入ったふんわりショートヘアの女の子のようで、ニャーガ族と違ってオレンジ色のない白黒のストライプなので動物で例えるとホワイトタイガーのようだ。

私服姿でボルトアクションライフルを装備していた。


「あんたらが例の友軍かい?」


ナナオウギ以外のフランス兵はミャウシア語の単語をほんの少し解する程度なので会話はナナオウギが率先して担当する。

補佐ポジションのミーガルナも付き添う。


「そうだ。君は政府軍の潜入部隊だよね?」


「違うけど」


「え?」


ナナオウギはトンチンカンな返答を聞いてついポカンとしてしまう。

混乱してしまった思考を冷静にするとまずはこの人は敵かと考えた。

しかし、敵にしては罠を張っているように見えない。


「あんた、もしかして敵なの?!」


ミーガルナが食って掛かる。


「それも違う。その潜入部隊って人の使いのもんだよ」


―使いかよおおお!


ナナオウギが心の中で突っ込む。


「待って、本人達来てないの?」


「うん。アタイが代理で来た。というより索敵と隠密行動はアタイの担当だし。適任だから行って来いってさ」


「....そ、そうなんだ。あなたは政府軍の人?」


「違う。レジスタンス」


「レジスタンスか」


ナナオウギは渋々納得することにした。


「それでこの後どうするのよ?」


ミーガルナが質問する。


「アタイに付いて来て。隠れ家に案内する」


ナナオウギが仲間たちに事情を説明して部隊は前進を再開する。


しばらく歩いたところでその使いの女の子が左手を伸ばして止まれというニュアンスの合図を送る。

彼女はどこか暗闇の彼方をじっと見つめている。


「あの防風林の下に敵がいる。注意して」


「敵?」


ナナオウギの暗視スコープには確かに右舷遠方に防風林らしき林が映っているがその中に敵兵が居るかはとてもではないが判別できない。


ナナオウギが味方に注意喚起すると隊員の一人がサーマルスコープを取り出して目標付近を確認する。


「確かに人かもしれない微小な熱源がある。いや、動いている。敵だ」


部隊は敵の位置を把握することができた。


「ミーガルナたちはどう?肉眼で見える?」


「うーん、無理」


「あたしもわからない」


―ミーガルナたちでも無理か。良く見つけたな


「少し迂回してもらえるか?」


「わかった」


女の子は少しルートを変えて敵の歩哨をやり過ごすように前進する。

数km進むとアジトとみられる納屋に到着した。

既に地平線の空が明るくなり始めている。


「罠じゃないでしょうね?」


アジトについてそうそうミーガルナがまた女の子に食って掛かる。


「んー、たぶん違うと思う」


そういう性格なのか女の子は返答は始終テキトウな感じだった。

ミーガルナはジト目で睨み納得していない様子だが女の子の方は何事もなかったような涼しい顔を続ける。

特に罠がある様子でもないのでナナオウギとミャウシア兵が先に納屋に入ることにした。


女の子に案内されて中に入り、隠し扉を開けて地下室へと降りる。

地下室には男女二人がいて部屋の真ん中に設置された机の上には地図が置かれていた。


「お待ちしていました。潜入班のミゥーです」


潜入部隊のリーダーとみられる女性がナナオウギ達に挨拶する


「どうも、フランス軍特殊作戦部隊のナナオウギ軍曹です」


ナナオウギが代表して挨拶する。

ナナオウギは危険が無いと判断して外の待機組に無線で安全を伝える。

部隊は警戒要員を屋外に配置して残りは納屋へと入った。


特殊部隊の隊長は潜入部隊のリーダーと話を進めるのにあたってナナオウギが始終通訳する。


机に置かれた大判の地図には反政府軍の配置がびっしりと書き込まれたり駒置きがなされていて、一目で敵軍の配置と戦力を把握できるほどよく調べられていた。

NATO軍としては飛行場周辺の塹壕の配置や蛸壺の分布と実際にどれくらいの兵員がいるのかが最も知りたいところなのでこの情報はとてもありがたいものだ。


「我々がレジスタンスを使って調べた限りでは反政府軍の戦力はこの通りです。レジスタンスがあげてくる情報ですのでゴミも交じっていたりタイムラグがあるので真にこの通りだとは思いませんがかなりいい線だとは考えています」


