空挺作戦1
イギリス軍の飛行場
航空基地の一角で特殊部隊のブリーフィングが行われていた。
「攻撃目標はここ、ミゥボロスク飛行場だ。この飛行場はティニャノナスク市の南にあり、周辺には飛行場はここだけしかない。この飛行場は物資の空輸地点としてもティニャノナスク市の包囲を行う基点としても都合がいい場所だ。しかも飛行場の西側はルーナ川になっているのでこの範囲の側面からの敵の圧迫はない。よって我が軍はミゥボロスク飛行場を包囲する形で空挺を実行する。同時に地上部隊もここへ向かって進軍を開始する予定になっている。そこで我々が先発して現地に浸透し、その空挺部隊と地上部隊の支援を行う」
兵士たちは真剣にブリーフィングを聞いていた。
その中に現代装備を纏ったミャウシア兵数人に半包囲される形で座って聞くナナオウギの姿もあった。
ミャウシア兵は全員女性だった。
地球人の男性は女性より屈強だという傾向があるとすれば、ミャウシア人の場合はその逆で女性の方が男性より筋力や体力が勝る傾向が強いと言える。
なのでミャウシア軍の屈強な兵士はたいていは女性で占められるところがあった。
彼女たちはミャウシア政府軍で創設されたばかりの特殊部隊で特務旅団という暫定名で名付けられているが人数はまだ中隊がいくつかしかない程度の人数だ。
ちなみにナナオウギの所属もフランス軍の特殊作戦旅団と名前が若干似通ってる。
外人部隊の人間ながら人員不足や適材ということで所属を継続していたようだ。
おかげで今回は精鋭のミャウシア人女性兵士の分隊を引き連れることになってしまったのである。
同僚からはハーレム分隊などとジョークを飛ばされる始末だ。
ナナオウギは屈強な兵士という割に、見た目は特殊部隊コスの猫耳美少女な女性軍団に囲まれるのが嬉しいような恥ずかしいようなで落ち着かない。
ナナオウギの友人にはケモナーでオタク趣味の大竹という人物がいるのだが、ナナオウギはそんな彼のことをここで思い出す。
―あいつが見たら「そこ変われ」とか言ってキレてそうだな。
そんな風に考える。
一方、ナナオウギの隣に座っているミーガルナは緊張しまくっていた。
ただの二等兵程度の兵卒の彼女にとっては超未来的戦闘服を身に纏い、身の丈に合わない役を任せられてビビっているようだった。
今回の特殊部隊の任務は先の上陸作戦同様に航空攻撃の誘導や敵の威力偵察、空挺地点の確保、待ち伏せ、足止めなど主力部隊の支援が任務だがより深部へと浸透することになる。
反政府軍は上陸されることは折り込み済みなのか海岸より内陸により多くの軍や軍団を伏せていて、依然として抗戦能力の大部分を温存していた。
そのため特殊部隊の潜入の難易度と求めらる役割の重みが爆上がりしていた。
タダでは通さんという強い意志を感じざるを得ない。
その中でナナオウギの役割はミャウシア政府軍から派遣された選りすぐりの兵士を引き連れて、現地に潜伏している政府軍特殊部隊と合流し、敵情の正確な把握に努めることだった。
潜入部隊はレジスタンスと繋がっていてそこから情報を吸い上げてはいるがいわゆる電信機しか持ち合わせてないらしい。
なので機密保全の観点からもタイムリーな情報は直接接触でしか得られないうえ、その潜入部隊の回収と現代的な特殊作戦の実践と経験の取得も兼ねて、ミャウシア政府軍がNATOの加盟国軍に申し出でたことで今回のチームが編成されたのだ。
もちろん任務はそれだけではない。
敵情の把握が終わったら前述の遊撃戦の序列に加わる。
そんなところだ。
ちなみに特殊部隊仕様のミャウシア兵の装備は国産物が多いが内容はかなりガチだった。
話によると試作品をそのまま着ているらしい。
プレートアーマーの入ったタクティカル防弾ベストに新式の猫耳付きスチールヘルメット、迷彩の入った新式の戦闘服にブーツ、NATOから供与された無線機、M4カービンとM72LAWなど地球の先進国レベルの装備だった。
その中のプレートアーマーの性能はあくまで破片防止レベルだがミャウシア人は女性兵士多めなためかバストあたりを別のプレートに分けるという種族事情を考慮した特殊なつくりになっているなど興味深い設計だった。
ベストもバストあたりを多少は膨らませられる柔軟性があって胸が大きい兵士でも着やすくしてある。
屈強な兵士ほど豊満な傾向があって、胸を潰して着続けるのには限度があるのが理由だとか。
実際、ミーガルナのベストをじろっと見ても胸のふくらみを確認できる。
ミーガルナは巨乳なのでキツくないか初めは気になったがその話を聞いてなるほどなとナナオウギは思った。
「作戦の説明は以上だ。各員に幸運を祈る」
ブリーフィングが終了した。
ミャウシア領アルーム平原
空母から発艦したEA-18G電子戦機がS-300の捜索用レーダー車両に向かってHARMを発射した。
偵察中のF-35Cがたまたま探知した大物だ。
HARMは数十km離れた目標に向かって高速に緩降下しながら接近すると命中して大爆発を起こした。
攻撃直後、投入していた海兵隊の無人偵察機が攻撃地点の周囲に到達して捜索したところ、陣地転換中のS-300からなる防空中隊を発見する。
当然、追撃の航空攻撃が行われる。
車両部隊はF/A-18Eからなる攻撃隊が投下した無数のバリュート付きMk82航空爆弾によって壊滅した。
地上部隊が上陸したことで投入される無人偵察機の数が増えたことから敵防空網の制圧速度が上がっていた。
上陸した地上部隊自身も防空網に対して地対地ミサイルによる直接攻撃をしたいとは考えていたがGPSが無いこの世界では使用不能なためHIMARSの持ち込みは行われていない。
空挺作戦前の猛攻により周辺の航空優勢が概ね確保される。
ミャウシア政府軍のとある司令部
ミャウシア北部が描かれた地図盤にNATO軍の駒が置かれ、政府軍の高官たちがそれを見ながら話し合いを行っていた。
得られる情報が断片的なので駒の位置の更新にはタイムラグが大きい。
それに政府軍にできることはあまりないので見守るしかなく、ここにいる将官達もそのつもりだ。
その将官達の中にチェイナリンの姿もあった。
チェイナリンはナナオウギからもらったお守りを胸の前で握りしめながらNATO地上軍の駒を注視していた。
ナナオウギと半分こしたブレスレットも軍服の下からほんのわずかに見える。
いつもの無表情だがチェイナリンは彼のことが気になって仕方ない様子だった。
その頃、ナナオウギ達を乗せたエアバス A400M輸送機が滑走路から離陸した。
特殊部隊を乗せた他国軍の輸送機も離陸準備が進んでいる。
ナナオウギは未だにビビり続けるミーガルナの隣の席から夕焼けを眺める。
話が進まない回です。
次は地図貼っときます。
短期プロットに自衛隊出てくるくらいまで進んだなと思うこの頃です。
そろそろ自衛隊が出てきますが、ウクライナ軍ばりの大激戦と損害出すので賛否になりそうなのが気がかりです。
すいません。