「正しいかどうかこちらで再確認するとしよう」


隊長は端末を取り出して地図をいくつも撮影する。

隊員の一人がその端末を持って外に出ると持ち運び可能な衛星通信機を速やかに展開して撮影データーを司令部へ送信した。


その後は潜入部隊のリーダーとの話し合いが続き、しばらくして休息となった。

ミーガルナがナナオウギに寄りかかって爆睡する。


ある程度の隊員が仮眠をとる中でナナオウギは案内役の女の子をちらっと見る。

帽子を取っている今だから良くわかるがやはりホワイトタイガーのような髪質でこのタイプのミャウシア人は初めてだ。


「アレが気になるのかい?」


ナナオウギにミゥーという潜入部隊の女性が話しかける。


「あ、いや。あまり見ない容姿の人だなと。ここにいるレジスタンスは彼女だけですか?」


「ああ。ここを知っているレジスタンスはあいつだけだね」


「他には教えてないんですか?」


「まあな。信用ならん輩も多いし、教える必要も無かったからな。それに裏切りで捕まった仲間もいるし。あたしら、前はもっといたんだよね」


「...じゃあ、彼女は?」


「あいつはレジスタンスの中でも信用できるしなかなか使える奴だったから行動を共にする仲間としてスカウトした」


「つまり準軍人扱いと」


「そゆこと」


「なるほど。ちなみに彼女はニャーガ族なんですか?自分は地球人なんでそこのところは良くわからなくて。仲間に聞こうと思ったんだけどこの通り寝落ちしてて」


ミーガルナは耳元の会話にも動じずに爆睡を続ける。


「そのニャーガ族の奴は割かしはまともな扱いを受けてるみたいだね。うちのもニャーガ族で合ってはいるけどその中にも人種や民族の違いがあるからね。あれはヴァンコイニャって民族だよ。あんた自己紹介してないの?」


「...してないかも」


話は聞いていたようでリーダーの質問に彼女は簡素に答える。

けれどもだからと言って話に加わるわけでもなくこっちを見ずにミャウシア軍では全く見られない小銃の手入れを続ける。


「じゃあ、自己紹介しなよ」


「んー、わかった」


彼女はようやく顔をこちらに向けた。


「アタイはシモン、ハミュリハ・シモン。漁師をしてた」


「俺はナナオウギ。よろしく」


「よろしく」


「よかったら色々聞いてもいいかな?」


「別にいいよ」


ナナオウギは何となくシモンの性格を理解し始めていたので会話を途切らずに続ける。

寡黙な点がチェイナリンに似ているが違いは悪気のない不愛想といったところだ。

とは言え会話の要領は似ている。


「何の漁師をしてたの?」


「オツカ漁」


「オツカ?...オツカが何の動物かわからないんだけどもしかして銃を使って漁をしてたりする?」


「そうだよ」


「ということはもしかしてあの目の良さって...」


「オツカ漁で鍛えた」


「やっぱりか」


会話する中でナナオウギはシモンのことを概ね把握した。


この後の移動再開の際は彼女も特殊部隊に同行することがミゥーの強い推薦によって成り行きで決まる。

絶対役に立つと太鼓判を押されたことでナナオウギは断り切れなくなり、部隊長も渋々同意して決まりとなる。

起きたミーガルナはその話を聞いて寝耳に水な様子でまた怪訝な顔をする。


ここまでは割と何事もなく進んでいるが命のやり取りは刻々と近づいていた。

思い付きをそのまま書き殴った回になっちゃいました。

後で書き直すかもです。

シモンは数年前のプロットから登場が決まってたので前話あたりからここいらで投入しようかと思案してた感じです。

シモンの説明はまだあるんですがめんどくさくて色々端折ってます。

見た目はけものフレンズのホワイトタイガーっぽい感じかなと。

地図はまだ....

すいません。

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